無期懲役囚「終身刑化」が顕著
2025/06/07 (土曜日)
総合ニュース
「一生ここでという覚悟は…」厳罰化で進む“無期懲役囚”の終身刑化と医療の現実 “死刑を免れた男達”は今【報道特集】
本記事では、日本の刑罰制度において死刑の次に重い刑罰である「無期懲役」について、現在約1,700人が服役中である実情と、近年の厳罰化に伴う仮釈放の減少、そして獄中での“獄死”が増加している問題を報じています。特に、死刑を免れることで無期懲役となった受刑者たちの高齢化・医療的ケア不足による獄中死が常態化しつつある現状を取材し、宮城刑務所の病棟や霊安室の様子を交えて描写しています。
無期懲役刑は、刑法上最も長期の自由剥奪刑であり、死刑と有期懲役(最長30年まで)の中間に位置します。法務省の統計によれば、全国で約1,700人が無期懲役を受けており、服役期間は最短でも25年を越えて初めて仮釈放の審査対象となります。
戦後、日本の無期懲役制度はGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の監督下で見直され、有期刑と死刑の中間として位置づけられてきました。その後、1990年代以降の刑法改正や法務大臣の厳罰化方針により、仮釈放基準が厳格化。2000年代に入ってからは特に殺人事件の増加や社会的関心を背景に、仮釈放の許可率が低下し、事実上の「終身刑化」が進行しています。
高齢化する無期懲役囚は、心疾患やがん、脳疾患による自傷行為など重篤な疾病を抱える者が多く、病棟はしばしば介護施設のような様相を呈しています。被害者に襲われた経験がない看護師が「最初は怖かった」と語るほど、長期収容による肉体的・精神的負荷は大きいものがあります。病棟と霊安室が隣接し、葬儀が職員立ち会いで簡素に行われる光景は、「いつしかこのまま一生を終える覚悟」を突きつけます。
世界各国の終身刑制度を比較すると、アメリカでは州によっては仮釈放の可能性がゼロとなる「無仮釈放終身刑(LWOP)」があり、英国やフランスでも刑期25年以降の仮釈放審査が厳格に運用されるケースが増えています。ヨーロッパ諸国では人権配慮から仮釈放機会を設ける国もありますが、重大犯罪者への社会的警戒感は強く、終身刑的運用は共通の課題です。
仮釈放の極端な減少と獄死の増加が示すように、日本の無期懲役制度は「死刑に次ぐ終身刑」として固定化しつつあります。高齢化・医療ニーズの高まり、社会復帰支援の不十分さ、審査プロセスの不透明さなど、制度的・運用的な課題は山積しています。今後は受刑者の人権保障と国民の安全確保を両立させるため、仮釈放基準や医療・福祉体制の抜本的な見直しが急務と言えるでしょう。
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