若手キャリア官僚の離職深刻 背景
若手キャリア官僚の離職深刻 背景
2025/06/26 (木曜日)
経済ニュース
「7人に1人が辞めたい」若手キャリア官僚の離職数が過去最多を記録中・・・元官僚芸人が明かす “政治家との距離感”と“地獄の作業”
はじめに
2025年6月24日、内閣人事局が中央省庁および地方勤務の国家公務員６万人以上を対象に実施したアンケート結果が公表されました。調査によると「継続して勤務したい」と回答したのは48.2％にとどまり、「継続したいが不安がある」が29.3％、「数年以内に辞めたい」は9.5％となりました。中でも採用10年未満の若手キャリア官僚の離職数は過去最多を記録し、「７人に１人が辞めたい」と考えている実態が浮き彫りになっています :contentReference[oaicite:0]{index=0}。
１．調査結果の詳細
- 継続意向：48.2％
- 継続意向だが不安あり：29.3％
- 数年以内に辞めたい：9.5％（＝７人に１人）
特に30歳未満の若手職員では14.7％が「1年以内に辞めたい」または「辞める準備中」と回答。採用10年未満の退職者数は人事行政諮問会議の資料でも過去最多となり、国家公務員の人材確保に深刻な影を落としています :contentReference[oaicite:1]{index=1}。
２．長時間労働と報酬への不満
現場職員からは「激務に見合わない給与水準」「自己研鑽の時間を確保できない長時間労働」といった声が多く寄せられています。官庁では繁忙期に深夜や週末も休めず、ワーク・ライフ・バランスが崩壊。公務員給与は民間平均と比べて安定感はあるものの、若手には“薄給激務”の印象が強まり、辞職を考える要因となっています :contentReference[oaicite:2]{index=2}。
３．政治家との距離感──“地獄の作業”の実態
元官僚芸人の松本健介氏は、若手が直面する過酷な業務として「国会答弁準備」を挙げています。本来は答弁要旨を２日前までに確定させるルールがあるにもかかわらず、締切を無視した“前日深夜の質問”が日常化。加えて「通常業務と並行して膨大な資料を集め、読み込まなければならない」「政治家の意向をくみ取る調整に時間を取られ、自分の政策立案ができない」という現状を「地獄の作業」と語りました :contentReference[oaicite:3]{index=3}。
４．やりがいの低下と組織風土
多くの若手官僚が「自分の仕事が国のためになっている実感を失った」と語ります。トップダウン式の業務命令や、政治家からの急な指示変更が頻発し、無駄な調査や資料作成に追われる日々。松本氏は「若手にもっと裁量を与え、本来の政策立案業務に専念させるべき」と提言しています :contentReference[oaicite:4]{index=4}。
５．学生志望者減少の深刻化
こうした離職・意向調査の背景には、公務員志望者の減少があります。大学生を対象にした別の調査では、「激務薄給」「政治家との摩擦」「将来展望の見えなさ」を理由に公務員試験の受験意欲が低下。志望者減少は人事行政諮問会議でも重点課題とされ、採用増だけでなく、定着支援策の強化が急務とされています :contentReference[oaicite:5]{index=5}。
６．専門家の分析と提言
みずほリサーチ＆テクノロジーズ主席エコノミスト・河田皓史氏は「根本的に労働環境の改善が必要だが、それに加え『仕事の意義』を実感できる仕組みが欠如している」と指摘。長期ビジョンを描きやすいキャリアパスの提示や、政策フィードバック機能の強化を提案しています :contentReference[oaicite:6]{index=6}。
７．海外事例との比較
欧米の行政機関では、職員への早期キャリア育成プログラムやフレックスタイム制、明確な成果評価制度を導入し、公務員のモチベーション維持に成功しています。特に北欧諸国は「政策形成に若手が意見表明できる場」を制度化し、定着率を高める一因として注目されています。
８．今後の施策と展望
- ワーク・ライフ・バランスの徹底：フレックスタイム、テレワークの恒常化
- 若手裁量の拡大：課長補佐クラスへの政策立案権限付与
- 業務の効率化：デジタル化・AI活用による定型業務の削減
- メンター制度の導入：ベテランとの定期面談でキャリア支援強化
- 意義共有の仕組み：政策効果検証とフィードバックセッションの開催
まとめ
「７人に１人が辞めたい」という若手キャリア官僚の離職意向は、国家運営の基盤を揺るがす深刻な危機です。長時間労働の是正や裁量拡大のみならず、政治家との関わり方の見直しや、政策形成に携わる意義を実感できる組織文化の醸成が不可欠です。今後は若手官僚の声を丁寧に拾い上げる仕組みを整え、国家公務員制度の再構築を急ぐ必要があるでしょう。
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