「オナラ1日に500回」中2で異変

「オナラ1日に500回」中2で異変

2025/06/08 (日曜日)

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総合 医療ニュース

《オナラ1日500回》中2で突然起きた異変「授業中もつねに恐怖だった」IBS(過敏性腸症候群)の女性に訪れた転機

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はじめに

中学2年生の頃から、1日に500回以上おならが出るようになり、授業中は常に「次はいつ出るのか」という恐怖に怯えていた女性がいます。医療機関を転々とした末に「過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)」と診断され、ようやく自身の症状と向き合うことができた彼女の体験をきっかけに、IBSの基礎知識や診断・治療法の歴史、最新のケア・セルフマネジメントまでを解説します。

過敏性腸症候群(IBS)とは

IBSは腸に器質的な異常が見られないにもかかわらず、腹痛や便通異常(下痢、便秘、またはその交互発生)を慢性的に繰り返す機能性消化管疾患です。日本では人口の約10~15%がIBSと推定され、若年女性に多い傾向があります。おならの増加やガス溜まり感を訴えるケースも多く、生活の質(Quality of Life)を著しく低下させます。

IBSの分類と診断基準

  • 下痢型(IBS-D):下痢を主体とするタイプ
  • 便秘型(IBS-C):便秘を主体とするタイプ
  • 混合型(IBS-M):下痢と便秘を交互に繰り返すタイプ
  • 分類不能型(IBS-U):上記カテゴリーに当てはまらないタイプ

診断にはローマ基準(Rome Criteria)が用いられ、腹痛・腹部不快感の頻度や便通状態との関連性でIBSかどうかを判定します。器質的疾患を除外するため、血液検査や画像診断、大腸内視鏡検査が行われることもあります。

IBSの病態と原因

IBSの発症メカニズムは完全には解明されていませんが、以下の要因が複合的に関与すると考えられています。

  • 腸管運動異常:腸のぜん動運動の亢進や低下による排便・ガス排出の異常
  • 腸管知覚過敏:通常は感じない程度の腸内圧やガスでも痛みを感じやすい
  • 脳‐腸相関異常:ストレスや感情の変化が腸機能に影響を与えやすい
  • 腸内フローラの乱れ:有益菌の減少や悪玉菌の増加が消化・吸収や腸管バリア機能を乱す
  • 心理・社会的要因:不安やうつ、過度の緊張など精神的ストレスが誘因となる

IBS治療の歴史的変遷

かつてIBSは「ストレス性下痢」「神経性便秘」と呼ばれ、対症療法として抗下痢薬・下剤・安定剤などが投与されてきました。しかし1990年代以降、以下のような進歩がありました。

  1. ローマ基準の確立(1990年代):世界共通の診断基準を策定し、研究が加速
  2. 腸管運動調整薬の登場(2000年代):5-HT3受容体拮抗薬(下痢型)、5-HT4受容体作動薬(便秘型)などが開発
  3. 低FODMAP食法の提唱(2005年頃):発酵性オリゴ糖・二糖類・単糖類・ポリオールを制限し、ガス・水分過剰を抑制
  4. プロバイオティクス・プレバイオティクスの導入(2010年代):腸内細菌叢を改善し、バリア機能や免疫応答を正常化する試み
  5. 心理的アプローチの重視(2010年代後半~):認知行動療法(CBT)やマインドフルネスを用い、脳‐腸相関を調整

低FODMAP食と食事療法

低FODMAP食はイギリス・モナシュ大学の研究グループが開発した食事法で、短鎖炭水化物の一部を制限します。日本でも2015年頃から導入が進み、専門クリニックや栄養指導で指導されるようになりました。具体的には以下の食品を調整します。

  • フルクトースを多く含む果物(りんご、梨など)
  • 乳糖を含む乳製品(牛乳、ヨーグルトなど)
  • オリゴ糖を含む豆類、玉ねぎ、にんにく
  • ポリオール(ソルビトール、キシリトールなど)を含む野菜や甘味料

制限期(4~6週間)と再導入期を経て、自身の許容範囲を見極めるプロセスが重要です。

心理的介入とセルフケア

IBSではストレスが症状を悪化させやすいため、認知行動療法(CBT)やマインドフルネス、リラクセーション法が有効とされています。近年はオンラインプログラムやアプリで利用できるものも登場し、コストや通院負担を軽減しながら実施可能です。

  • 呼吸法・漸進的筋弛緩法:交感神経の過剰興奮を抑制
  • 自律訓練法:安静時の身体反応を制御し、腸管過敏を緩和
  • 認知再構成:症状に対する否定的思考を修正し、不安感の軽減

患者体験から見た家族・職場のサポート

当事者は周囲に症状を理解されにくく、社会的孤立やうつ傾向を招くことも少なくありません。この女性は家族に診断を共有し、食事準備や通院同行の支援を得ることで安心感を得られたといいます。職場や学校でも、以下のようなサポートが求められます。

  • トイレへの自由な出入り許可
  • 休憩時間の確保や在宅勤務の導入
  • 同僚・教職員への症状理解促進

今後の研究と展望

IBSの治療研究は腸内フローラの個別化やゲノム解析、神経伝達物質の標的治療へと進展しています。また、消化管マイクロバイオームの定量的評価や、人工知能を用いた症状予測モデルも開発中です。将来的には「個々人の腸内環境と心理ストレスを統合したパーソナライズド・メディシン」が実現し、より効果的で再発の少ない管理が可能になると期待されます。

まとめ

中学2年生で突然始まった過敏性腸症候群の一症例から、IBSの基本概念、診断・治療の歴史的経緯、最新の食事療法・心理的介入、家族・職場でのサポート体制、そして今後の研究展望までを概観しました。おならの回数や便通異常に悩む当事者は多く、早期診断と多角的ケアが生活の質向上に不可欠です。症状に苦しむ方は専門医療機関の受診を検討し、食事・心理・ライフスタイルの改善を通じて症状の緩和を図っていただきたいと思います。

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