定員割れの私大6割 迫られる選択

定員割れの私大6割 迫られる選択

2025/06/19 (木曜日)

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留学生増員も、定員割れ私大6割──経営難なら撤退すべきか #老いる社会

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はじめに

少子高齢化が進む日本では、18歳人口が1992年の約205万人から2024年には約106万人へと半減し、大学進学の「母数」が急速に縮小しています。一方で、私立大学の約6割が入学定員を充足できない「定員割れ」に陥り、354校(59.2%)にも上る過去最悪の事態となっています。経営難にあえぐ大学は地方から都市部まで広がり、「私大淘汰」の時代が現実味を帯びています。こうした中、留学生の増員が“命綱”と期待される一方で、本当に経営が立ち行かない大学は撤退すべきかという議論も出始めています。

1.少子化による学生供給の急減と大学数の増加

日本の18歳人口はピークの1992年約205万人から、2024年には約106万人へと半減し、今後も2040年には約88万人にまで落ち込むと予測されています。しかし同時期に大学の総数は増加し、1989年の499校から2024年には国立96校、公立39校、私立364校の計499校が設置されています。供給側の増加と需要側の急減が同時進行した結果、競争が激化し、特に偏差値の低い学部では定員充足率が60%未満となる例が相次いでいます。

2.「定員割れ」私大の現状と構造的課題

2024年度に入学者が定員を下回った私立大学は354校で、全体の59.2%を占め、過去最高を記録しました。特に地方の小規模私大では、学生募集が厳しく、国際言語文化学部や現代人間学部などで定員充足率が50%前後にとどまる学部も少なくありません。大学は設置基準の緩和で増加しましたが、学費収入への依存度が高い私大は、定員割れによる収益悪化が経営を直撃しています。

3.増える留学生――受入れ強化の狙いと限界

こうした中、政府は外国人留学生の受入れ拡大を政策の柱に据え、2024年5月1日現在の留学生数は336,708人と前年比20.6%増の過去最多となりました。留学生は47都道府県のほぼすべての高等教育機関で受け入れられ、中国、ネパール、ベトナムなど多様な出身国から集まっています。ただし、留学生の受入れは日本語能力や就職支援、多文化共生の体制整備が追いつかず、募集戦略としての限界も指摘されています。

4.経営難の私大と「撤退」の是非

大学運営法人662法人のうち約15%(103法人)が経営困難な状態とされ、私大の存続が危ぶまれる状況です。一部では、定員割れが慢性化する学部を廃止・統合したり、系列校を整理・撤退して経営資源を集中させる動きが始まっています。一方で、地域にとっては雇用創出や地域振興の拠点となる大学を安易に撤退させることへの懸念も根強く、学生や教職員、地元自治体との調整が困難を極めています。

5.海外事例に学ぶ大学淘汰と再編の潮流

欧米や韓国などでは少子化を背景に大学再編が進み、地方大学の統合やオンライン化、専門職大学への転換など多様な取り組みが行われています。韓国では2010年代後半から定員割れ校が廃校・統合され、大学数を削減して競争力を高める政策が功を奏しています。日本でも、国や自治体による支援を条件に再編を促す枠組みが求められています。

6.これからの大学政策と提言

  • 〈定員管理の厳格化〉入学定員の上限設定や増員要件の見直しを行い、新設・増設の歯止めをかける。
  • 〈質保証の強化〉学則や教育プログラムの審査を充実させ、最低限の教育水準を下回る学部は再構築を迫る。
  • 〈統合・合併の促進〉地域の私大同士や公私連携による統合を支援し、規模の経済を追求できる体制を整備。
  • 〈留学生支援体制の整備〉日本語教育や就職支援、多文化交流プログラムを拡充し、留学生受入れの質を向上。
  • 〈地域創生との連携〉地域ニーズに合わせた研究・教育プログラムを開発し、大学と地域経済の共生モデルを構築。

結論

日本の大学を巡る現状は、人口減少と大学数の増加がもたらした供給過剰が招いた構造的危機です。留学生増員だけでは限界がある一方、経営難大学の無秩序な撤退は地域社会に深刻な影響を与えかねません。質の高い教育を提供し続ける大学を守るため、国や自治体、大学運営法人が連携し、必要に応じた再編・統合を促進する戦略的な大学改革が急務です。

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