「自己満足」不正改造車の危険性
2025/06/09 (月曜日)
柳原三佳ノンフィクション作家・ジャーナリスト6/9(月) 11:44国土交通省のサイトより 車は「道路運送車両法」によって、安全の確保や環境保全上の技術基準が定められており、この「保安基準」に適合していなければ公道を走行することはできない。しかし、実際にはこの基準に違反した車両による重大事故が相次いでいる。
6月は『不正改造車を排除する運動』の強化月間だ。不正改造車による重大事故を食い止めるた
2025年6月は「不正改造車を排除する運動」の強化月間とされ、国土交通省は公道を走る車両に対して「道路運送車両法」が定める保安基準の順守を呼びかけています。保安基準は、車両の構造や装置が安全確保および環境保全の観点から適切であることを義務付ける技術要件ですが、近年これに違反した車両による重大事故が相次いでいることが問題視されています。
道路運送車両法の保安基準は、灯火装置、ブレーキ性能、排気ガスや騒音規制など多岐にわたります。例えば、ヘッドライトの光軸調整が不適切なままだと夜間走行で対向車や歩行者の視認を妨げ、重大事故につながりかねません。また、マフラーを加工して騒音や排ガスを規制値以上に改造している車両は、環境基準を逸脱するとともにエンジン破損や燃料漏れの危険もあります。
不正改造の背景には、チューニング文化の一端としての改造需要や、同調圧力によって過激な仕様が競い合われる側面があります。しかし、改造に伴う技術的知識不足や適合検査を受けないままパーツを流用するケースが多く、安全性や環境への配慮が後回しにされがちです。また、中古部品の非正規流通やネットオークションの普及によって、違法部品の入手が容易になっていることも要因の一つです。
国産車の改造文化は1970年代から広がりましたが、1990年代に入り排ガス規制や騒音規制が厳格化。2000年代には車検制度の見直しや検査項目の追加が続き、法定点検の強化が図られました。さらに2010年代以降は後付け改造部品に対して型式認定の取得を義務づけるなど、違反を抑止する仕組みが整えられてきました。
現在、不正改造車の検挙は警察の交通取締りだけでなく、陸運支局による車検時の検査でも行われます。6月は全国の陸運支局や警察署が合同で取り締まりを強化し、違反車両は即時車検不合格や使用停止命令を受けるほか、刑事罰の対象にもなります。最近では夜間の路上監視やドライブレコーダー映像を活用した証拠収集も進んでいます。
過去5年間で報告された不正改造車による重大事故には、急ブレーキ時にブレーキバランスを崩した追突事故や、サスペンション改造が原因の横転事故、排気系の加工ミスによる火災などがあります。被害者には歩行者や同乗者も含まれ、人的被害は数十名に上っています。
全国各地では地域住民や自動車整備業界、警察、陸運支局が連携し、不正改造の撲滅に向けた啓発イベントや無料点検会を実施。自治体ごとに「改造車相談窓口」を設置し、市民からの通報を受け付けています。また、若年層向けにSNSを活用した安全啓発動画の配信も行われています。
不正改造の根絶には、技術基準を順守させる取り締まりの強化だけでなく、改造文化を健全化するための教育・啓発が不可欠です。自動車整備士の国家資格保持者による安全改造支援制度の整備や、改造部品の合法性をオンラインで確認できるプラットフォーム構築など、業界を含めた取り組みが求められています。
「不正改造車を排除する運動」は、安全確保と環境保全を両立させる社会的責務です。6月の強化月間を契機に、自らの車両が保安基準を満たしているか今一度点検し、健全なカーライフを実現するための意識改革が求められます。
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