2000万円超着服 行司を懲戒解雇
2025/06/09 (月曜日)
日本相撲協会が行司の木村銀治郎を懲戒解雇、2000万円以上着服しギャンブルにつぎ込む
2025年6月10日、日本相撲協会は行司・木村銀治郎(きむら ぎんじろう)を懲戒解雇処分とすると発表しました。協会の運営資金から2000万円以上を着服し、その全額を競馬や競輪、オンラインカジノなどのギャンブルに投入したことが調査で判明したためです。本稿では、行司という役職の責務と権限、木村行司の経歴と事件の詳細、相撲界における過去の不祥事との比較、協会のガバナンス体制の変遷、さらにはギャンブル依存の問題とスポーツ界全体における金銭不正への対策などを幅広く解説します。
行司は取組の判定を行うだけでなく、相撲の伝統と品位を体現する重要な立場です。土俵上で軍配を振り、力士の勝敗を宣するほか、土俵の設営・清掃、儀式進行補助、裁定の解説など多岐にわたる業務を担います。また、協会が定める「相撲道」の模範となるべく、礼儀作法や節度ある言動が求められます。
木村銀治郎行司は1998年に行司見習として協会入りし、以降「式守伊之助」などの名跡を経て、2020年に正式に「木村銀治郎」を襲名。幕内取組の裁定を任されるなど協会内でも信頼が厚い存在でした。しかし、2024年秋から協会の会計部門に非常勤で関与するようになった際、協会口座からの不正振込が発覚。内部監査で立証された着服額は総額約2200万円に達し、弁済の見通しが立たないため懲戒解雇が決定されました。
相撲界では過去に八百長問題(2011年)、親方による暴力事件、脱税問題など多くの不祥事が発覚しましたが、行司が業務資金を着服したケースは異例です。八百長事件では力士や親方が処分を受け、協会は番付の白紙化や理事の一斉辞任を経て改革を打ち出しました。木村行司の事件は、日常業務の信頼を根幹から揺るがす行為として、従来の対応より一層厳格な再発防止策が求められる事案です。
2011年以降、相撲協会は外部有識者を交えたコンプライアンス委員会を設置し、内部監査や資金管理の強化、理事選考基準の見直しを実施しました。また、財務諸表の公開や会計監査人の導入を通じて透明性を高めています。しかし、今回のような行司による内部犯行は、協会内のチェック体制に新たな穴があることを示唆しており、さらなるガバナンス強化が急務です。
木村行司は着服した資金をすべてギャンブルに投入したと供述しており、依存症の兆候が指摘されています。競馬やオンラインカジノは特に若年層を含む幅広い層で依存リスクが高く、他のスポーツ関係者にも同種の問題が散見されます。スポーツ界全体でメンタルヘルス対策やギャンブル依存防止教育を強化し、早期発見・介入の仕組みを構築する必要があります。
海外プロスポーツ界では、選手や審判による賭博違反防止のため、厳格なエージェンシー規則や内部通報制度、定期的なアンチギャンブル講習が義務化されています。日本でも野球界の賭博問題(2015年)を契機に、日本野球機構(NPB)が独立委員会を設置し、情報漏洩・賭博行為を禁止する厳罰規定を整備しました。相撲協会も同様の第三者監視機関設立や匿名通報システム導入の検討が急がれます。
木村行司の解雇を受けて、相撲協会は次の対策を講じる必要があります。まず、会計部門に限らず、すべての役職者に対する定期的な資産・行動調査の実施。次に、ギャンブル依存症に対する社内相談窓口の設置と専門機関連携による治療支援。さらに、内部告発者保護制度の整備と、外部有識者を含む監査委員会の権限強化が求められます。これらを徹底することで、再び相撲界の信頼を回復し、伝統文化を後世に継承する基盤を強固にすることができるでしょう。
日本相撲協会が木村銀治郎行司を懲戒解雇した事件は、相撲界のガバナンスとコンプライアンス体制の未熟さを露呈しました。行司という伝統的役職者による着服とギャンブルへの投入は、協会内部のチェック機能強化と、スポーツ関係者のメンタルヘルス・依存症対策の必要性を改めて浮き彫りにします。今後は他競技の事例も参考にしながら、透明性と信頼性を兼ね備えた組織運営を推進し、相撲文化の健全な発展を目指すべきです。
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