税収上振れ赤字国債5兆円取りやめ
2025/07/02 (水曜日)
法人税収は「バブル期」以来の高水準、税収全体の上振れで「赤字国債」5兆円分取りやめへ
政府が2024年度一般会計決算の概要をまとめたところ、好調な企業業績を背景に法人税収が17兆9,000億円と「バブル期」以来の高水準に達した。また、税収全体も前年見込みから1兆8,000億円上振れの75兆2,000億円となり、その結果、当初計画していた赤字国債の発行額から5兆円分を取りやめることが決まった。
法人税収は1989年度のピーク以来、企業の国際競争激化や税率引き下げにより一貫して低下傾向にあった。2010年代以降はおおむね10兆円前後で推移してきたが、コロナ後の景気回復と円安追い風を受けて企業収益が急回復した結果、2024年度は17兆9,000億円となった 。この水準は1990年前後のバブル期に匹敵する。
全税収75兆2,000億円は、政府が2023年11月に見込んだ73兆4,000億円を大きく上回る 。税収上振れの要因は以下の通りである:
これにより、当初予定していた2024年度赤字国債発行額を5兆円減らし、発行総額を抑制することが可能になった。
赤字国債は、歳出が歳入を上回る際に不足分を補うための手段として発行される。日本の財政赤字は長年にわたり累積しており、国債発行残高はGDPの2倍を超える規模に膨張している。赤字国債発行を5兆円抑えることは、一時的な財政健全化への前向きな一歩と評価できる。
とはいえ、単年度の税収上振れだけで歳出削減を代替できるわけではない。日本の歳出構造は高齢化に伴う社会保障費が膨らみ続ける一方で、防衛や災害対策など新規需要も増大している。中長期的な財政健全化には、以下の取り組みが不可欠である:
欧州主要国では、付加価値税(VAT)や環境税など多様な安定税源を持ち、福祉支出を維持しつつ財政健全化に取り組んでいる。日本も消費税の活用率向上や資産課税の議論を深め、中長期的に安定した財源を確保する参考となる。
2024年度の法人税収増と税収全体の上振れは、一時的ながら財政に余裕をもたらし、赤字国債発行の5兆円抑制を可能にした。しかし、財政規律の確立には単年度の好調に頼らず、歳出構造改革や税制の中長期的見直しによる持続可能な財政運営が不可欠である。経済成長と財政健全化が両立する道を模索することが、我が国の将来を左右する最大の課題と言えるだろう。
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