中国の大学入試 AIで不正を監視
2025/06/07 (土曜日)
IT・科学ニュース
中国 “人生を決める”統一大学入試「高考」はじまる 相次ぐ不正行為に“AI監視カメラ設置”など対策を強化
「高考」(全国統一大学入試)は、中国本土の普通高校卒業生および相当資格者を対象とする、全国統一の大学入学選抜試験です。毎年6月上旬に実施され、2025年は約1,335万人が受験登録を行い、約7万人減少したものの依然として厳しい競争を強いられます。合格者数や志望校への配分は得点順位に応じて行われ、「人生を決める試験」とも称されます :contentReference[oaicite:0]{index=0}。
高考の前身となる全国統一入学試験制度は1952年8月に初めて実施され、その後「大躍進」政策の混乱期や文化大革命(1966~1976年)により一時中断されました。文化大革命終結後の1977年12月10日、11年ぶりに制度が復活し、約570万人が受験、うち約27万人(約4.8%)が合格した「クラス1977」が中国教育の転換点となりました :contentReference[oaicite:1]{index=1}。
2025年の高考は全地域で「語文」「数学」「外語」の3科目が統一試験とされ、その後、文系・理系に分かれて「総合科目」(文系は歴史・政治・地理から、理系は物理・化学・生物から)を選択します。さらに、第五次改革省(山西、内蒙古、河南など8省)では「3+1+2」方式を初導入し、受験生は共通3科目に加え、1科目を「物理or歴史」から、2科目を「政治・地理・化学・生物」から選択します :contentReference[oaicite:2]{index=2}。
2014年以降、上海・浙江を皮切りに全国順次導入された「高考総合改革」は、従来の一発重視型から多元評価型へと移行を図ります。2025年には29省が改革を完了し、志願入力専用の「陽光志願」システムを運用。教育部は各地に対し、ネット環境の浄化や模擬志願の提供、中学教員への研修強化などを通じて、情報格差の是正と受験生支援を強化しています :contentReference[oaicite:3]{index=3}。
高考を巡る不正では、過去にスマートグラスや小型無線イヤホン、消しゴム型送受信機など高度なカンニング機器が使われた事例が報告されています。また、携帯電話で問題を撮影しSNSに投稿、リアルタイムで解答を入手するケースも発生しました :contentReference[oaicite:4]{index=4}。これを受けて、2025年は全国の約3.6万室の試験場でAI監視カメラを活用したリアルタイム巡回監視を100%カバーし、入口ではスマートフォン、ウェアラブル端末、電子機器の徹底検査が行われています :contentReference[oaicite:5]{index=5}。
教育部は「高考護航行動」と称し、警察と連携した交通支援、緊急医療体制、宿泊施設・食事の提供、盲文・拡大文字・手話通訳など障がい者支援を一体で運用します。2025年は全国7899の考点、35.5万室の常設試験室に加え、2.1万の予備室を設置し、約105万人の監考員を配置。さらに、試験車両の衛星追跡や白バイ先導など、中国ならではの大規模安全輸送網が展開されています :contentReference[oaicite:6]{index=6}。
高考は中国の学歴社会を象徴する一方で、長時間の詰め込み教育や受験ストレス、農村部と都市部の格差拡大を懸念する声も根強い。記憶中心の出題傾向が批判され、創造力・批判的思考育成を阻害するとの指摘があります。また、成功未達者の進学・就職機会が制限されることで、人生の早期決定を強いる制度的ハードルとしても課題視されています :contentReference[oaicite:7]{index=7}。
AI監視カメラなどテクノロジー導入は不正削減に貢献する一方で、受験生のプライバシーや監視社会化への懸念も指摘されています。最新研究では、映像の一部を意図的に加工する「視覚的データ不鮮明化」がプライバシー保護と公平性を両立する可能性が示唆されており、リモート監考技術の将来的課題となっています :contentReference[oaicite:8]{index=8}。
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