ハーレー日本法人 排除措置命令へ

ハーレー日本法人 排除措置命令へ

2025/06/30 (月曜日)

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公取委、ハーレー日本法人に排除措置命令へ…販売店に達成困難なノルマを一方的に設定

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ユーロ直輸入の高級バイクに課された“ノルマ地獄”──公正取引委がハーレーダビッドソン日本法人に排除措置命令へ

2025年6月29日、ファッションとライフスタイルの象徴ともいえる米国発エンジン付き二輪車ブランド「ハーレーダビッドソンジャパン」が、公正取引委員会から独占禁止法(優越的地位の乱用)違反として排除措置命令および約2億円の課徴金納付命令を科される見通しとなった。背景には、国内約90店の正規販売店に対し、達成困難な過大ノルマを一方的に設定し、結果的に「自爆営業」を強いてきた実態がある。

優越的地位の乱用が問われる構造

ハーレーダビッドソンジャパンは、国内で約90店舗のディーラーと専売契約を結び、高級バイクの輸入・販売を一手に担う。その販売店は、ハーレー車ブランドへの熱意と先行投資(店舗改装や試乗車導入など)を背景に、実質的に優越的地位にある日本法人の指示に従わざるをえない弱い立場に置かれていた。公取委の調査によれば、同社は遅くとも2023年1月以降、数十社の販売店に対し、通常の市場環境ではまず達成不能な販売台数ノルマを口頭や資料で一方的に提示。契約更新の可否まで示唆することで、強制力を伴わせていた【:contentReference[oaicite:0]{index=0}】。

自爆営業の実態と「登録済み未使用車」問題

販売店がノルマ未達成のペナルティを避けるため取った手法が「自爆営業」と呼ばれる。つまり、店側が自らバイクを購入し、自社名や社長・スタッフ個人名義で登録したうえで、あたかも販売したかのように計上する手口である。この方法で達成させた車両は「登録済み未使用車」として、通常の新車より価格を抑えて市場に放出せざるをえず、販売店の収益を圧迫するという負の連鎖が生まれていた【:contentReference[oaicite:1]{index=1}】。

独禁法違反の法的論点

独占禁止法第23条は、取引上の優位な地位を利用して相手方に不当な利益を強要し、対価を一方的に減殺する行為を「優越的地位の乱用」として禁止する。違反が認定されれば、公取委は排除措置命令を下し、違反行為で得た売上高の最大1%を上限とする課徴金を科す。ハーレー日本法人の場合、過大ノルマの設定とペナルティ示唆が明確な優越的地位の濫用と判断され、排除措置命令と約2億円の課徴金が相当とされた。

業界内の先行例──BMW日本法人事件との比較

同様の事例として、2021年に独BMWジャパンが国内正規販売店に対し、販売目標を一方的に設定し改善計画を公取委に認定されたが、最終的に排除措置命令は見送られたケースがある。BMWは販売店側と事前協議を行った記録が評価され、改善策の実行を条件に命令回避に成功している。これに対しハーレー日本法人は、店側との協議が不十分なままノルマを押し付け、協議記録も残していなかった点が処分判断を厳しくしたとみられる。

販売店側の損失と地域経済への波及

高額バイクの店舗改装や試乗車導入などに多額投資を行った販売店にとって、ノルマ未達による自腹購入は深刻な経営圧迫となる。特に地方のディーラーは、都市部と比べて需要の変動リスクが大きく、在庫の山を抱える状況が常態化。地域の整備工場や下請け企業にも打撃が及び、雇用や周辺経済にも悪影響が波及していた。

公取委の狙いと今後の対応指針

公正取引委員会は今回の命令を通じて、特定の強力ブランドが国内流通網を独占的に運用し、販売店に過大ノルマを強いる行為への抑止を図る狙いがある。企業には以下の対応が求められる:

  • 販売店との目標設定に関し、十分な協議と文書化を行う
  • 達成可能なノルマを設定し、達成率に応じた柔軟な契約更新を実施
  • 販売店支援策(在庫リスクの分散、マーケティング支援)の強化
  • コンプライアンス部門を中心とした独禁法遵守体制の整備・研修強化

国際展開企業の課題と示唆

欧米の輸入ブランド企業は、国内市場での販売力向上のため、独自の販売店向けインセンティブやノルマを設定することが少なくない。しかし、自由競争ルールを逸脱したノルマ設定は国内法規制で厳しく制裁されるリスクを伴う。欧州や米国における同様の規制動向も注視しつつ、透明性と公正性を担保するガバナンス体制が不可欠である。

まとめ

ハーレーダビッドソンジャパンへの排除措置命令と約2億円の課徴金納付命令は、優越的地位の乱用を厳格に取り締まる公取委の姿勢を鮮明に示すものだ。販売店に達成困難なノルマを一方的に課し、自爆営業を強いる企業行動は、独禁法上重大な違反行為と認定される。今後、国内外のブランド事業者は、販売店との協議体制の整備、ノルマ設定プロセスの透明化、合理的な目標設定と支援体制の確立を図る必要がある。企業の健全なチャネル経営を守り、地域経済や消費者利益を阻害しないため、公取委の命令を教訓とした市場ルール遵守とコンプライアンス強化が急務である。

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