鬼滅キャラ無断で広告利用か 物議
2025/06/09 (月曜日)
IT・科学ニュース
AIキャラチャットアプリ、「鬼滅の刃」「ヒロアカ」のキャラを“無断で広告利用”か Xで物議に
近年、AIチャット技術を活用したキャラクター対話アプリが多数登場するなか、人気アニメ「鬼滅の刃」や「僕のヒーローアカデミア」のキャラクターを無断で広告に利用しているとの疑いがSNSで話題となっています。アプリ提供者は「ファン向けの二次創作」と説明する一方で、原作権利者や視聴者からは「著作権侵害」「イメージ毀損」との批判が寄せられ、騒動は拡大しています。
AIキャラチャットアプリは、ChatGPTなどの大規模言語モデルをベースに、ユーザーが特定キャラクターと対話できるスマホ向けサービスです。感情解析やシナリオ生成機能を応用し、「炭治郎に励ましてほしい」「緑谷とバトル会話を楽しみたい」といった疑似体験を提供します。無料版と有料版があり、有料プランでは限定ボイスやキャラ画像生成などの追加機能が売りとされています。
問題となったのは、公式ロゴやキャラクター原案を無許可でアプリ広告に流用しているケースです。Google Play やSNS広告では、炭治郎・煉獄・デクなどのアイコンや場面カットを「AIが生成」として掲載。アプリストアの説明文でも「キャラクターとの本格対話」と銘打ち、著作権表示や版権情報の明示を行っていないため、原作ファンだけでなく権利者側にも強い不快感を与えています。
日本の著作権法では、漫画やアニメのキャラクターは「著作物の対象」として保護され、二次創作や商業利用には原作者または権利管理団体の許諾が必要です。キャラクターの立ち絵や声優演技を無断で広告に用いる行為は、著作権侵害だけでなく、不正競争防止法における「著名表示の信用毀損」や「商品の形態模倣」にも該当する恐れがあります。違反が認定されると、差止請求や損害賠償請求の対象となり、刑事罰が科されることもあります。
過去には「ポケモン」「ワンピース」「ドラゴンボール」などで、ファンサイトや無許可グッズ販売が摘発されたケースがあり、権利者側から何度も警告が発信されてきました。公式ガイドラインでは、ファン活動として二次創作を認めつつ、営利目的でのキャラ使用を禁じる例が一般的です。今回のAIアプリ騒動も、従来の二次創作問題の延長と見る向きが多く、原作元からも厳しい対応が予想されています。
版権管理を行う出版社や映像制作会社は、無断利用を確認次第、プロバイダ責任制限法に基づく情報開示請求や、広告配信プラットフォームへの著作権侵害コンテンツ削除要請(DMCA通知)を行うことが通例です。さらに、重大な場合は法的措置を検討し、アプリ開発者やプラットフォーム運営元に対し損害賠償を求める動きもあります。
日本では同人誌やファンアートなど、二次創作文化が長年にわたり発展してきました。クリエイターの創造性を促進する一方で、商業利用や著作権表示の不履行がトラブルを招くことも少なくありません。AI生成技術の登場により、一次創作と二次創作の境界が曖昧となり、法規制やガイドラインの見直しが急務となっています。
アプリ販売時にキャラクターの魅力を伝えるには、権利者と正規契約を締結し、ロゴやビジュアル素材を使用許諾を受けたうえでプロモーション素材を制作する必要があります。また、声優起用時には音声使用権をクリアし、著作権フリーのイラストや自社開発キャラを活用する方法もあります。版権コストはかかりますが、長期的なブランド信頼確保には不可欠です。
AIチャットアプリ市場は今後も拡大が見込まれますが、著作権侵害リスクを回避するための倫理規定整備や法的枠組みの整備が追いついていません。政府や業界団体によるガイドライン策定、プラットフォーム運営元による広告審査強化、開発者コミュニティでの自主規制など、多層的な取り組みが求められます。また、ユーザー側も著作権意識を高め、「お気に入りキャラだからこそ正しい方法で楽しむ」文化の醸成が急務です。
「鬼滅の刃」「ヒロアカ」のキャラクターを無断で広告利用したAIチャットアプリ問題は、著作権法とファン文化の狭間で起きた典型的事例です。AI技術の進展が著作権侵害を助長しないよう、法令順守と倫理観に基づく開発・プロモーション手法の確立が急がれます。原作権利者、開発者、運営プラットフォーム、ユーザーがそれぞれの立場で適切に行動し、健全な市場の成長を促進することが求められています。
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