子供残して出勤は不安…「朝の小1の壁」対策で東京都品川区や三鷹市が早朝に学校開放
2025/06/28 (土曜日)
先月下旬、品川区立戸越小では、通常の開門時間より30分早い7時30分に児童が続々と登校し、校長や教師らに元気な声であいさつした。
戸越小では29人の事前登録があり、初日のこの日は13人が参加。児童らは多目的室で、シルバー人材センターから派遣された見守り員2人に見守られながら読書や自習などを行った。集中して勉強に取り組んでいた小学1年の勝山なな実さんは「また朝早く来たい」と声を弾ませた。
品川区
東京都品川区と三鷹市は2025年5月末から、共働き家庭で子どもを「朝、学校の門前でひとりにさせる」課題、いわゆる「朝の小1の壁」を解消するため、区立・市立小学校を始業前の午前7時30分から開放し、児童の居場所を確保する事業を開始した。品川区では戸越小・源氏前小・豊葉の杜学園の3校が先行実施(今秋までに37校全校へ拡大予定)、三鷹市では15校すべての小学校で校庭および体育館を開放している。両自治体とも支援員が見守り、品川区は今年度中にパンやおにぎりを無料提供する予定だ。
「小1の壁」とは、保育園と違い小学校に延長保育がないため、就労時間と学校の開始時間がずれ、子どもが朝・放課後にひとりで過ごさざるをえない状況を指す。共働き世帯の増加や核家族化、祖父母との同居世帯の減少が進む中、家庭での見守りが難しく、児童の安全・安心、働く保護者の就労継続に支障が生じている。
品川区戸越小では登録児童29人中13人が初日から利用し、勉強や自由遊びを楽しんだ。三鷹市では1校あたり平均10~30人が早朝の校庭で鬼ごっこや読書をしており、「子どもが安心して家を出られる」「朝に学習習慣が付く」と好評を得ている。
大阪府豊中市は2025年4月から、市内全小学校で午前7時00分から児童の居場所確保事業を実施。奈良県大和郡山市では2019年から始業前預かりを導入し、15分単位で利用料を設定して利用率約70%を達成した。神奈川県大磯町でも7年前から町立小学校の早朝預かりを行い、就労継続率の向上に寄与している。これらを参考に、東京都内でも本格化が進んでいる。
欧州北欧諸国では、小学校前預かり制度を核とした子育て支援が普及し、親子のワークライフバランスや地域コミュニティ活性化に成功している。イギリスの一部自治体では「ファミリー・ハブ」と称し、子育て支援と住民交流を一体化した施設を整備。日本でも学校を中心に子育て世代が集う地域拠点づくりが求められ、学童クラブや保育所と連携した一貫支援モデルの構築が急務となる。
品川区と三鷹市による小学校の早朝開放は、「朝の小1の壁」を払拭し、共働き家庭の就労継続を後押しする有効策だ。しかし、運営に伴う人員や費用の課題、プログラムの質担保、緊急時対応など課題も多い。今後は学習支援やメンタルケアを含む多面的なサポート体制の確立、保護者向け情報提供の強化、そして学校・学童・保育所の連携による一貫した子育て支援モデルの構築が必要である。こうした取り組みを全国へ展開し、すべての子どもと家庭が安心して暮らせる社会インフラとして定着させることが、少子化時代の重要な政策課題となるだろう。
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