日本の原油調達に影響、イラン国会「ホルムズ海峡封鎖」を承認、最終決定は最高指導者ら
2025/06/23 (月曜日)
ペルシャ湾の入り口に位置するホルムズ海峡は、世界で1日に消費される原油の約20%が通過する供給の大動脈。原油輸入の9割以上を中東に依存する日本へのタンカーの8割が通過するとされる。封鎖されれば日本のエネルギー調達に大きな影響が出るのは確実だ。
国営通信によると、元革命防衛隊幹部で最強硬派のコウサリ議員は「国会はホルムズ海峡を封鎖するという結論に達した」と述べた。これまでもイランは中東地域で緊張が
ペルシャ湾の入り口に位置するホルムズ海峡は、世界で1日に消費される原油の約20%に相当する約2,000万バレルが通過する要衝です。日本の原油輸入量の9割以上を中東に依存するなか、通過するタンカーの約8割が日本向けとされ、封鎖されればエネルギー調達に壊滅的打撃を与えます。(出典:産経新聞2025年6月23日)
国営通信によれば、元革命防衛隊幹部で最強硬派のコウサリ議員は「国会はホルムズ海峡を封鎖するという結論に達した」と発言。正式には国家安全保障最高評議会の承認が必要ですが、議会決議は実行の意志を示すもので、緊張が一層高まっています。(出典:ロイター2025年6月22日)
ホルムズ海峡の封鎖威嚇は初めてではありません。1980~88年のイラン・イラク戦争中には「タンカー戦争」と呼ばれ、両軍が原油輸送路を攻撃し、国連が護送船団も実施しました。この時、海峡閉鎖による原油価格高騰と物流停滞のリスクが世界に認識されました。
過去30年の間、イランは国際制裁や戦闘局面で何度か海峡閉鎖を示唆しましたが、実際の完全封鎖は回避。米英海軍や多国籍艦隊の護衛が敷かれ、海上交通は維持されてきました。それでも短期的にタンカーが通行できなければ、原油先物価格は30%超の急騰を招くとも言われています。(出典:野村総研分析)
日本政府は在外公館を通じて代替ルートや備蓄の活用を検討。石油備蓄法に基づく備蓄量は約68日分ですが、実際の消費ピークに対応できるかは不透明です。加えてガス田やNGLの調達多角化、LNG船の航路回避コース確保などを急いでいます。
バーレーンを拠点とする米海軍第五艦隊は、イラン沖海域での海上警戒を行い、タンカーの escort 任務を継続中です。米国は2019年に英国と共同で「海峡安全パトロール」作戦を発動し、多国間協力による航行の自由維持を図っています。
中東情勢が一段と緊迫すると、OPECプラスは追加増産を見送り、原油価格は1バレル=100ドル超に達する恐れがあります。消費国にとってはインフレ加速や経済成長鈍化のリスクとなり、世界経済への悪影響が懸念されます。
日本は2015年にインド洋での給油支援任務を終了しましたが、有事対応として再派遣の検討が浮上しています。海上自衛隊は西方方面での情報収集能力を強化し、有事の際の邦人退避支援や海上交通路警戒に備えています。
政府は中東依存からの脱却を図るため、オーストラリアや米国西海岸、東南アジア産油国からの調達拡大、再生可能エネルギー比率の引き上げを進めています。また、原油価格の変動リスクをヘッジするため、財政措置や企業への支援策も検討中です。
G7エネルギー大臣会合では「航行の自由を侵害するあらゆる行為に反対」との声明を採択。EUも制裁対象の石油取引からの締め出し強化を検討し、国際的な圧力を通じて封鎖阻止を目指しています。
イランによる正式な封鎖宣言に至るかは不透明ですが、米大統領や英首相も軍事オプションをちらつかせており、一触即発の状態が続きます。最終的には外交交渉や多国間安保協力が封鎖回避のカギを握るでしょう。
ホルムズ海峡の封鎖は、エネルギー安全保障を揺るがす重大事態です。日本は備蓄・多角調達・同盟国との連携を強化し、万全の事態対応を迫られています。地政学リスク管理と経済安定の両立が、今後の喫緊の課題と言えるでしょう。
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