佐々木尽 失神KO負け担架で搬送
2025/06/19 (木曜日)
佐々木尽、5回失神KO負け 立ち上がれず担架で搬送、意識はあり 日本人初の快挙ならず 無敗王者ノーマン完勝
2025年6月19日、東京・大田区総合体育館で開催されたWBO世界ウエルター級(66.6kg以下)タイトルマッチにおいて、同級2位の挑戦者・佐々木尽(23=八王子中屋、プロ戦績19勝17KO1敗1分)は無敗王者ブライアン・ノーマンJr(24=米国、27勝21KO2無効試合)に5回46秒、強烈な左フック一発で失神KO負けを喫し、日本開催では1989年12月の尾崎富士雄対マーク・ブリーランド戦以来36年ぶり、同級挑戦は16年ぶり6度目(5人目)が悲願の王座獲得には至りませんでした。
試合は序盤から王者ノーマンJrの強打が冴えわたり、初回開始35秒、左フック一発で佐々木は大きくバランスを崩してダウン。立ち上がっても王者の連打に押され、2回には追加ダウンを浴びます。果敢に反撃し打ち合いを挑む場面もありましたが、迎えた5回46秒、再び「世界トップクラス」と評される左フックがクリーンヒット。佐々木は後頭部を強打して失神し、大の字のままストレッチャーで搬送される事態となりました。
2001年7月28日、東京・八王子市生まれ。小学校時代に柔道で都大会2位の実績を残し、中学1年からボクシングを開始。帝京高校ではインターハイ優勝。2018年にプロデビュー後、初期は17連続KO勝利を含むハイペースで勝利を重ねました。しかし、2019年の東日本新人王決勝を計量失敗で棄権、2021年のWBOアジア・パシフィック&日本スーパーライト級王座決定戦では体重超過の末にTKO負け、2023年には左肩腱板断裂で手術と長期離脱を経験するなど数々の挫折を抱えてきました。
苦難を乗り越えた佐々木は、2020年に日本ユース・スーパーライト級王座、2023年1月にWBOアジア・パシフィック・ウェルター級王座、2024年5月に東洋太平洋同級王座を獲得。軽量級出身ながら高いKO率を誇り、「ジャパニーズ・ブロウ」と称される強打者として国内中量級戦線を牽引しました。3月30日にはラスベガスで王者ノーマンJrの防衛戦を現地観戦し、試合直後に挑戦状を突きつけるなど行動力も際立ちます。
師匠・中屋廣隆チーフトレーナーは30年以上の指導歴を持ち、私財を投じて佐々木をラスベガス遠征へ連れ出し世界戦観戦を経験させるなど、弟子の成長に全力を傾けてきました。高校時代に「これからはボクシング一本でやります。世界チャンピオンになります」と誓った尽の夢を後押しし、生活面からスポンサー探しに奔走。佐々木も「人生を懸けてやらないと世界チャンピオンにはなれない」と覚悟を口にし、遊ぶ時間も捨てて練習に打ち込んできました。
ウエルター級は世界的に競技人口が多く「激戦階級」と呼ばれる一方、日本人世界王者は未だ誕生していません。今回の挑戦は国内での注目を一挙に集めたものの、体格差や国際的経験不足が浮き彫りとなりました。日本ボクシング界は今後、中量級以上の若手を早期から強豪国への遠征やハイレベルスパーリングに送り込むシステム構築が急務となります。
試合後、佐々木は脳震盪と肋骨骨折が確認されたものの大事には至らず、復帰に向け調整中。中屋トレーナーは「ここで終わりではない。彼の闘志は次の世代にも伝播する」と励まし、JBC(日本ボクシングコミッション)は中量級選手の育成プログラム拡充を年内に発表する方針です。佐々木の挑戦は日本中量級の再興を促す契機となり、若武者たちが次々と世界を狙う未来を象徴しています。
悲願のベルト奪取は果たせなかったものの、佐々木尽の挑戦は日本ボクシング界に新たな息吹をもたらしました。苦難を乗り越え、生涯を懸けて拳を磨く男の姿は、多くのファンに勇気と希望を届けています。国内開催36年ぶりの世界戦は終幕しましたが、真の物語はこれから始まります。若き挑戦者の次なる一歩に、再び世界の視線が注がれるでしょう。
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