小泉農水相の要求 卸売業者の反応
2025/06/08 (日曜日)
「美味しいが“卸の使命”」小泉大臣の要求に卸売業者が悲鳴 「最後の切り札」緊急輸入で市場の“けん制”も【サンデーモーニング】
2025年6月15日放送のテレビ朝日系『サンデーモーニング』で、農林水産大臣・小泉進次郎氏が「美味しいものを消費者に届けるのが卸売業者の使命だ」と発言したことを受け、全国の青果卸売業者から悲鳴が上がっている。農家からの仕入れ価格が高騰する中、卸は自らの利益を削ってでも小売店への価格転嫁を抑え、消費者価格を据え置くべきだという大臣の要求に、「もう限界だ」「破綻する」といった声が相次いだ。さらに大臣は「最後の切り札」として必要に応じた緊急輸入を示唆し、市場をけん制する姿勢を見せた。
小泉大臣は高齢化・人手不足・燃料高騰などで農産物の国内供給価格が上がっている現状に言及しつつ、「卸売業者には自らがうまみをとるばかりでなく、消費者の立場に立って美味しさを届ける社会的使命がある」と強調。卸から小売への価格転嫁を最小限に抑え、消費者の買い物負担を軽減すべきだと呼びかけた。
国内の野菜・果物流通は、①生産者(農家)②卸売業者(中央卸市場・地方卸)③小売業者(スーパー・青果店)④消費者──という階層構造をもつ。卸は農家から商品を買い取り、小口に分けて小売店へ供給する「流通のハブ」的存在だ。品質管理や鮮度維持、物流効率化を支える重要な役割を果たす一方、価格決定への自由度は小売に比べて低く、値上げの際は両者のあいだで板挟みとなる。
小泉大臣は発言の中で「必要に応じ、安価な輸入品を緊急に市場に放出し、国内価格の抑制を図る」と示唆。過去にも台風被害や需給ひっ迫時に中国・東南アジア産のレタスやトマトを緊急輸入し、価格高騰を一時的に緩和した事例がある。卸売側からは「安い輸入品を持ち込まれたら、自社在庫が売れなくなる」「国内産の付加価値訴求まで危うい」との反発が強い。
これらの事例から、輸入は短期的な価格抑制には有効だが、国内農家の生産意欲低下や産地ブランドの毀損、卸売業者の物流計画混乱などの副作用を生むことが指摘されている。
消費税や物価高が国民生活を直撃する中、与党としては「生活応援」策をアピールしたい時期。参院選(2025年7月)を控え、大臣発言は「物価高対策に取り組んでいる」姿勢を示す狙いがある。卸売業軽視との批判を浴びるリスクを承知の上で、大胆な市場介入をちらつかせることで、選挙向けの話題づくりにもつなげようという思惑が透ける。
卸売業者は「中間搾取」と揶揄されやすい立場にあるが、物流・検品・貯蔵などを担う人手とコストは決して軽視できない。農家側からは「卸がもう少し利益を削ってでも固定価格で買い上げてほしい」との声もあり、両者の間で価格配分や役割分担の見直しが求められている。
小泉大臣の「美味しいが卸の使命」という一言は、市場のしわ寄せを卸売業者にを押し付けるものとして受け止められている。緊急輸入という“最後の切り札”も、短期的な市場けん制にはなるものの、流通構造の根本的な課題解決にはつながらない可能性が高い。卸売・小売・生産者・行政が一体となって持続可能な流通モデルを再構築し、消費者・産地・業界の三方良しを実現することが、今こそ求められている。
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