中古車店が突然閉店 納車トラブル
2025/06/11 (水曜日)
【独自】「購入車がスクラップ」全国14店舗の中古車販売店「カーネル」突然閉店で納車トラブル…従業員給料未払いも 社長「今月中に全て返金を」
中古車販売チェーン「カーネル」は、札幌から沖縄まで全国14店舗を展開し、「中古車最安ナンバー1」を謳って急成長を遂げた。しかし2025年6月に突如として全店舗が閉店し、契約済みの車両が納車されない、従業員への給与が未払いになるなど、前代未聞のトラブルが表面化した。社長は取材に対し、「今月中に全額を返金する」と約束しているが、具体的な返金スケジュールや資金確保の方法は明らかにされていない。
東広島市の店舗で3月に契約したAさんは、車両代44万3,000円を入金したにもかかわらず、納車予定日を何度も延期され、最終的に購入した車が店舗前に放置されたままであることを目の当たりにした。事務所には「資金難のため納車できない」との貼り紙が掲示され、連絡も途絶えたまま。車両の名義変更が行われていないため、勝手に引き取ることもできず、解決策を模索する日々が続いている。
同じく4月に契約したBさん(学生)は合計50万円を支払い、納車を心待ちにしていた。しかし、陸運局で車体番号を照会すると「解体済み」と登録されており、工場に問い合わせると「既にスクラップにされた」と告げられた。Bさんは運営会社への連絡を繰り返したが、返信は一切なく、ついに警察へ被害届を提出したという。
自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏によると、購入者が中心となって作成したオープンチャットには400人以上が参加し、被害額は最高で700万~800万円に上るケースもあるという。被害者の多くは若年層やシニア層で、納車遅延・未納車だけでなく、車両の状態や存在そのものが担保されない深刻な詐欺的状況が浮き彫りとなっている。
社内関係者によれば、2024年10月ごろから本社からの入金が滞り始め、整備費や委託費の支払いができなくなった。さらに2025年2月以降、従業員4か月分の給与が未払いとなり、「ボランティア状態」で購入者への納車準備に従事していたという。人件費・整備費を捻出できず、末端のスタッフが過重労働に追い込まれていた実態が明らかになった。
突然の閉店発表後、10日夕に社長本人から報道番組に電話が入り、「全契約者に対し今月末までに全額返金する」と説明した。しかしその裏付けとなる資金調達計画や返金の具体的手続きは示されず、事実上の「口約束」にとどまっている。被害者からは「返金保証の書面が欲しい」との声が上がっているが、社長側からの正式な書面はまだ発行されていない。
中古車業界では、コロナ禍の「新車納期遅延」に伴う需要増加を受け、多数の販売店が出店ラッシュを経験した。しかし2024年度の倒産件数は98件(前年比1.4倍)に達し、小・零細店の経営破綻が相次いでいる。販売不振や仕入価格高騰に加え、ビッグモーター問題を契機とした市場全体の信頼失墜も影響を与え、業界の再編が進行中だ。
公益社団法人自動車公正取引協議会の2022年度報告によると、中古車関係の相談件数は全体の58.4%に上り、年間3,018件を記録している。トラブルの大半は「契約後の納車遅延」「整備不良」「売買代金不払い」などで、被害回復には時間と労力を要するケースが多い。今後、消費者側の慎重な業者選びと国や自治体による監督強化が求められる。
被害者は警察への被害届提出だけでなく、民事上は契約解除・損害賠償請求の手続きを進めることになる。支払督促や少額訴訟を活用し、債権回収を図る方法があるものの、倒産企業に対する回収は困難を伴う。消費生活センターへの相談や弁護士への一斉請求(共同訴訟)を検討することが重要だ。
「カーネル」事件は、業界全体への信頼失墜を招く可能性がある。公正な中古車流通の確立には、保証制度の充実や、契約時の手付金保全措置の義務化、業界団体による監督
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