品薄のはず 銘柄米なぜ突然店頭に
2025/06/06 (金曜日)
品薄のはずのコメが突然店頭に 銘柄米が並びだした理由とは? 価格下落の兆しも
備蓄米の販売が5日から大手コンビニで始まり、小泉進次郎農水大臣が視察に訪れた。備蓄米が各地に出回っているなかでネット上では、「ガラガラだったスーパーの棚に銘柄米が山積みになっている」という声が出ている。
「スーパーで銘柄米が山積み」相次ぐ投稿
SNSの投稿
「備蓄米が安く放出されると決まったら店頭に銘柄米が並びだした」
2日に都内で撮影されSNSに投稿された写真には、宮城県産ひとめぼれや新潟県産こしひかりなど銘柄米がビッシリと棚に並んでいる。
さらに、「眠ってたコメが出始めるのでは?って見たのでスーパー行ったらこれがこれだった」という投稿もあった。
先月21日に撮影されたものと10日後の31日のスーパーの棚を比べると、空だった棚には、ななつぼしやゆめぴりか、こしひかりなどが並んでいる。
SNSの投稿
「ここの棚がこんなに埋まったの久しぶりに見た。値段はまだ高いけど徐々に落ち着くかな」
実際にスーパーの棚にコメは戻ってきたのか、番組では各地のスーパー30カ所を取材!そこから見えてきたものとは?
■専門家「卸が販売を抑制していた」
これまで品薄状態が続いていたスーパーのコメの棚。今、SNSでコメの販売コーナーに商品が戻ってきているとの投稿が相次いでいる。
本当に商品が山積みとなっているのか、まずはスーパーアキダイの秋葉弘道社長に聞いてみた。
「今までは例えば100頼んでも80みたいな感じで、注文に対して実際に来た数が少なかった。最近はそういうこともなく注文した数がしっかり来る」
2月、アキダイを取材した時は銘柄によっては欠品していたコメの棚。しかし今月5日、改めて棚を見せてもらうと、あきたこまちやコシヒカリなど銘柄米が並んでいた。
しかし、値段は備蓄米が出回る前と変わらず4000円台半ばだ。
「この6月の値段を決定するにあたっては、5月20日くらいにはもう決まっちゃっているんですよ。7月にはほぼ確実に値が下がるでしょうね。5キロあたり200〜300円下がると思う」
関東圏を中心に店舗を展開しているスーパーマーケットのオーケーでは…。
「備蓄米の購入希望が多く、銘柄米は買い控えの傾向がある。(その結果)一時期より銘柄米の在庫が増えている」
首都圏を中心に数十店舗を展開する規模のスーパーでも。
「以前は品不足だったが2、3週間前から安定してコメが並ぶようになった」
小泉大臣が随意契約で備蓄米を放出することを表明したころから、銘柄米が安定して入ってくるようになったという。
一方、番組の取材に応じてくれたスーパーの多くで銘柄米の入荷量に変化はなかったという。
2025年6月初旬、東京都内を中心とするスーパーの米売り場で、宮城県産ひとめぼれや新潟県産こしひかりなど銘柄米が大量に陳列される光景がSNSで次々と投稿されました。これまでは備蓄米放出前の品薄状態が続き、銘柄米が入荷してもすぐ売り切れてしまう状況が常態化していましたが、小泉農林水産大臣が政府備蓄米放出を決定したことをきっかけに、卸や小売店の動きが変化し、通常通りの発注数が納品されるようになったといいます。しかし、値段は依然として高値圏にあり、6月中旬以降に若干の値下がりが見込まれているなど、需給と価格の動向が注目されています。本稿では、スーパーの銘柄米が「山積み」になった背景、政府の備蓄米政策の歴史、過去の米価高騰と緊急輸入の事例、流通・卸売の仕組み、そして今後の価格動向や消費者への影響などを、他地域や過去事例と比較しながら解説します。
2025年6月2日から3日にかけて、東京都内の複数スーパーで撮影された写真がSNS上に投稿され、「宮城県産ひとめぼれ」「新潟県産こしひかり」「北海道産ななつぼし」「北海道産ゆめぴりか」など、人気銘柄米がびっしりと店頭に並ぶ様子が拡散されました。これまでは空だった棚が一気に埋まったことから、「備蓄米放出の影響でようやく銘柄米が手に入るようになった」という見方が広まりました。実際、2月に訪れた同様の店舗では品薄状態で棚がガラガラだった一方、5月末には注文した銘柄がほぼ100%納品されるようになったと、スーパーアキダイの秋葉弘道社長は証言しています。
スーパーマーケット「オーケー」でも、備蓄米への需要が高まる中で「消費者が安い備蓄米を先に購入するため、銘柄米の買い控えが起こり、結果として在庫が増えた」という指摘がありました。首都圏中心に店舗を展開するチェーンでも、2~3週間前から冠水していた棚に米が安定供給されるようになったといいます。
このように棚に銘柄米が「山積み」になった要因は、(1)政府備蓄米放出の発表にともない、業者が卸売販売を抑制していた状況が解消された、(2)消費者が備蓄米を優先購入したため一時的に銘柄米の売れ行きが鈍化し、在庫が積み上がった、(3)来月以降の価格下落を見越して業者が仕入れを戻した、などが考えられます。しかし、店頭価格は依然として高値圏のままであり、消費者が実際に銘柄米を購入するかどうかは今後の価格推移次第です。
日本政府は長年、農産物の価格安定策として過剰在庫となった米を備蓄し、需給が逼迫した際に放出する制度を整えてきました。2025年においても、米価格の高騰を受け、小泉進次郎農林水産大臣は2025年5月に「備蓄米約30万トンを市場に放出し、それでも価格が落ち着かない場合は外国産米の緊急輸入も検討する」と発表しました。その結果、中央卸売市場や民間業者を通じて価格の高い銘柄米の流通量を一時的に抑えていた販売供給体制が活発化し、スーパーへの納品量が注文通りに回復したのです。
政府備蓄米の放出には、以下の目的があります:
備蓄米として放出される銘柄は、主に過去の収穫米で、精米後に検査を経て倉庫に保管されていたものです。流通に回される際は、5キログラム袋でパッケージされ、通常のコメと同様にスーパーや販売店に卸されます。出荷開始直後は銘柄や産地がわかりにくい混合米を販売する例もありましたが、最近では生産年・品種が明示された袋も増えつつあります。
1993年度、東北・新潟地方を中心とした記録的な冷夏・冷害により、コメの全国的な収穫量が大幅に減少し、価格が暴騰しました。当時、政府は市場に備蓄米を放出するとともに、WTO協定に基づいた「ミニマムアクセス(MA)米」に加えて、緊急輸入枠を活用しタイ米や米国産米を大量に輸入しました。これにより、約80万トンの緊急輸入が行われ、市場価格の急騰が一時的に抑制されましたが、国産米農家の反発を招き、補償金支給の交渉が長期化した教訓が残っています。
2008年以降、原油価格・穀物価格の世界的高騰を受けて、コメを含む食料品価格が急騰しました。日本国内でも2011年の東日本大震災後、物流混乱や燃料価格の高騰により食料品価格が上昇し、米価も値上がり傾向が見られました。政府は備蓄米放出や食料安全保障対策を講じ、農家への支援と消費者への価格安定策を実施しました。このときも、一部スーパーで銘柄米の品薄が発生し、混合米や輸入米が併売される状況が一時的に見られました。
2024年夏から秋にかけて、全国的に高温や不足する降雨量による作柄不良が報告され、2024年度産米の品質低下と収量減が懸念されました。これに加えて、2025年春以降の米卸売市場では在庫不足感が強まり、小売価格にもその影響が波及しました。消費者側では「将来的にコメが手に入りにくくなるのではないか」との心理が広がり、備蓄米や輸入米への期待が高まりました。そのため、スーパーでは銘柄米の欠品が長期化し、価格も例年より高値で推移していました。
コメの流通は、生産者(農家)→農協(JA)→精米業者→卸売業者→小売店(スーパーなど)→消費者という多段階構造になっています。各段階で仕切り価格が設定され、最終的に小売価格が決まります。近年は精米の都度在庫コストがかかるため、業者は少量精米を避け、大量仕入れ・大量精米によるコスト削減を図る傾向がありますが、2024年度産の品質低下により精米業者は需要と供給のバランスを見極めながら仕入れ量を調整せざるを得ませんでした。
また、卸売業者は「売り惜しみ」によって、価格が上昇し始める段階で在庫を温存し、さらに値上がりした地点で出荷を行うことでマージンを確保してきました。このため、銘柄米がスーパーに並ぶタイミングが遅れ、消費者が実際に購入できない「品薄状態」が長引きました。政府備蓄米放出が決定されると、「備蓄米に需要が集中すれば銘柄米の売り控えが生じ、在庫が飽和する」という見通しから、卸売業者は通常どおり受注数量を満たす方向にシフトし、スーパーへの供給が安定化しました。
価格については、農家からの集荷価格、精米コスト、流通マージン、さらには消費税などが小売価格に上乗せされます。通常、銘柄米の5キロあたりの店頭価格は4000円前後が相場ですが、2025年5月時点では5000円近くまで高騰していました。しかし、卸売業者や小売店は6月分の価格設定を5月20日頃に既に決定しており、実際の値下がりは7月以降、5キロあたり200~300円程度下がる見込みとされています。
北海道や東北地方は日本の主食用米を大量に生産する地域ですが、2024年~2025年の気象不順の影響を大きく受けました。特に北海道では、夏の高温と台風の豪雨による倒伏被害が発生し、代表的な銘柄「ななつぼし」「ゆめぴりか」の品質が低下しました。このため、産地価格も上昇し、県内スーパーや地域JAを通じた直販でも品薄や価格上昇が発生しました。東京など都心部以上に銘柄米を求める動きが強まり、道内から卸売市場へ向かう流通量が減少したことも、都内の品薄を助長しました。
九州・四国の一部地域でも、2024年秋の稲刈りで収量が前年を下回った報告が相次ぎ、地元スーパーでは「ヒノヒカリ」や「ミネアサヒ」などの価格が例年より10~15%高騰しました。地産地消を重視する地域では、価格高騰にもかかわらず地元産の銘柄米を買う消費者が一定数おり、都市部とは供給・需要の構造が多少異なりました。
世界的には、ロシア・ウクライナ紛争や気候変動の影響で小麦やトウモロコシ価格が高騰し、食料安全保障のリスクが顕在化しています。アメリカでは2020年代初頭に、干ばつの影響でトウモロコシ価格が急騰し、家畜飼料コストが上昇することで肉や乳製品の価格にも波及しました。日本は米の自給率が高いものの、世界的な食料価格の上昇は輸入飼料や原材料コストにも影響を与え、最終的に米以外の食品価格にも波及する懸念があります。
さらに、タイやベトナムなどアジアの主要米輸出国では、近年「国内のコメ不足を防ぐため、輸出制限を強化する」という動きが見られます。これによって国際市場での米価格が上がると、日本国内でも輸入米を使った製品価格(加工米やアルコール向け米など)が上昇し、国内消費者の負担が増加するおそれがあります。
銘柄米がスーパーで「山積み」になったことで、消費者は一時的に「手に入る安心感」を得ています。しかし、価格がまだ高値圏のままであるため、「買いたくても家計負担が重い」という声もあり、実際の購入は慎重になる可能性があります。多くの消費者は、7月以降の値下がりを待って、購入タイミングを見計らうでしょう。
また、備蓄米と銘柄米を比較した消費者の意識も変わりつつあります。備蓄米は値段が安い一方で、「銘柄や品質が不明確」「混合米のため風味や食感が不安」という意見もあり、銘柄米をあえて選ぶ層も少なくありません。消費者が「備蓄米→銘柄米」の順に購入を切り替えることで、今後価格が落ち着いても銘柄米の需要は根強く残ると予想されます。
流通側では、7月以降の相場見通しを受けて、卸売業者やスーパーが「値下がり前にまとめ買いを行う流れ」が出る可能性があります。また、飲食店や外食チェーンは仕入れコストを抑えるため、備蓄米への切り替えを検討するケースが提示されています。このように、コメの需要構造が短期的に変化することで、外食業界や食品メーカーの価格戦略にも影響が及ぶでしょう。
さらに、政府は7月以降の値下がりを前提に、農家向けの「収入保険」や「調整金支給」などのセーフティーネット制度を継続・拡充することで、価格変動リスクを緩和する方針を示しています。これにより、今夏以降の台風シーズンや秋の台風・豪雨リスクに備えた農家支援が強化されるとみられます。
2025年6月初旬にSNSで話題となった「スーパーで銘柄米が山積み」の背景には、政府備蓄米放出決定による流通供給の安定化、卸売業者の販売抑制解除、消費者の備蓄米優先購入などの複合要因があります。過去の米価高騰時と同様に、政府は備蓄米や輸入米を活用して価格安定策を講じる一方、農家向けの収入補償制度も並行して運用しています。
他地域や海外の食料需給状況と比較すると、日本国内のコメ市場は比較的自給率が高く安定的であるものの、気候変動や国際的な価格変動リスクは無視できません。今後は、7月以降の値下がりが確実視される一方、消費者の需要構造や流通業者の仕入れ行動が短期的に変化する可能性があります。
消費者としては、銘柄米の価格動向を注視し、値下がりするタイミングを見計らいながら購入を行うことが賢明です。販売側・流通側では、需要予測を的確に行い、安定供給と適正価格の維持に努める必要があります。政府としては、価格安定策と農家支援をバランスよく実施し、食料安全保障を確保しつつ、消費者負担の軽減と農業者の収入安定を両立させることが求められます。
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