万博会場で菌も レジオネラ症とは
2025/06/10 (火曜日)
大阪・関西万博の会場内にある施設からレジオネラ菌の仲間が検出され、万博協会の対応が遅れ、批判されています。この施設では噴水があり、子どもが水遊びをするということです。レジオネラ菌による感染症の報告はまれではありませんが、菌が存在する飛沫を吸い込むなどすると感染する危険性があり、肺炎などのレジオネラ症を発症すると場合によっては死亡
2025年6月4日、万博会場「ウォータープラザ」に設置された観客向けの噴水から採取した水から、レジオネラ属菌が『レジオネラ症防止指針』の基準値を超過する濃度で検出されたことが、万博協会の水質検査で判明しました。発表後、同日夜の「アオと夜の虹のパレード」など水演出を伴う公演は中止されましたが、噴水全域を通じた再検査や施設消毒が遅れたことで、SNSや報道で「対応が後手に回った」と厳しい批判を受けています。
レジオネラ属菌は淡水環境に自然に存在する細菌で、循環式浴槽や噴水などで繁殖しやすいことが知られています。菌を含む微細な水滴(エアロゾル)を吸い込むと、発熱や咳を伴う肺炎(レジオネラ症)を発症する恐れがあり、重症化すると死亡例もあります。主に高齢者や持病のある人が重症化しやすく、感染例は日本全国で毎年数百件報告されており、過去にはバブル期のホテルや公共浴場で集団感染が社会問題化しました。
協会の発表によると、通常の定期水質検査で基準超過が判明したのは6月4日18時頃。大阪市保健所(会場衛生監視センター)へ即時報告し、午前中から実施予定だった水上ショーや水遊びエリアの運営を直ちに停止しました。しかし、その後の消毒作業や全面再検査の準備が進まず、当日夜だけでなく翌晩までショーが中止されたことで、集客計画や周辺の飲食・物販事業者にも大きな影響を与えました。
岐阜大学大学院の永井宏樹教授(細菌学)は、レジオネラ属菌は高温多湿な環境で繁殖が加速しやすいが、「屋外施設でエアロゾルをコントロールするのは難しい」と指摘しています。大学病院での観察例では、浴室の循環システムよりも噴水のように飛沫を撒き散らす設備の方が、菌の拡散リスクが高いとの報告があり、同教授は「定期的な高温殺菌とエアロゾル発生源の遮断が不可欠」と助言しています。
2000年代には、温泉施設でのレジオネラ症集団発生が社会問題となり、浴槽の循環設備や塩素投与量、清掃頻度のガイドラインが強化されました。公共噴水や遊水池では、フランスやドイツでも類似の集団患者が報告されており、国際保健機関(WHO)は「公共用水施設のエアロゾル対策」を推奨。大阪万博の事例は、国際イベント会場での対策がいかに複雑かを示すものです。
協会は6月5日から噴水の全機能停止と給水配管の高圧洗浄、熱水による殺菌を順次実施中。また、来場者の医療費負担を協会が全額負担すると表明し、感染予防情報を公式ウェブサイトと会場アプリで随時更新しています。さらに、今後は定期的に外部委託による水質モニタリングを行い、万博終了まで毎週検査結果を公開することで、透明性の確保を図る方針です。
ウォータープラザの噴水演出は連日数万人規模の集客を誇り、周辺グルメや物販売り場にも波及効果がありました。ショー中止は入場者数の減少を招き、飲食店舗やグッズショップの売上は減少。観覧チケットの払い戻し対応やショー再開時の振替券発行などで、運営コストと損失補填額は数億円規模になるとみられ、万博協会の収支計画にも大きく影響する見込みです。
現時点で万博会場でのレジオネラ症発症者の報告は公式には確認されていませんが、来場者から「発熱後にレジオネラ症と診断された」との匿名証言がSNSに散見され、保健所や医療機関では関連調査が開始されています。万博協会は、症状が出た来場者に専用窓口を案内し、症状確認と情報提供を継続する体制を整えています。
大阪・関西万博の水遊び施設でのレジオネラ属菌検出は、巨大国際イベントのインフラ管理の難しさを浮き彫りにしました。今後は万博協会が迅速かつ透明性ある対応を継続するとともに、専門家チームとの連携を強化し、再発防止策を徹底することが求められます。公衆衛生の確保と運営継続の両立に向けた取り組みが、今後の開催成功のカギを握っています。
コメント:0 件
まだコメントはありません。