日本郵便 ヤマトなどに集荷委託へ
2025/06/17 (火曜日)
点呼「全くせず」12万件 日本郵便が会見、ヤマトなど他社に委託へ
2025年6月17日、日本郵便は全国で実施したトラック運行前後の点呼に関する調査結果を公表しました。点呼が法令で定められる57万8千件のうち、必要項目をすべて実施していなかったケースが約12万6千件、記録簿に虚偽記載があった「不実記載」は約10万2千件に上りました。これを受け、同社は国土交通省から事業許可取消の方針通知を受領し、委託先としてヤマト運輸、佐川急便、西濃運輸、トナミ運輸など大手物流企業に集荷・配達業務の委託を進める意向を示しました。処分対象のトラック約2,500台のうち、57%に相当する6万便分を外部委託する計画です:contentReference[oaicite:0]{index=0}。
道路運送法および貨物自動車運送事業法では、運行前後に運転者の健康状態や飲酒チェック、運行指示などを点呼で確認し、記録簿に残すことが義務づけられています。点呼はドライバーの安全運転を確保し、死亡事故や重大事故を防ぐための基本的手続きです。点呼を怠ることは法令違反となり、最悪の場合は事業許可の取消や罰則適用につながります:contentReference[oaicite:1]{index=1}。
問題が公に浮上したのは、2022年頃に現場従業員からの内部通報があったにもかかわらず、当時は「違反なし」との判断で対策が取られませんでした。その後、2025年4月に国交省の立ち入り調査を受けて不正が再度指摘され、全国規模の点呼実態調査が実施されました。調査結果を受けた同社は6月17日に謝罪会見を開き、事実を認めて処分を受け入れる方針を表明しました:contentReference[oaicite:2]{index=2}。
国内大手物流業界では、ヤマト運輸や佐川急便でも度々点呼や運行管理の不適切事例が報告されています。例えば、ヤマト運輸では2023年にドライバーの飲酒運転による事故発生後、社内点呼指導を強化した経緯があります。また、他社でもデジタル点呼システム導入が進む一方、依然として手書き記録の不実記載が散見されることが業界全体の課題となっています。
日本郵便が業務委託することで、ヤマト運輸など大手物流企業の配送網に大きな負荷がかかります。特に、ゆうパックや選挙公示書類、お中元・お歳暮シーズンの荷量増を抱える中で、品質低下や遅延リスクが懸念されます。委託契約には点呼実施など安全管理強化の条項が盛り込まれる見込みですが、各社のキャパシティとコスト負担の調整が急務です:contentReference[oaicite:3]{index=3}。
物流網の混乱は、EC市場の成長や地方創生支援、医薬品・生鮮品の迅速配送など、社会インフラとしての郵便・物流サービス全体に波及します。特に選挙公示書類の折衝や、災害時の緊急物資配達が滞る可能性が指摘され、政府・自治体からも対応状況の注視が求められています。
国土交通省は今回の事態を受け、デジタル点呼システムの標準導入を義務化する検討に入るほか、定期的な抜き打ち検査やドライブレコーダー映像の活用による点呼実地確認を強化するとみられます。また、日本郵便もAIによる健康状態アラートやスマートウォッチ連携点呼の導入を検討しており、安全性向上に向けた技術革新が加速しそうです:contentReference[oaicite:4]{index=4}。
日本郵便の点呼不実施問題は、安全管理の根幹を揺るがす重大事案です。業務委託で当座をしのぐ一方で、業界全体の信頼を取り戻すには、法令遵守の徹底と最新技術の導入による再発防止策が不可欠です。消費者・社会の信頼を回復するため、関係各社・行政が連携して安全・安心な物流体制の再構築を急ぐ必要があります。
コメント:0 件
まだコメントはありません。