高級車を転売 5億円申告漏れ指摘
2025/06/10 (火曜日)
大阪の医療法人元理事長に約5億円の申告漏れ指摘 東京国税局 フェラーリなど高級車を転売して利益か
2025年6月10日、東京国税局は大阪の医療法人元理事長(年齢非公表)について、フェラーリなど高級車を数台転売して得た利益を申告せず、約5億円の所得を隠蔽した疑いを指摘し、約3億円の追徴課税を命じました。中には1台で1億円超の利益があったとされ、法人理事としての背任や脱税手口の巧妙性が浮き彫りとなっています。この問題は、医療法人運営と個人資産管理の境界線、税務調査の手法、高額資産家の申告行動、さらには税制抜け穴の問題まで、幅広い論点を含んでいます。
問題の医療法人は、大阪市内で数ヶ所の診療所と介護施設を運営する中規模法人。元理事長は長年にわたり法人の財務責任者を兼任し、病院建設や医療機器導入を主導。法人収益は年間数十億円規模ですが、個人の高級車購入・売却は法人会計とは別に自らの資産管理口座で行われていたとみられます。
東京国税局は2024年秋からマネーロンダリング対策や金融機関との情報連携を強化し、高額車両の売買記録を特定。同局がフェラーリ数台の売買契約書、輸入・輸出のインボイス、銀行振込履歴などを押さえ、売却益の未申告を突き止めました。このように、資産取得・売却のデータマッチングを活用した情報分析が、脱税摘発に直結しています :contentReference[oaicite:0]{index=0}。
日本の所得税法では、個人が営利目的で資産を売却した場合、その譲渡所得は「譲渡所得」として総合課税の対象です。譲渡所得=売却価格―取得価格―必要経費で算定し、5年間保有した定着資産の場合は特別控除や長期譲渡所得の軽減税率が適用されます。しかし、元理事長は取得価額や経費を過小計上し、譲渡所得を意図的に隠していた疑いが強いといいます。
追徴課税総額は約3億円で、これには所得税、住民税、加算税、延滞税が含まれます。さらに法人理事長としての背任罪(刑法第252条)や組織的な申告指導の有無についても調査中で、刑事告発の可能性も取り沙汰されています。医療法人の社会的信頼を揺るがす事案だけに、法人そのものへの行政指導や監督強化が求められています。
高所得者層による資産売買での申告漏れは、近年多発しています。富裕層の資産移転や海外送金に関する税務当局の目は厳しくなり、2023年には仮想通貨取引の未申告事例で数百億円規模の追徴課税が行われました。特に、車や美術品、債券などの高額資産は評価方法が複雑で、意図的な過少申告が起きやすい領域とされます。
国内でも、2018年に芸能事務所社長が自家用ジェット3機の売却益を未申告で摘発された例(追徴約20億円)や、2021年に外資系企業元幹部が絵画・宝飾品の売買で約10億円を隠した事例(追徴約5億円)など、高額資産家による申告漏れ事件が相次ぎました。いずれも当局は情報交換強化とAI分析を駆使し、摘発率を大きく高めています :contentReference[oaicite:1]{index=1}。
医療法人は公益性が高いとされる一方で、診療報酬制度や医療機器減価償却の特例など税制優遇もあり、財務透明性の確保が喫緊の課題です。大規模法人では内部監査部門の強化、外部監査人の活用、理事長・理事の資産管理報告義務の導入が議論されています。また、厚労省と国税庁の連携で医療法人向けの税務ガイドラインが近日中に改訂される見通しです。
政府は2025年度税制改正大綱で、資産譲渡所得の申告漏れ対策を強化する方針を打ち出しました。具体的には、「事業用資産のダイレクト評価方式見直し」「匿名組合・ファンドを用いた間接運用の解消」「譲渡益に対する電子申告義務化拡大」などが検討課題です。これにより、脱税リスクのある分野での申告率向上と租税公平の実現が期待されます。
フェラーリなど高額車を転売し約5億円を申告漏れした大阪の医療法人元理事長への追徴課税命令は、資産譲渡所得での脱税摘発の最前線を示しました。医療法人という公益性の高い組織を舞台にした事件だけに、法人ガバナンスと税務コンプライアンス強化の機運はますます高まるでしょう。今後は個人・法人を問わず、高額資産取引の透明性向上を中心に、国内外の事例を参考にした税制・内部統制の一体的整備が不可欠です。
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