諦めた私立進学 無償化に冷めた目
2025/07/05 (土曜日)
総合ニュース
高校無償化で「金持ちは金持ちのまま」私立進学を諦めた親子の嘆き 制度からこぼれ落ちる地方世帯
高校無償化で「金持ちは金持ちのまま」 地方世帯に広がるミスマッチと制度の課題
この記事は毎日新聞が報じた「高校無償化で『金持ちは金持ちのまま』私立進学を諦めた親子の嘆き 制度からこぼれ落ちる地方世帯」(Yahoo!ニュース/毎日新聞)をもとに、制度の背景や歴史、地方世帯の実態、類似事例、今後の展望をまとめました
日本における高等学校授業料無償化の動きは、2009年の政権交代を契機に始まりました。民主党政権は2010年4月から公立高の授業料を無償化し、就学支援金制度を創設。2012年には所得制限が厳格化され一時後退したものの、2017年に再び所得要件を緩和。さらに2020年4月から私立高校生への支援範囲が拡大され、公立・私立を問わず低・中所得世帯の授業料が実質無償となりました。
「高等学校等就学支援金制度」では、公立高校の授業料相当額(年間11万8,800円)を支給。私立高校については世帯年収に応じて2段階の支給枠があり、年収約590万円未満では年間39万6,000円、590万円以上910万円未満では年間11万8,800円が上限となります。910万円以上の世帯は支給対象外ですが、2025年度からは全世帯を対象に基準額相当の11万8,800円を支給する先行措置が決まりました。
秋田県北部に暮らす高校1年生の田中広太さん(仮名・15)は、中学時代から私立の陸上強豪校への進学を夢見ていました。しかし世帯年収は支援金上限の910万円に近く、私立授業料約100万円から支給上限39万6,000円を差し引いても60万円以上の負担が必要。「私立無償化で将来の選択肢が広がったとは思えない」と広太さんは語ります。母親も「地方では通学の交通費や寮費がかさみ、公立進学を諦めざるを得なかった」と嘆きました。
東京都は2025年度から国の所得制限を撤廃し、すべての私立高校生に年間11万8,800円を支給する独自措置を実施。大阪府は対象校を指定する代わりに支給上限を63万円に引き上げるなど、地方自治体によって支援の手厚さに差があります。一方、秋田県をはじめ多くの地方自治体では国の制度のみを適用し、追加支援がほぼないため、世帯年収が制度の狭間で落ち込む「ミドル世帯」が制度の恩恵からこぼれ落ちやすい構図です。
現行制度は所得上位世帯を排除し、低所得層に重点支援を行う設計ですが、地方ほど私立進学の選択肢が限られるため、所得中位層が最も苦しむ「クレジットボトルネック」が生じています。また、無償化予算の約7割が人口集中地域に投下されるという試算もあり、地方世帯にとっては実効的な支援実感が乏しいのが現状です。
これらの施策により、都市部・地方の格差を是正し、すべての高校生が経済事情にかかわらず平等に進路選択できる環境整備が急務です。
高校無償化制度は公立・私立を問わず授業料負担を大幅に軽減し、教育機会の均等化を目指す制度ですが、実態としては「金持ちは金持ちのまま」、中位世帯は支援の狭間で苦しみ、地方世帯ほど進学の選択肢が制限されるというミスマッチが生じています。秋田県の田中広太さんのように、夢を叶えるための私立進学が家計の壁に阻まれるケースは全国各地で散見され、既存の所得要件や支給枠設定だけでは解決が困難です。
今後は所得制限の撤廃や支給額引き上げに加え、地方自治体による通学費・寮費補助などを法制化し、教育における都市部・地方間の格差を是正することが求められます。さらに、制度を利用しやすくするための手続きのオンライン化や、学校間連携による多様な学びの場の提供など、包括的な政策パッケージが必要です。これにより、高校無償化の理念である「意志ある高校生すべてへの学びの保障」が現実となり、すべての子どもが安心して進路を選択できる社会を実現できるでしょう。
高校無償化拡大:2025年2月の与党3党合意と政治的展開
2025年2月5日、自民党と公明党は「年収制限撤廃」「年間11万8,800円一律支給」を柱とする高校無償化拡大案を日本維新の会に正式提示し、与党3党(自民・公明・維新)の協力で法制化を進めることを決定しました。
2025年2月5日の与党3党合意により、高校無償化は所得制限撤廃と一律支給へと大きく前進しました。しかし、国民民主党を排した手続きや、私立高校追加支援・地方支援策の未整備など、今後解決すべき課題も残ります。教育機会の真の均等化を実現するには、補完的施策と制度運用のブラッシュアップが不可欠です。
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