「渋谷の竪穴式住居」ビル解体へ
2025/07/02 (水曜日)
「渋谷の竪穴式住居」解体へ ミキプルーンの旧東京本部、一帯の再開発で40年の歴史に幕
2025年7月2日、渋谷区桜丘町にそびえる「ミキプルーン旧東京本部ビル」(通称・渋谷の竪穴式住居)が、一帯の再開発計画に伴い解体されることが判明した。1970年代後半の建設当時、日本初のストックオフィスとして注目を浴びた同ビルは、外壁の大きな縦スリットが竪穴式住居を彷彿とさせるユニークなデザインで知られ、40年間にわたり渋谷の街並みを象徴してきた(出典:Yahoo!ニュース)。
1978年竣工の旧東京本部ビルは、ミキプルーン(現:エム・ピー・エス)が本社機能を集約するために建設。鉄筋コンクリート造り9階建て、延床面積約8,500㎡の規模で、当時の最新技術を用いた免震構造も話題となった。外観の縦スリットは、建物内部の採光と自然換気を両立させる設計意図があり、その斬新さから“竪穴式住居”の愛称で親しまれた。
1980年代後半のバブル景気期には、周辺に大型商業施設や高層ビルが次々と建設され、旧本部ビルもIT系ベンチャー企業やクリエイターのオフィスとして再注目を浴びた。2000年代にはコワーキングスペースとして一部をリノベーションし、若手起業家の登竜門ともなった。
計画では、高度な防災設備や環境配慮型の省エネ設計、歩行者デッキによる駅直結動線などを導入し、“スマートシティ渋谷”の先駆けを目指す。
竪穴式住居を連想させる大胆な外観は、当時の安藤忠雄や磯崎新といった建築家の作品にも匹敵する評価を受けた。専門家は「縦スリットは単なる装飾でなく、機能美と意匠性を両立させた点で高い芸術性を持つ」と評し、都市景観史における貴重な事例と位置づけている。
東京では1990年代以降、個性的な中低層オフィスビルの再開発が進み、神田の「大正ビル」、銀座の「松坂屋ビル」などが姿を消してきた。各地で“記憶の風景”を残す建築物と再開発のせめぎ合いが続いており、渋谷でも旧本部ビルの保存と再利用を求める声が一部にあった。
「渋谷の竪穴式住居」として親しまれたミキプルーン旧東京本部ビルは、都市の変遷を見つめてきた歴史的建築である。再開発に伴う解体は、渋谷の街を次世代へ進化させる一方で、アイコニックな景観の喪失を伴う。今後は、再開発計画に都市の記憶を継承する工夫や、地域文化の発信拠点としての新たな取り組みが求められるだろう。
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