給付vs.消費税減税 違いと効果は
2025/06/12 (木曜日)
給付vs消費税減税──どう違う?効果は? エコノミスト「一律給付なら選挙向けのバラマキに」「減税なら税収減のおそれも」
夏の参議院選を前に、与党はすべての国民を対象とする一律現金給付を提案し、野党は消費税率の引き下げ(または廃止)を掲げています。給付は「お金を受け取る」方式、減税は「支払う税を減らす」方式で、どちらも家計の実質的な可処分所得を増やす点で共通しますが、財源や経済効果、持続可能性が大きく異なります :contentReference[oaicite:0]{index=0}。
給付金は全世帯に一定額を支給するため、所得分配面で公平感が強く、低所得層ほど所得増加額の家計消費への上乗せ効果が大きいとされます。ただし一律給付の場合、受給者の多くが高所得層にも及ぶため、バラマキとの批判が出やすく、「選挙向けのばらまき政策」と評されることもあります。給付金の財源には一般会計予備費や国債発行が用いられることが多く、恒久的な支出拡大は財政赤字や将来世代の負担増を招きかねません :contentReference[oaicite:1]{index=1}。
消費税減税は、消費行動そのものに対する税率を引き下げるため、買い物をするたびに自動的に負担が軽減される仕組みです。給付金と異なり申請や手続きが不要で、事業者や消費者双方に振込手数料等のコストが発生しにくい点がメリットです。一方で、減税額は消費額に比例するため、高所得層ほど恩恵が大きく、所得再分配機能は限定的となります :contentReference[oaicite:2]{index=2}。
第一生命経済研究所の内閣府短期マクロ計量モデル(2022年版)によると、時限的な消費税減税は、同額の所得給付(金額ベース)よりも初年度の経済成長率押し上げ効果が2倍以上大きいと推計されています。具体的には、1兆円規模で実施した場合、減税実施年のGDP寄与度は約0.15ポイント、給付金による寄与度は約0.07ポイントとされています :contentReference[oaicite:3]{index=3}。
一律給付は、短期的には景気刺激策として有効ですが、恒久的財源がない場合は国債発行による借金増大を招きます。一方、消費税減税は恒久的財源を消費税に依存する性格上、税収減少リスクが直撃するため、社会保障財源の維持との両立が難しくなります。東京財団の分析では、時限的減税は失われた恒久財源を回復できず、経済が正常化した後も財政健全化が遅れる「トラスショック」につながる懸念が指摘されています :contentReference[oaicite:4]{index=4}。
消費税は所得にかかわらず一律の税率が課されるため、低所得層の負担割合が相対的に重い「逆進性」が問題とされます。給付金であればある程度逆進性を緩和できますが、一律給付では十分に逆進性を是正できないとの指摘もあります。豪州やEU諸国では軽減税率や給付付き税額控除などを組み合わせた制度設計が行われていますが、日本では制度改革の具体案が乏しい状況です :contentReference[oaicite:5]{index=5}。
エコノミストからは「一律給付は選挙直前のバラマキに映りやすく、長期的な政策信頼を損ねる」「消費税減税も選挙公約に掲げやすいが、税収減少リスクを有権者へ十分に説明できるか疑問」との声があります。特に中小零細事業者支援の名目で減税を訴える政策は、地方票の掘り起こしには有効ですが、都市部の高消費層や財政健全化を重視する層から反発を招く可能性があります :contentReference[oaicite:6]{index=6}。
日本では2014年・2019年に消費税率引き上げが行われた際、反動減対策としてプレミアム商品券や軽減税率制度が導入されましたが、景気押し上げ効果は限定的でした。欧州のフランスやドイツでは、2013年の一時的減税が消費回復に寄与したものの、減税終了後に再び消費が落ち込む「戻り現象」が生じています。給付金を中心とした経済対策でも、米国のコロナ時の一律給付では貯蓄率が高まり、期待ほどの消費刺激効果を発揮しなかった研究があります。
給付と減税のいずれも短期的な生活支援・景気刺激策として一定の効果がありますが、財政の持続可能性や分配政策、政治的信頼を加味すると、一律給付だけでは財政悪化リスクが高まり、消費税減税だけでは長期的な社会保障財源が毀損されかねません。最適解は、景気動向に応じた「セーフティネット給付」と、「時限的かつ対象限定の減税」を組み合わせ、制度設計の透明性と説明責任を徹底するハイブリッド型アプローチと言えるでしょう。
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