トランプ氏 テスラ車の処分を検討
2025/06/07 (土曜日)
トランプ米大統領は舌戦に区切りも、保有テスラ車の処分を検討-高官
2025年6月5日、ホワイトハウスはドナルド・トランプ大統領が億万長者のイーロン・マスク氏との公然たるやりとりを一旦収束させ、「One Big Beautiful Bill Act」と呼ばれる大型減税・歳出法案など看板政策の実現に集中する意向を示唆しました。マスク氏との対立後、政府契約打ち切りや宇宙計画中止を互いに脅し合う事態にまで発展したものの、現在は政策遂行を最優先とするため、もはや舌戦にこだわらない姿勢を打ち出しています。
トランプ氏とマスク氏の蜜月関係は2024年のトランプ再選後も続いていましたが、マスク氏が同大統領の目玉法案に含まれる電気自動車(EV)税額控除の廃止を「予算を膨張させる“忌まわしい法案”」とSNSで痛烈に批判したことから亀裂が生じました。この批判に対し、トランプ氏は「彼は完全に気が狂っている」と反発し、連邦政府の契約打ち切りや自身のテスラ売却をほのめかす応酬にまで発展しました :contentReference[oaicite:0]{index=0}。
「One Big Beautiful Bill Act」は、法人税率引き下げや所得税カット、大規模インフラ投資を組み合わせ、2025会計年度における歳出拡大と増税抑制を両立させることを目指す超党派法案です。総額2.4兆ドルに上る財政赤字を想定しつつ、経済成長率の引き上げと雇用創出を最大の狙いとしています。一方で、EV普及促進の象徴的措置であった7,500ドルの電気自動車税額控除が廃止される点が、自動車メーカーとEV業界に衝撃を与えました :contentReference[oaicite:1]{index=1}。
マスク氏は法案提出直後に「この法案は国家財政を破綻させる“忌まわしい”施策だ」とX(旧Twitter)で発言し、共和党内部にも賛否の声が広がりました。特に彼の指摘は、法案におけるEVマーケットの将来不安を浮き彫りにし、テスラ株の株価が一時急落。結果的に、マスク氏自身の資産も数十億ドル規模で失われたと報じられています :contentReference[oaicite:2]{index=2}。
その後、ポリティコ報道によれば、ホワイトハウス高官はトランプ氏への懸念表明や、トランプ氏の公的批判を抑えさせるよう調整し、マスク氏との電話会談を画策したといいます。しかし、最終的に「電話会談の予定はない」「提案はマスク氏側から出た」と公式声明を発表し、あくまでマスク氏の意思での和解提案であることを強調しました :contentReference[oaicite:3]{index=3}。
アメリカ政治史において、大統領と実業家の蜜月関係が急速に冷え込む例は珍しくありません。1970年代のフォード大統領とゼネラルモーターズ(GM)や、レーガン政権時の石油業界との連携からの分裂など、政権の政策優先度によって支持が反故にされるケースが繰り返されてきました。トランプ政権で立ち上げられた「Department of Government Efficiency(DOGE)」構想も、マスク氏の支援を背景に発足しましたが、その後の対立で政策的枠組みの争点となっています。
いずれも初期の距離感から、後期には政策内容を巡る対立が表面化し、恩顧関係が解消された点で今回のトランプ=マスク間の亀裂と共通しています。
ホワイトハウスは「大型減税・歳出法案」の成立を急ぐ姿勢を鮮明にし、マスク氏との確執を政策論争に留めることで、与党内の結束維持を狙います。一方、マスク氏は自動車市場の将来戦略を見据え、法案の修正やライバル企業支援を今後も模索するとみられます。この両者の対立と協調の間で揺れる政策動向は、アメリカ経済とテクノロジー業界全体に大きな影響を与えることが予想されます。
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