京都市がケアラー支援のシンボルマーク募集、昨年11月に条例制定
2025/06/26 (木曜日)
国内ニュース
家族や身近な人の介護や世話を日常的に担うケアラー(介護者)を巡っては、社会から孤立したりさまざまな負担が集中したりする実態が指摘されている。特に若い世代がその役割を担うヤングケアラーについては学業や就職などへの影響も懸念されている。
ケアラーが抱える問題に対し、社会全体で支える仕組みづくりの構築に向けた動きは近年全国的に進んでおり、京都市の条例はケアラー当事者らの意見を踏まえ、議員全員の共同提案
京都市は2025年5月28日から7月6日までの期間、市民やクリエイターから「ケアラー支援のシンボルマーク」と20字以内のキャッチコピーを公募する。これは、2024年11月に制定された「京都市ケアラーに対する支援の推進に関する条例」を受け、支援機運を高めるための啓発ツールを整備する取組みだ。
ケアラーとは、日常的に要援護者(高齢者や障害者、重い病気を抱える家族など)の介護・支援を担う人々を指す。超高齢社会の進展に伴い、家族介護者の身体的・精神的負担が深刻化しており、社会全体で支える仕組みの必要性が増してきた。
京都市が全会一致で可決した条例は「ケアラーが健やかに個性を発揮しながら暮らせる社会」を目指し、市や事業者、地域住民、学校など多様な主体による連携体制を構築することを規定している。
国内では、2020年に埼玉県が県単位で初のケアラー支援条例を制定し、相談窓口の設置や研修会を実施している。また、横浜市や札幌市も自治体条例を整備し、シンボルマークやロゴを用いた啓発活動を展開中だ。京都市は、これらの先例を参照しつつ、市民参加型のデザイン公募を取り入れた点が特徴となる。
公募の目的は、①条例の理念を市民に広く周知する、②支援の輪を可視化し共感を醸成する、③デザインを通じて認知度と相談件数を向上させる、の3点に集約される。応募要件は以下のとおり。
一次審査は市福祉のまちづくり推進室内で行い、最終審査は条例に定める当事者団体や福祉関係者、デザイン専門家らによる多様なメンバー構成委員会が担当する。受賞作品は2025年8月中に発表し、最優秀マーク(1点)には賞金3万円、最優秀コピー(1点)には2万円を贈呈予定だ。
採択後のマークとコピーは、市の広報紙、公共施設、医療・福祉機関の窓口、バス車内広告などに掲出し、相談窓口の案内やイベントポスターなどに展開していく。京都市ではすでに高齢者福祉課や障害福祉課の各窓口に相談員を配置しており、マーク導入で案内誘導の視認性を高める方針だ。
シンボルマークはあくまで入口。今後は相談体制の強化、企業向け人材支援プログラム、心理ケアやリフレッシュ施設の整備、地域ボランティアの育成など、多面的な実践策が不可欠となる。また、介護離職や家族負担軽減の統計を定期的に公表し、政策効果を検証・改善する仕組み作りも求められる。
条例では学校や企業にもケアラー支援の役割を規定しており、学校での授業や研修会、企業での柔軟な勤務制度の導入促進が進められている。京都市内の大学では介護福祉学科が学生を対象に「ケアラー支援プランニング研修」を実施、市内企業も「社員ケアラー対応ガイドライン」を策定し始めている。
ケアラー支援は社会全体の課題であり、条例制定から半年が経過した今、シンボルマーク公募は市民参加による新たな一歩となる。応募を通じて多くの市民がケアラー問題に目を向け、条例の理念「誰もが支えられ、支え合う共生社会」の実現に向けた機運をさらに高めることが期待される。
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