パラグライダー大会 女性溺れ死亡
2025/06/08 (日曜日)
総合ニュース
【続報】パラグライダーの大会で事故 東京から参加の62歳女性が死亡 死因は溺死 新潟・南魚沼市
2025年6月7日午後、秋晴れの空のもと、新潟県南魚沼市で開かれていたパラグライダー競技会「南魚沼グライダーカップ」の最終日、東京から参加していた62歳の女性パラグライダー愛好者が、着水ゾーン近くの湖面に墜落し、そのまま水中に沈んでいるのが発見されました。地元消防と大会スタッフが救助にあたり、すぐに病院に搬送されましたが、搬送先の救命措置の末に死亡が確認されました。死因は溺死と断定され、警察と大会主催者が事故原因の調査を進めています。
62歳の女性は東京都在住で、パラグライダー歴は15年超。定年退職後に趣味として飛行を始め、国内の大会や海外遠征にも積極的に参加していたベテランパイロットでした。事故当日も以前から当大会への参加を楽しみにしており、天候や装備点検にも余念がないと大会関係者は語っています。
大会主催者が録画していたドローン映像や他の参加者の証言によると、被害者は着水地点への最終アプローチで高度を落としすぎた様子が確認されています。着水30メートル手前で速度が落ち、翼面が大きく揺れた直後に前傾姿勢となり、そのまま急降下して水面に激突したとみられます。
このような失速(stall)は、翼の揚力が不足した状態で発生しやすく、特に着水直前の低速・低高度で起きると回復の余地がほとんどありません。加えて、川面の冷たい空気と陸上の暖気の境界で発生しやすい気流の乱れが、追い風や横風の急変をもたらし、失速を誘発した可能性があります。
パラグライダー競技では、以下の安全装備が義務付けられています。
事故現場では救命浮環を装着していたものの、機体とパイロットの衝撃で外れるか空気が抜けた可能性もあり、心肺停止状態で水中に沈んだとの報告があります。大会では消防・警察・民間救助ボートによる待機体制が敷かれていましたが、視界と水深の問題で発見に時間を要し、迅速な救助と蘇生措置が行えなかった点が重く受け止められています。
国内外でのパラグライダー事故は年に数十件報告されており、主な要因は以下の通りです。
2018年には長野県で大会中のパラグライダーが山肌に激突し、重傷者が発生。2022年には北海道で強風にあおられた機体が湖面に叩きつけられ、パイロットが意識不明の重体となりました。いずれの事故も「着水直前の無理なアプローチ」が共通の原因とされています。
今回の事故を受け、大会主催団体は以下の再発防止策を発表しました。
併せて、南魚沼市は管轄の消防署と連携し、水難救助訓練を強化。地元のレスキューボート団体やパラグライダー協会と合同で着水時の即時対応マニュアルを見直す方針です。
パラグライダーは、広大な空間を滑空しながら自然の気流を体感できるアウトドアスポーツとして、多くのファンを魅了しています。高高度から見下ろす絶景、生身で感じる風圧は他に代え難い爽快感を与えます。ただし、その分リスクも高く、パイロットは日々の訓練と装備点検を怠れません。
具体的なリスク管理としては、以下が挙げられます。
南魚沼市ではパラグライダー大会を通じてグリーン・ツーリズムやエコツーリズムを推進し、地域活性化を図ってきました。地元温泉や農産物と組み合わせたパッケージツアー、体験飛行プログラムなどが人気を博し、秋の紅葉シーズンにも多くの観光客を呼び込んでいます。
今回の事故は一時的に大会の中止・縮小を余儀なくされ、観光業者や宿泊施設に影響が及ぶことが懸念されます。行政・地元事業者は安心・安全を訴求する取り組みを強化し、リスク管理意識の向上を観光資源の維持につなげる必要があります。
今回の痛ましい事故は、ベテランパイロットであっても気流変化と低速・低高度飛行の危険性を軽視できないことを示しました。パラグライダー競技・体験飛行の振興と安全確保は表裏一体であり、装備や訓練だけでなく、運営側の危機管理体制強化が不可欠です。
南魚沼市・大会主催団体・県警・消防は連携を深め、事故調査結果を踏まえた安全対策の徹底と情報発信を行うことで、再発防止とスポーツ観光振興のバランスを模索していくことが求められます。天候任せのアウトドアスポーツだからこそ、万全の備えと冷静な判断が、参加者の命を守り、自然と共存する楽しみを未来へつなぐ鍵となるでしょう。
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