米中 貿易問題巡り枠組み合意
2025/06/11 (水曜日)
総合ニュース
【速報】アメリカと中国が貿易問題めぐり枠組み合意 20時間近い閣僚級協議の末に
2025年6月10日、ロンドンで20時間近くに及んだ閣僚級協議の末、アメリカ政府と中国政府は相互の輸出規制緩和と関税引き下げを柱とする貿易問題の枠組み合意を成立させた。米商務長官ハワード・ラトニックは「中国側のレアアース輸出制限を緩和し、米国は一部の輸出規制を解除する交換協定を含む」と発表。中国商務次官の李成剛氏も同意を表明し、両国首脳への正式承認を経て詳細を詰める段階に移行する見通しだ。
2018年から2024年にかけて、米国は中国製品に最大34%の追加関税を断続的に課し、中国も報復措置として同等規模の関税や非関税障壁で応じた。特に2025年4月には米国が希土類元素や高性能磁石への輸出規制を強化し、中国は鉄鋼・アルミニウムなど米国製品への制裁を厳格化。両国の対立はハイテク製造業やサプライチェーンに深刻な混乱をもたらしていた。
交渉は英政府後援のもと、6月9日深夜に開始され、両国から通商担当大臣や財務省、商務省の高官らが参加。テクノロジー覇権争いに焦点を当てる一方、米中双方の国内産業保護と安全保障のバランス調整が難航した。特に「戦略物資」と位置づけられるレアアースの即時緩和と、米国側が求める技術輸出管理の見直しが最終合意直前まで折り合わなかったとされる。
今年5月にスイス・ジュネーブで両首脳が合意した90日停戦的協定を土台とし、今回の枠組みは輸出規制の具体化と関税戦線の後退を盛り込んだ第2弾と位置づけられる。ジュネーブ合意では主要関税の一時凍結が確認されたが、実効性を欠くとの批判が強かった。ロンドン協議ではより実務的な手続きと執行機関の設置が盛り込まれた点で一歩前進と言える。
米日貿易摩擦の激化を受け、1995年に合意した半導体協定では、日本側の半導体輸出拡大と市場開放を定めたものの、米国市場シェアの回復にはつながらなかった。今回はメカニズムの継続的運用を明文化したことで、90年代協定の反省を取り入れ、協定破棄リスクを低減した点が特徴的だ。
交渉終了直後、米ドルは対主要通貨で小幅上昇、東京・香港の株式市場も買い戻し機運が高まった。ただし詳細不明の警戒感から反発は限定的で、建設機械や電気自動車関連の株価だけがやや大きく上昇。債券市場では米長期金利が0.05%程度低下し、投資家は慎重なスタンスを維持している。
合意文書の正式署名後、各国議会での承認手続きや安全保障審査が待ち受ける。特に米国では上下両院で輸出管理法改定の承認が必要で、共和・民主双方から安全保障上の懸念が提出される可能性がある。中国側では全国人民代表大会常務委員会の批准手続きが控え、国内産業界からの反発にも配慮が求められる。実務運用を巡る細部調整が成否を決めるだろう。
20時間に及ぶロンドン閣僚級協議での枠組み合意は、米中貿易摩擦の緊張緩和に向けた大きな一歩だ。しかし、その実効性は最終批准手続きとメカニズム運用の透明性、そして両国の政治リスク管理次第で左右される。世界最大の二大経済圏による合意は、グローバル・サプライチェーンと地政学リスクの安定化に貢献する可能性を秘めているが、早期の具体的実行が最重要課題となる。
コメント:0 件
まだコメントはありません。