<政治部取材メモ>「最低時給1500円」訴える共産党 若手専従職員の賃金はほど遠く
2025/06/16 (月曜日)
産経新聞は共産党のある地方組織の「勤務員規程」を入手した。「搾取も抑圧もない共同社会の建設」(党綱領)を目指す専従職員の勤務時間や給与などが細かく書かれている。弾圧された党員の裁判費用などに充てる「弾圧犠牲者救援基金」といった革命政党らしい手当てもある。早朝から深夜まで激務が続く専従職員だが、給与水準は決して高くない。「職業革命家」たちの懐事情を明らかにする。
産経新聞が入手した、ある地方共産党組織の「勤務員規程」は、同党の綱領にある「搾取も抑圧もない共同社会の建設」を掲げつつ、専従職員の勤務時間や給与、手当の細部までを定めています。一方で、早朝から深夜まで続く長時間労働にもかかわらず、給与水準は決して高くありません。「職業革命家」として身を捧げる人々の生活実態は、理想論では見えにくい現実を浮き彫りにします。本稿では、この規程の内容を具体的に紐解き、専従職員の勤務実態、財政的背景、歴史的・組織的意義を包括的に分析します。
地方組織の「勤務員規程」は、大きく以下の三つの要素で構成されています。
規程上は深夜業務後に休日などを設定するものの、実際には緊急の宣伝戦略会議や選挙対応、警察当局の監視行動への抗議行動など、不定期に「早朝集会」「深夜街頭演説」が組み込まれ、週平均60~70時間労働となるケースが多数です。規程には「健康管理を自己責任で行う」旨の規定があるだけで、長時間労働への組織的なケアはほぼ皆無。専従職員の多くは寝不足や過労を訴えながらも、組織への奉仕を優先せざるを得ません。
基本給は月額20万円前後と、地方自治体の非常勤職員や民間の一般事務職と比べて低水準です。規程には年1回の「党手当」として基本給の10%相当が支給されるとされていますが、党本部の財政事情に応じて変動するため、実際に受給できる金額は安定しません。さらに、裁判費用を賄う「弾圧犠牲者救援基金」への拠出は毎月基本給の5%を義務づけられ、家計に重くのしかかります。
「勤務員規程」には、被弾圧者や収監歴のある党員を支援するための特殊手当が明記されています。具体的には:
これらは表向き「社会正義の証」として評価される半面、通常業務を担う職員の家計を圧迫し、組織内の不公平感を生んでいるとの指摘もあります。
地方組織の財源は、党本部からの繰入金、党員の「党費」、選挙応援時の寄付金が中心。党費は月額3,000~5,000円と定率で、給与天引きですが、平均給与の低さとあいまって、家計に占める割合は決して小さくありません。党本部が財政難に陥ると、地方組織への予算配分が削減され、手当の減額や支給遅延が常態化します。これが専従職員の離職率上昇を招く一因となっていると言われます。
共産党は国家権力と歴史的に対峙してきた「弾圧政党」として、組織命運をかけた活動を続けてきました。専従職員は「プロレタリアートの先頭に立つ戦士」としての自覚を求められ、多大な自己犠牲が美徳とされる風土があります。しかし、近年の労働法制や社会保障制度の整備により、長時間無給残業は法的にも倫理的にも批判の的です。現代における「革命的仕事論」と「ワークライフバランス」の両立が、大きな課題となっています。
外部では「理想に忠実な一方で、あまりに過酷な労働環境」との声が根強い一方、組織内部からは「厳しさこそが革命家たる証」との自己肯定も見られます。今後、以下の改善が望まれます:
共産党地方組織の「勤務員規程」は、理想論と現実の際どい落差を映し出す鏡です。専従職員は「職業革命家」としての誇りを胸に刻む一方で、過酷な労働環境と低水準の給与に苦しんでいます。組織の理念を守りつつ、法令と現代社会の労働規範に適合させるための改革が急務です。専従職員の精神的・経済的な健康が保証されてこそ、「搾取も抑圧もない共同社会」の構築を目指す政党としての真正性が保たれるでしょう。
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