「デカすぎる」選挙掲示板 背景は
2025/06/08 (日曜日)
地域ニュース
「半分以上青い」選挙掲示板 「ジャック」に備え? 都議選、参院選
東京都文京区などで見られた選挙掲示板の大半をブルーシートで覆い隠す光景がSNSで話題となり、「半分以上青い」と称されている。掲示板中央の白い枠部分のみが東京都議会議員選挙用として顔を出し、周囲の大部分は工事現場で使われるブルーシートで覆い隠された状態だ。設置現場では「何をやっているのか」「選挙ポスターはどこに貼るのか」と住民らが戸惑いの声を上げる一方、自治体関係者は「ポスター・ジャッキングへの備え」と説明している :contentReference[oaicite:0]{index=0}。
公職選挙法では、候補者が自らの政策や顔写真を掲示できる「ポスター掲示場」を各選挙区内に設置することが義務づけられている。掲示板の数は選挙区ごとの候補者数分が用意され、掲示可能な期間は「公示日翌日から投票日まで」と定められている。自治体は掲示板の設置場所や大きさ、材質などを決めるが、内容の審査権限はなく、虚偽や中傷、著作権侵害がない限り掲示物は自由とされる 。
東京都では年内に都議選と参議院選挙(東京都選出議員選挙)が予定され、同じ掲示板を両選挙で活用する自治体が多い。渋谷区では日程未定の参院選にも備え、投開票日を仮定して掲示板を先行設置したため「7月20日」が透けて見える事態が発生し、都選管から修正要請を受けた :contentReference[oaicite:2]{index=2}。
2024年の東京都知事選では、NHKから国民を守る党が寄付者に掲示板枠を販売し、寄付額に応じて寄付者の任意ポスターを貼る戦略を展開した。この「ポスター・ジャッキング」により、候補者以外の広告や営利目的のチラシが掲示板を占拠し、住民から苦情が相次いだ。制度の盲点を突いたこの手法は公職選挙法の抜本的見直し議論を招き、選挙管理委員会や総務省による制度改革検討が加速している :contentReference[oaicite:3]{index=3}。
こうした事態を受け、文京区など複数の自治体は掲示板の設置準備段階でブルーシートを被せ、貼付作業の本番開始まで内部構造や区画を隠蔽する方式を採用している。掲示板枠ごとに分割して覆うことで本来の掲示スペース以外への貼付を難しくし、「ジャック」行為を防止する狙いがあるという。覆ったまま公示日を待ち、告示開始とともにシートを取り外す運用を各選挙管理委員会が調整している。
掲示板を通行中に目にした住民からは「まるで仮設現場のよう」「選挙ポスターを貼るスペースが小さすぎるのでは」といった戸惑いの声が聞かれる。一方、選挙管理委員会職員は「見た目は派手だが、候補者同士の公平性を守るための苦肉の策」と説明し、手間が増えても運用を継続する考えを示している。
掲示板ジャックを防ぐ暫定的対応が続く中、与野党や選挙管理委員会では公職選挙法や選挙関連条例の抜本的見直しが議論されている。事前登録制や掲示内容の審査強化、掲示期間外の表示禁止の徹底などが検討されており、2025年通常国会で法改正の動きが加速する可能性がある。
海外ではEU各国で電子ロック付き掲示板を導入し、未登録者の掲示物を自動検出して通報するシステムを試験中だ。日本でも一部自治体がICTを活用したスマート掲示板の実証実験を開始しており、将来的な全面移行が期待されている。
都議選・参院選を前に掲示板の「半分以上青い」光景は、ポスター・ジャッキングへの警戒感から生まれた自治体の対応策だ。候補者の公平な競争と有権者への正確な情報提供を両立させるため、掲示板運用ルールの制度的整備が急務となっている。
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