南極で中国の観測施設が倒壊
2025/06/25 (水曜日)
総合ニュース
【独自】南極で中国の観測施設が倒壊…昭和基地周辺に通告なしに設置 建物のがれき飛散…状況伝え中国側が現地で撤収作業か
2025年6月25日、昭和基地から約20キロ離れた地点で、中国が設置したドーム状観測施設が倒壊しているのがFNNプライムオンラインの取材で確認された。周辺にはがれきが散乱し、強風や氷雪による損壊が想定されるものの、問題は気象だけではない。そもそも本施設は日本側への通告なく、南極条約で義務付けられた事前通知を行わず設置されていた疑いが強く、条約精神を揺るがす事態となっている。
このドームは2023年1月の映像にも映っていたが、当時から日本や他の締約国への協議がなかった。中国側は南極研究の国際貢献を掲げるが、基地外での無許可フィールドキャンプは条約上の手続きに反する。その後、強風が吹き荒れた2025年6月上旬に倒壊が始まり、隊員の安全を脅かす状況になっていた。
1959年に発効した南極条約第VII条では、各国は「南極に設置するいかなる基地・施設も他の締約国に事前に通知」することを定める。【出典:南極条約事務局】にもかかわらず、中国は正式な手続きを踏まずに設置を進めたとみられる。この義務違反は他国の科学活動に悪影響を及ぼし得る。
条約に付随するマドリード議定書は「施設残骸や廃棄物を迅速に撤去し、環境への影響を最小限に保つこと」を求める。しかし、倒壊した建材が氷上に放置され、風で遠方まで飛散する懸念がある。氷床や近海の生態系への長期的ダメージも危惧される。
日本の昭和基地は1957年開設、60年以上にわたり地球物理学・気象・生物多様性調査を継続してきた国際共同研究の拠点だ。同基地では雪荷重を考慮した設計と定期的な点検が徹底され、倒壊事故はほとんど発生していない。【出典:Wikipedia「アムンゼン・スコット基地」】
中国は1985年の長城基地を皮切りに、中山・昆崙・泰山・秦嶺基地と次々に拠点を拡大。研究規模は急速に拡大する一方、条約手続きの遵守状況には疑問が残る。今回の無許可ドームも、公式基地ではなく臨時キャンプとして設置された可能性がある。
米国やオーストラリア、英国などは中国の南極活動を警戒しており、「科学研究の名目で軍事的偵察や資源調査が行われるのでは」との懸念を表明してきた。南極条約の「平和利用」原則が揺らぎかねない事態として、各国間の協議活性化が急務となっている。
2000年代にはロシアやインドの小規模調査隊が手続きを怠ったケースが報告されたが、いずれも速やかに是正された。今回のように残骸が放置される事態は例外的であり、対応の遅れが浮き彫りとなった。
南極は「最後の自然保護区」と呼ばれ、生物多様性は微小な微生物群集に大きく依存する。がれきに混入した金属片や塗料成分が氷床融解時に周辺海域に流出すると、生態系への不可逆的な影響を与える恐れがある。
第66次日本南極地域観測隊は倒壊を確認後、中国側に撤収要請を実施。中国は現地作業隊を派遣し、残骸撤去の準備を進めているという。しかし、正式な報告書提出や完了時期の公表は未定であり、条約違反状態が続く懸念がある。
南極条約締約国は情報共有と履行確認のため、「南極活動監視委員会」の設置や定期現地検査の義務化を検討すべきだ。技術的には衛星監視やドローンの自動パトロールを活用し、無許可活動を早期発見する仕組みが求められる。
中国の無許可ドーム倒壊は、南極条約と環境プロトコルの遵守がいかに脆弱かを示す出来事である。昭和基地周辺の安全と環境保全を守るため、締約国間の協力体制を強化し、万全の監視・是正メカニズムを構築することが急務である。
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