OTC類似薬見直し検討 メリデメは
2025/06/08 (日曜日)
【解説】“OTC類似薬見直し”で風邪薬や湿布が保険適用外に?膨張する医療費の削減目的が背景「健康被害広まる」と医師会は反発
「OTC類似薬」とは、市販の一般用医薬品(OTC)と同等の有効成分や効能を持ちながら、これまで健康保険の適用対象となってきた医薬品を指します。主に感冒薬、鎮痛・消炎剤(湿布薬や内服鎮痛薬)、胃腸薬、ビタミン剤などが該当し、患者が病院を受診せずとも薬局で手軽に購入できる一般薬に準じた形で、医療機関で処方されるかたちで保険給付が行われていました。
1990年代以降、医療費増大抑制と受診負担軽減の観点から、「ちょっとした風邪程度なら医療機関に行かず薬局で対応」というセルフメディケーション促進策が打ち出されました。その一環として、OTCと同成分の薬を医療用として保険適用し、患者の経済的負担を下げるとともに、医療機関の混雑緩和を狙ったものでした。
しかし、超高齢社会の到来とともに医療費は右肩上がりで増加し、2024年度には国民医療費が50兆円を超えました。政府は社会保障費全体の抑制を求められ、薬剤費もその大きな一角を占めることから、保険適用対象の見直しが急務となったのです。
厚労省が検討する案では、「OTCと同一成分・用量・効能の医療用医薬品」を保険給付対象から除外し、薬局での自費購入に一本化します。医療機関での処方は認めるものの、処方薬価も保険外診療扱いとなり全額自己負担となる見込みです。
日本医師会は「軽症者が医療機関受診を敬遠し、適切な治療が遅れる恐れがある」と反対。特に高齢者や基礎疾患を抱える患者では、自己判断での服薬切り替えが悪化を招くリスクを指摘しています。
保険外化に伴い、一般用医薬品として店頭価格で数千円の負担が発生し、所得格差による健康格差が拡大する可能性があります。セルフメディケーション支援策が機能しない地域では、必要な薬を手に入れづらくなる懸念も生じています。
欧米諸国ではOTC薬は原則保険給付対象外で、自費購入が基本です。ただし、高齢者や慢性疾患患者向けに一部補助制度を整備し、必要時には医療保険での給付を認めるなど、多層的な支援策を採っています。
見直し実施後は、低所得者向け補助の拡充、地域薬局での服薬サポート強化、オンライン服薬指導などをセットで導入し、健康被害を最小限に抑える施策が求められます。国民と医療関係者の意見を十分に踏まえた制度設計が不可欠です。
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