中国、比が南シナ海の南沙諸島で主権を侵害と非難 「断固、領土主権と海洋権益を守る」
2025/06/20 (金曜日)
談話は、法に基づきフィリピン船に対処したと主張。「中国は断固として領土主権と海洋権益を守る」と強調した。(共同)
2025年6月、中国政府は南シナ海上でフィリピンの船舶に対し「法に基づき対処した」とする談話を発表し、「中国は断固として領土主権と海洋権益を守る」と強調しました。この発言は、フィリピン海域での中国船の活動をめぐる非難が世界的に高まる中でのもので、長年にわたる南シナ海を巡る領有権紛争に新たな緊張をもたらしています。
南シナ海は東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国を含む複数国が領有権を主張し、海底資源・漁業資源の権益や主要航路の安全保障の観点から戦略的重要性が極めて高い海域です。とくにスカボロー礁(中国名・黄岩島)やスプラトリー諸島周辺では、1970年代以降、中国とフィリピンが実効支配を競い合ってきました。中国は「九段線」で海域のほぼ全域を自国の歴史的権益とし、埋め立てや施設整備を進め、フィリピン側は排他的経済水域(EEZ)の権利を主張して海上パトロールを強化しています。
2013年、フィリピンは国連海洋法条約(UNCLOS)第15部に基づき常設仲裁裁判所に提訴。2016年7月、「中国の九段線は国際法に根拠を欠く」との裁定が下されました。ただし中国は仲裁手続きを拒否し、「裁定には従わない」と全面否定しています。以降、国際社会は「海洋法の支配」を重視する立場を示し、中国の一方的施設建設や海上封鎖行為に懸念を示していますが、実効性は限定的です:contentReference[oaicite:0]{index=0}。
2025年3月には中国海軍艦艇がフィリピン軍艦に至近距離で接近し、航路を横切って「衝突リスク」を生じさせた事例が報じられました。フィリピン軍は「挑発的行動で地域の安定を損なう」と非難し、中国側は「正当かつ合法な自衛措置」と反論しました:contentReference[oaicite:1]{index=1}。また、同年1月には中国海警局船がフィリピンEEZ内で「違法巡回」を続けているとの非難もあり、両国の緊張は高まる一方です:contentReference[oaicite:2]{index=2}。
中国は談話で「海警法」や「海洋権益保護法」など国内法に基づき対応したと説明しています。これらの法律は、自国の領海・排他的経済水域における警備強化や法執行権限の拡大を規定し、外国船舶の活動を「不法」と判断した場合の退去命令や強制措置を認めています。さらには、海洋権益を守るための装備増強や警備船の増勢が続いており、西沙(パラセル)諸島や南沙(スプラトリー)諸島での拠点運用を強化しています:contentReference[oaicite:3]{index=3}。
米国や日本、EUなどは「中国の一方的現状変更」を批判し、法の支配に基づく平和的解決を求めています。日本は2023年2月の日・フィリピン共同声明において、不法な海洋権益主張や威圧的活動を強く反対すると明記しており、定期的に海上自衛隊艦艇を南シナ海に派遣してフィリピン海軍と合同訓練を行うなど、抑止力の強化を図っています:contentReference[oaicite:4]{index=4}。
ASEAN内では「共同声明」や「行動規範(COC)」交渉が進められているものの、中国と東南アジア諸国との溝は埋まらず、一部加盟国が中国寄りの姿勢を示すなど足並みがそろいません。地域の平和と安定を守るには、域外国を巻き込んだ多角的枠組みの強化や「海警局法」の透明性向上が求められています。
中国の「談話」は自国の主張を内外にアピールする狙いがありますが、仲裁裁定や国際慣習法に反するとの批判は根強く、実効的な抑止には至っていません。南シナ海の平和的解決には、法に基づく当事者間交渉と国際仲裁の尊重、多国間の協力強化が不可欠です。今後、中国・フィリピン双方が武力行使を回避し、国際法の枠組み内で交渉を再開できるかが、地域の安定を左右する重大なカギとなるでしょう。
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