大量ねじで捜査車両パンク 男逮捕
2025/06/26 (木曜日)
警察署の敷地に大量のねじ 捜査車両をパンクさせた疑いで62歳男を逮捕 「報復のつもりで」 愛知・豊橋
2025年6月4日午前10時ごろ、愛知県豊橋市の豊橋警察署敷地内で、捜査車両がパンクする被害が相次ぎました。現場には大量の金属製ねじがまかれており、署員は回収と清掃に約5時間半を要しました。その後、同市在住のアルバイト星野孝秀容疑者(62)が威力業務妨害などの疑いで逮捕され、「報復のつもりでやった」と容疑を認めています。本記事では、本事件の経緯や法的問題点、過去の類似事例との比較、背景にある社会的要因、警察運用への影響や今後の再発防止策を詳述します。
豊橋警察署の敷地内でねじがまかれたのは、主に捜査車両の出入りに使われる傾斜スロープ部分でした。署員らがねじを踏んだ車両のタイヤ交換や清掃を行うなど、警察業務が大幅に停滞。現場を離れた星野容疑者は電動キックボードで逃走したとみられ、約3週間の行方不明の末に逮捕されました。清掃には約5時間半要し、被害総額はタイヤ交換費用や人件費を含め数十万円に上る見込みです。
捜査関係者は星野容疑者に対し、威力業務妨害罪(刑法234条)と、器物損壊罪(刑法261条)の疑いを適用しました。威力業務妨害罪は「暴行又は脅迫により人の業務を妨害した者」を処罰し、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。今回は物理的なねじまきによって警察業務を妨害した点で成立要件を満たします。また、パンクしたタイヤの修理費を損壊害として賠償させることも可能です。
星野容疑者は警察署員に逮捕歴がある人物と推定され、過去の取り調べや拘留への怨恨が動機とみられます。「報復のつもりでねじをまいた」と供述しており、逮捕・捜査を受けた被疑者の一部に見られる“怨恨型”犯罪の典型例です。高齢化社会の中で、身体的なハンディや仕事の不安—アルバイトで生計を立てる立場—が複合し、極端な手段に及んだ可能性があります。
同じ愛知県内では2022年1月にも安城市の総合運動公園駐車場で数千個のねじが散乱し、5台の車両がパンクする事件が発生しました(朝日新聞2022)。当時も器物損壊として捜査が行われましたが、犯人は捕まらず、再発防止策として監視強化のみが講じられました。
また、東京都内でも2019年に飲食店への「報復」を目的としたねじまき事件が発生し、犯人に器物損壊罪が適用されました。これらの事例から、ねじをまく手口は業務妨害と被害者への恐怖演出を同時に狙える点で一定の抑止効果があるように誤認されやすいものの、重大な犯罪行為であることに変わりありません。
現場となった警察署は、防犯体制の不備を指摘。敷地内は一般開放されているものの、車両通行路への異物混入を未然に防ぐセンサーやカメラ、定期巡回の強化が求められます。特に、捜査車両はタイムリミットのある緊急対応車両でもあり、点検・清掃による遅延は市民の安全を脅かすリスクとなります。
愛知県警は今回の事件を重く見て、主要警察署に対し敷地巡回の頻度向上、夜間の駐車場照明強化、ドライブレコーダー映像の自動解析による不審物検知システム導入を検討中です。
近年、逮捕歴などで警察に恨みを抱く高齢者が、工具や車いすなど身近な器具を使って相手に報復する事例が増加しています。高齢化社会のもと、精神的・経済的ストレスへのケア不足が犯罪に直結するケースもあり、地域包括支援センターや警察署の連携を強化し、要注意者リストの共有や面談・電話フォローを実施する必要があります。
また、街路や施設など公共空間における異物混入の監視は、自治体や民間企業とも協力し、IoTセンサーやAIカメラによる不審物検知システムを導入することで、早期発見・対応が可能となります。警察だけでなく地域全体の防犯意識を高める啓発活動も重要です。
器物損壊や業務妨害への抑止力を強化するため、政府は刑法改正を検討中です。威力業務妨害罪の刑罰上限引き上げや、継続的に業務を妨害した場合の累犯特則導入などが提唱されています。また、軽微な不法行為でも直ちに逮捕できる「現行犯逮捕」の要件緩和や、捜査対象者の再犯防止プログラムの義務化も議論されています。
豊橋警察署敷地内ねじまき事件は、一見“イタズラ”と思われがちな手口が重大な犯罪行為であることを改めて突きつけました。威力業務妨害罪や器物損壊罪が適用される以上、加害者への厳正な処罰と被害回復が求められます。同時に、加害者の社会的背景に着目した再発防止策や、公共空間の監視強化、地域との連携によるハイブリッド型防犯体制の強化が急務です。警察業務を止めないためにも、技術的・法的両面からの対策を一刻も早く実現する必要があります。
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