教員の処遇改善 改正給特法が成立

教員の処遇改善 改正給特法が成立

2025/06/11 (水曜日)

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教員給特法など改正法成立 残業代がわり、5年で4→10%に増額

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改正教員給与特別措置法(給特法)成立の背景と概要

2025年6月11日、参議院本会議で教員給与特別措置法など関連法が可決・成立し、公立学校教員に適用される「残業代代替上乗せ給付」の割合が現行4%から段階的に最大10%に引き上げられることになりました。改正は来年度から5年間で実施され、教員の長時間勤務補償を強化する狙いです(NHK)。

給特法制定の経緯

給特法は1958年に制定され、授業以外の事務・部活動指導など多岐にわたる校務を時間外手当で算出できない特殊性を踏まえ、「一律上乗せ給」で対応する仕組みとして導入されました。以降、教員不足と業務過多が深刻化する中で、長時間労働や過労死リスクが社会問題化しました。

改正のポイント

  • 基本給の4%上乗せを、初年度6%、中期に8%、最終年度に10%へ段階的に引き上げ
  • 各教育委員会に「時間外勤務管理計画」の策定・公表を義務化
  • 2029年度までに教員1人あたりの月平均残業時間を30時間に削減する目標を付則に規定
  • 小中学校の35人学級に合わせた教職員定数標準を改定へ

現場教員の声と課題

現役教員からは「上乗せ率が上がっても、仕事内容が減らなければ意味がない」「申請不要の定額扱いでは過労が“見えない化”される」と懸念が出ています。また、時間外勤務管理計画の策定についても「過密スケジュールのままペーパーレス化されるだけでは実効性に疑問」といった指摘が少なくありません。

諸外国の教員賃金制度との比較

欧米諸国では教員の時間外労働に対し、原則として割増賃金を支払う制度が一般的です。たとえばフランスでは週35時間制を法律で定め、超過分は全額支給。ドイツでも授業外業務の労働時間を厳格に管理し、支援スタッフを配置して事務負担を軽減しています。日本の「定額上乗せ制度」は世界的にも珍しい仕組みといえます。

過去の教員労働改革の動き

  1. 2000年代:部活動外部指導員の導入など、業務軽減策の試行
  2. 2013年:放課後児童クラブや学童保育との連携で児童対応負担の分散
  3. 2020年〜:GIGAスクール構想によるICT活用で授業準備・採点時間の短縮試み

しかし、根本的な定数不足や校務過多は解消せず、慢性的長時間労働が温存されてきました。

今後の検討事項と展望

  • 労働時間管理の実効性確保:打刻やICTを活用した自動記録と第三者監査の導入
  • 教職員定数の抜本対応:事務職員・スクールカウンセラー配置の法定化
  • 外部委託の活用:指導要録作成や保護者対応を民間委託し、教員業務を軽減
  • 給特上乗せ分の運用透明化:増額分の使途や評価指標を明確化し、定期報告を義務付け
  • 長期的財源確保:地方交付税措置の見直しと国庫補助の継続的拡充

まとめ

給特法改正は、教員の処遇改善と働き方改革を図るための一歩ですが、給与上乗せだけで過重労働が軽減されるわけではありません。政府・自治体が一体となり、人員配置改善や業務分担の徹底、ICT活用による効率化を進めることで、教員が教育活動に専念できる環境づくりを急ぐ必要があります。

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