バンカーバスター どんな爆弾か

バンカーバスター どんな爆弾か

2025/06/22 (日曜日)

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<1分で解説>地下深くまで 「バンカーバスター」ってどんな爆弾?

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はじめに

2025年6月22日、Yahoo!ニュースは「<1分で解説>地下深くまで 『バンカーバスター』ってどんな爆弾?」と題し、GBU-57 Massive Ordnance Penetrator(通称MOP)の概要を紹介しました。本稿では当該記事の要点を示すとともに、バンカーバスターの開発経緯や技術仕様、運用実績、他兵器との比較、戦略的意義などを、歴史的背景を交えて詳しく解説します。(出典:Yahoo!ニュース)

1.バンカーバスター(GBU-57 Massive Ordnance Penetrator)とは

GBU-57 Massive Ordnance Penetrator(MOP)は、アメリカ空軍向けに開発されたGPS誘導式の精密深度貫通爆弾です。全長約6.25メートル、直径約0.8メートル、重量は約13,600キログラム(30,000ポンド)に上り、内蔵爆薬量は約2,426キログラム(5,340ポンド)を誇ります。重装甲コンクリートや岩盤を数十メートルにわたって貫通し、地下深部施設を破壊できる能力を持つ点が最大の特徴です。

2.開発経緯と歴史的背景

冷戦期およびポスト冷戦期において、アメリカは地下に掩蔽された敵の核・生物兵器施設や指揮統制センターを攻撃する必要性を認識していました。2002年頃、ノースロップ・グラマンやロッキード・マーティンが30,000ポンド級の貫通弾を構想するも技術的困難から一旦頓挫。その後、2003年のイラク戦争でGBU-28などの既存バンカーバスターが十分な破壊力を示せなかったことを受け、国防脅威削減局(DTRA)がMOP開発を本格化させました。2011年に初度作戦能力(IOC)を獲得し、Boeing社が設計・製造を担当しました。

3.技術仕様と作動原理

  • 構成部品:BLU-127 bomb body(高密度鋼製筐体)+GPS/INS誘導キット
  • 全長・重量:6.25m、13,600kg(30,000lb)
  • 爆薬:AFF-757(4,590lb)+PBXN-114(752lb)の高性能ポリマー結合爆薬、合計約5,342lb
  • 誘導方式:GPS/INS併用、飛行中にグリッドフィンで姿勢制御、着弾直前に大型貫通起爆装置(LPSF)が最適時点で爆発を制御
  • 貫通能力:5000psi強度のコンクリートで約18m、地盤で約60m貫通との試算(ただし資料によっては数値の単位や計測方法に幅あり)

4.運用プラットフォーム

MOPを搭載・運用できる航空機は、B-2Aステルス爆撃機のみです。B-52など他機でもテストが行われましたが、実戦配備しているのはB-2Aです。B-2はステルス性と長距離巡航能力を併せ持ち、MOPを遠隔地の地下施設へ正確に投下可能とする理想的プラットフォームです。

5.歴史的使用例

2025年6月22日未明、米軍はB-2A爆撃機を用い、フォルドー、ナタンツ、エスファハーンの各地下核施設に対してGBU-57を投下したと報じられました。6発のMOPがフォルドーに投入されたとの情報もあり、イランの地下80~100mに構築された濃縮施設を標的とした初の実戦使用事例と見られます。なお、被害の全容は公表されていません。

6.他の貫通爆弾との比較

従来兵器であるBLU-109(2,000lb級)やGBU-28(5,000lb級)に比べ、MOPは重量・貫通能力ともに圧倒的に上回ります。さらにGBU-37(30,000lb級の試作兵器)と異なり、MOPは実戦配備済みで実績を有する点が大きな差異です。また、非貫通兵器のMOAB(GBU-43/B)やFOABと比較すると、MOPは爆風ではなく深度破壊に特化しており、核・生物施設など地下深部の硬化シェルターを破壊可能な唯一の現用兵器とされています。

7.戦略的意義と潜在的リスク

MOPの配備・使用は、地下核施設への先制攻撃能力を大幅に強化し、核拡散抑止の切り札となり得ます。一方で、標的地域周辺の都市インフラへの影響、GPS妨害下での誘導精度低下、敵側の地下施設改良による貫通阻害などリスクは少なくありません。また、初の実戦投入がイラン核問題に及ぼす地政学的余波や、同兵器の拡散懸念も指摘されており、国際安全保障環境に多大な影響を及ぼす可能性があります。

8.今後の展望

アメリカではさらなる改良型MOPや次世代貫通弾(NGP: Next Generation Penetrator)の開発が進められています。中国やロシアも深部施設攻撃能力の強化を図っており、貫通爆弾技術の軍拡競争が懸念されます。将来的には無人爆撃機や超音速滑空弾頭との組み合わせによる投入が検討され、GPSに代わる高度誘導技術の研究も活発化すると予想されます。国際法や軍縮条約との整合性を図りつつ、地下深部破壊兵器の抑止力とリスク管理を両立させる取り組みが今後ますます重要になるでしょう。

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