子11人の家族 物価高もにぎやかに
2025/06/10 (火曜日)
「孫ら30人に囲まれるのが夢」 11人の子と夫婦、物価高もにぎやかに
「孫ら30人に囲まれるのが夢」と語るのは、長年にわたり11人の子を育て上げた福岡在住の伊藤ご夫妻(76歳と73歳)。物価高が続く今でも、子どもたちと孫たちが集うにぎやかな生活は変わりません。超高齢化・少子化社会と言われる日本で、一家総勢40人近い大家族が織りなす家庭のあり方は、現代社会に一石を投じる存在です。ここでは、彼らの歩みを振り返るとともに、日本の多子家庭を取り巻く環境、国の政策、地域コミュニティとの連携、持続可能な子育て支援のあり方について詳しく解説します。
伊藤夫妻は1970年代に結婚後、3年ごとに子どもを授かり、1988年には11人目の長女が誕生しました。共働きではなく、妻は専業主婦として家事・育児を一手に担い、夫は地元の金属工場で製造ラインを守りながら一家の生計を支えました。核家族化が進む一方で、両親の実家が近かったこともあり、親族の協力を得ながら子育てを続け、全員が元気に成人を迎えました。
高度経済成長期には昭和の大家族が珍しくありませんでしたが、バブル崩壊以降の経済停滞と都市化により、4人兄弟姉妹でも「多い」と言われる時代に。2005年以降、合計特殊出生率は1.3を下回る水準が常態化し、子育て世帯への負担増や待機児童問題の深刻化が顕著です。多子家庭には、教育費や住宅費の捻出、育児負担の分散、人手不足による孤立感などの課題が山積しています。
政府は2015年に「子ども・子育て支援新制度」を導入し、保育所整備や地域型保育、幼児教育無償化などを拡充しました。また、地方自治体では多子世帯に対する児童手当の上乗せや医療費助成、住宅優遇策を実施しています。しかし、支援は地域や所得によりばらつきがあり、多子家庭の負担軽減にはなお不十分との声が根強いのが現状です。
伊藤ご夫妻は、子どもが多いことで自治体の「多子世帯優遇制度」をフル活用。医療費無料化、学校給食費減免、図書館の学習スペース優先利用、スポーツ少年団や学童保育の利用料減免など、さまざまな支援を受けながら家計を助けてもらいました。また、地元の小規模農家からは野菜の無償提供、町内会やPTAには駐車場当番や行事運営の協力を依頼し、地域との信頼関係を築くことで、精神面でも支え合う環境をつくりました。
11人の子どもたちは、全員公立小中学校を経て高等学校へ進学。うち4人は大学へ、2人は短大・専門学校へ進み、残りは就職や公務員試験に合格して地元企業に就職しました。学費負担は累計1億円超でしたが、兄姉が奨学金を利用し、下の子の学費を支える「家族奨学金リレー」を実現。返済は地域金融機関での低利プランを活用し、世代間支援のモデルを示しました。
近年の原材料高・光熱費高騰の影響は大きく、食費は月平均80万円、光熱費は4万円超を占めます。伊藤家では、
「孫ら30人に囲まれるのが夢」と語る伊藤夫妻。すでに7人の孫が誕生し、残りの子どもからも順次誕生予定です。夫妻は長寿社会におけるシニア世代の役割として、子育て支援の相談窓口を開設する計画を地域NPOと協議中。また、農業体験や防災訓練を兼ねた「大家族キャンプ村」構想を提案し、地域活性化に意欲を燃やしています。
日本では10人以上の子を育てる家庭は極めて稀ですが、沖縄県や離島部には大規模大家族が伝統的に存在します。中国四千年の大家族文化や東欧の農村共同体と比較すると、日本の多子家庭は「個」単位で子育て支援を探る必要があり、政策的支援や地域丸ごとの受け止め体制がより重要と言えます。
11人の子と孫を育む伊藤ご夫妻の物語は、超高齢少子化の日本で家族の絆と地域共助の価値を教えてくれます。多子家庭が直面する教育費・物価高・介護負担などの課題に対し、行政や地域コミュニティが連携し、制度と文化の両面から支援を強化することが求められます。孫30人の夢が叶う日を目指し、大家族モデルが次世代の子育て支援のヒントとなることでしょう。
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