不発弾作業中爆発 自衛隊4人けが
2025/06/09 (月曜日)
総合ニュース
読谷村にある不発弾保管庫で爆発があり自衛隊員4人がけが 不発弾のサビを落とす再識別作業中に爆発
2025年6月9日、沖縄県読谷村の旧日本軍不発弾保管庫で再識別作業中に爆発が発生し、自衛隊員4名が負傷しました。本稿では事故の経緯を詳述するとともに、沖縄に残る戦跡・不発弾問題の歴史的背景、爆発物処理(EOD)作業の技術・リスク、国内外の同種事故比較、地域社会への影響、安全対策の現状と課題、今後の展望について解説します。
当日、陸上自衛隊沖縄派遣団は読谷村内の旧日本軍不発弾保管庫で、木箱に保管された複数の砲弾の錆落としを兼ねた再識別作業を実施中でした。腐食で判別困難となった番号や刻印を読み取るため、グラインダーやワイヤーブラシで錆を除去していたところ、金属疲労部分が破断して爆発。現場には300メートル四方に飛散片が散乱し、隊員4名がやけどや衝撃による打撲を負い、うち2名が重傷で病院搬送されました。
沖縄は太平洋戦争末期の激戦地であり、米軍上陸前から日本軍の激しい砲撃戦が行われ、多数の砲弾や手榴弾が散布されました。終戦後も不発弾撤去は進められましたが、山間部や旧軍施設跡などには今なお約13万発の不発弾が埋没しているとされます。1960年代には民間作業員による除去が実施されたものの、安全対策の不備から多くの犠牲が出た歴史があります。
再識別作業は、不発弾の口径や製造年、薬莢内薬量などを正確に把握するために行われます。まず外部の腐食状況を観察し、破裂性や信管残存の有無を確認。次に非破壊検査(X線透視)や金属探知機で内部構造を推定し、最終的に信管を取り外して仮薬室を分離します。その後、弾頭部の錆を丁寧に除去して刻印を露出させ、識別番号を記録します。
EOD技術は高度な専門知識と精密な作業を要しますが、腐食や内部圧力、長期埋没による金属疲労、化学反応生成物など、不確定要素が多く、爆発リスクは常に残ります。特に信管周辺の腐食部は微小な振動で感度が高まるため、グラインダーの振動や刷毛の摩擦で破裂に至る危険があります。
日本国内では1995年に山口県で民間除去業者が不発弾処理中に爆発し、作業員が死亡した事故が記録されています。国外ではドイツやベトナムなど戦跡地域で、戦後70年以上経過した爆弾が突然爆発し被害が出る事例が相次いでおり、長期埋没弾の危険性が国際的にも指摘されています。
読谷村では今回の爆発を受け、住民に避難勧告が出され、周辺の学校や病院が一時閉鎖。観光業への影響も懸念され、地元経済に打撃を与える可能性があります。過去に沖縄全域で発生した不発弾事故は、慶良間諸島や宮古島でも住民生活を脅かし、戦跡観光と安全のバランスが課題となっています。
日本では道路運送車両法同様、爆発物処理は「自衛隊法」や「安全保障関連法」に基づき、自衛隊か所轄の公安委員会許可を得た除去業者のみが実施可能です。自衛隊派遣団には陸上自衛隊の第9師団や化学防護隊がEOD部隊を編成し、全国の地方自治体からの要請に応じて支援しています。
沖縄県は不発弾情報の共有化を図るため、デジタルマップによる埋没箇所の可視化プロジェクトを推進。また、民間事業者向けのEOD技術研修を自衛隊と共同で開催し、ノウハウ伝承と緊急時対応力の強化を図っています。しかし、予算や人手不足、地形的障壁などで作業は遅れがちであり、さらなる体制強化が求められています。
不発弾問題の解決には、自衛隊EOD能力の向上だけでなく、研究機関と連携したロボット除去技術や遠隔操作装置の導入、埋没場所の無人探査ドローンによる事前調査、住民向け防災訓練の定期化が重要です。さらに、戦跡保全と安全確保を両立させるため、観光資源としての戦跡ツーリズムと連動した防護システム構築も検討されるべきでしょう。
読谷村での不発弾再識別作業中の爆発事故は、沖縄に残る戦後遺産の危険性と、それを除去する技術の限界を浮き彫りにしました。自衛隊と自治体、研究機関が協力し、最新技術と地域社会参加型の防災対策を推進することで、今後も継続的に不発弾を安全に処理し、沖縄の平和と公衆安全を守る取り組みが求められます。
コメント:0 件
まだコメントはありません。