ドンキ「152円ビール」じわり人気
2025/06/28 (土曜日)
総合ニュース
ドンキ「152円ビール」じわり人気 “地味過ぎる”見た目になった深いワケ
2025年6月28日、ドン・キホーテが自社ブランド「情熱価格」で展開する350ml缶ビールが1本152円(税込み)という低価格で話題だ。SNSを中心に「コスパ最強」「安さの秘密が知りたい」と評判がじわり広がっており、店舗ではまとめ買いする客の姿が目立つようになった。
「情熱価格」は1999年にドン・キホーテのPB(プライベートブランド)としてスタート。日用雑貨から食品まで幅広い“ワンコイン以下”商品を展開し、消費者から「激安の代名詞」として支持されてきた。ビールは2023年に飲料ラインを拡充する中で導入され、当初は198円で発売。量販店のプライベートブランドや発泡酒と比肩する価格設定が注目を集めた。
2025年4月、原材料コストの見直しと物流ルートの再交渉に成功したことで、一気に152円へプライスダウン。「ドンキ流の仕入れ術」と呼ばれる大量一括調達をさらに強化し、製造元とも長期契約を締結。広告費を極限まで抑え、店頭でのPOP訴求に特化するなど、無駄なコストを徹底削減した。
パッケージはベージュと黒のシンプルな色合いに「情熱価格 BEER 350ml」の文字のみ。目立つ派手なロゴを排除し、“棚の中で埋もれる”ようなデザインは一見地味だが、逆説的に消費者の興味を引きつける狙いがある。販売戦略として「見落としやすいから手に取って確かめたくなる心理」を突いたものだ。
152円という価格は、大手スーパーPBの発泡酒(170円前後)や第三のビール(199円前後)を下回る。キリンビール「淡麗プラチナダブル」が多くのドラッグストアで170円前後、アサヒ「クリアアサヒ」が180円台後半で推移しており、「情熱価格ビール」は他社のPBをも凌駕する価格競争力を誇る。
原材料には麦芽とホップを主要成分としつつ、スタンダードなビール規格を満たす。試飲すると、すっきりとした飲み口で後味にほんのり甘みが残り、缶チューハイ感覚でごくごく飲めるバランス。炭酸ガスの注入量を控えめにし、価格帯を超えた飲みごたえを実現している。
20~40代の男性を中心に支持を拡大し、晩酌用のまとめ買いやアウトドア用としての需要が増加。女性やシニア層にも「軽い口当たりが好評」との声があり、見た目以上の汎用性が評価されている。ネット通販でも取り扱いが始まり、レビューでは「常備したい価格」「コスパ最強」の高評価が目立つ。
ディスカウントストア各社はPB飲料の強化を急ぎ、ライバルチェーンのビール価格引き下げ合戦が激化。イオンやヨークマートなどは、自社PBビールを160円台に値下げし、「ドンキに対抗」との動きが活発化している。
大手ビールメーカーは価格競争への巻き込みを警戒し、ブランドビールとPB・発泡酒の棲み分けを鮮明化する戦略を強化。プレミアムビール市場の比率拡大や価格帯を分けた商品ポートフォリオの再構築が進んでいる。
ドン・キホーテの「情熱価格ビール」152円は、徹底したコストカットと消費者心理を突く地味なパッケージ戦略で大ヒットとなりつつある。この成功は、PB飲料市場の価格競争を一気に加速させ、ディスカウントストア各社や大手ビールメーカーの戦略再編を促す契機となっている。今後は品質訴求や差別化を図るための味わい改良や限定フレーバーの投入、さらにはEC販路の強化が次のカギを握るだろう。
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