心疲れた子へ セラピードッグ活躍
2025/06/15 (日曜日)
小学校にセラピードッグ入学 心疲れた子へ 「教育目標より笑顔を」
2025年春、東京都内の小学校でオーストラリアン・ラブラドゥードルのセラピードッグ「アン」が正式に“入学”し、校内を歩き回る試みが始まりました。コロナ禍以降、子どもたちのストレスや孤立感が深刻化する中で、学力や行動目標ではなく「まずは笑顔を取り戻す」ことを最優先に置く教育方針の象徴として注目されています。
文部科学省の調査によると、2023年度の不登校児童生徒数は過去最多を更新し、心身の疲弊を訴える声が増えています。従来のスクールカウンセラーや特別支援教育だけでは対処が難しいケースがあり、動物介在教育(Animal-Assisted Education)への関心が高まりました。動物と触れ合うことでオキシトシンの分泌が促され、不安や緊張の緩和、コミュニケーション意欲の向上が期待されます。
生後4週間でセラピー適性検査を通過し、専門ハンドラーとともに約半年間の訓練を経て、小学校への常勤配属が実現しました。
動物介在教育は20世紀初頭のイギリスに端を発し、1961年に米国の児童精神科医ボリス・レヴィンソンが「犬とのふれあいが自閉傾向の子どもの心を開いた」ことを報告して学術的に認知されました。以降、米国や欧州、日本では高齢者ケアやリハビリテーション、児童教育など幅広い分野で導入が進んでいます。
アンとのふれあいは以下の3モジュールで構成されます。
導入から2か月で以下のような効果が報告されています。
特に発達障害傾向のある児童や不登校経験児に顕著な改善が見られました。
日本国内では福島県会津若松市の幼稚園や静岡県御殿場市の高校でも犬を導入しており、米国シンシナティ学区の動物介在プログラムでは〈幸福度スコアが25%向上〉という統計結果が出ています。英国のPAWSプログラムは全国18地域で実施され、教員研修もパッケージ化されています。
小学校へのセラピードッグ導入は、学力偏重の教育モデルに新風を吹き込み、「まずは笑顔を取り戻す」という原点に立ち返る試みです。ANNEのようなセラピードッグは、子どもたちの心の栄養剤となり、学びの土台を安定化させる役割を果たします。今後は他教科との連携や学術的効果検証を進め、全国的なモデルとして確立していくことが期待されます。
出典:朝日新聞デジタル「小学校にセラピードッグ入学 心疲れた子へ『教育目標より笑顔を』」(2025年6月15日)、TBSニュース DIG.「新入生はセラピードッグ…苦手を乗り越える子犬と子どもたちの1か月」、文部科学省「令和5年度 子どもの学び・心の健康調査報告」
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