「独身税」と批判 表現は適当か
2025/06/11 (水曜日)
SNSで“独身税”という言葉が取り上げられ、政府の子育て支援策をめぐって反発も起きています。「独身層には恩恵がない」という声に対し、三原じゅん子大臣は否定しました。夏の参院選が迫る中、インパクトの強
近年、少子化対策として政府が打ち出してきた各種子育て支援策に対し、未婚・子なしの独身層から「恩恵がない」という不満がSNSを中心に高まり、特に「独身税」という言葉がトレンド入りしました。これは、独身者に追い打ちをかけるような課税制度が導入されるかのような印象を与え、ネット上で賛否両論が巻き起こった結果です。
こうした動きに対し、三原じゅん子子ども政策担当大臣は会見で「独身税のような制度は検討していない」と明言。現在の支援策は、あくまで子育て世帯向けの手当や給付金、住宅・保育の補助を充実させるもので、独身層への新たな課税を行う意図は全くないと否定しました。
政府は近年、以下のような支援策を展開しています。
これらはすべて、子育て世帯の家計負担を軽減し、出生率回復を図ることを目的としています。
独身層からは「自分たちも高い税負担をしているのに、給付は子育て世帯だけ」という不満が上がります。特に社会人1~2年目の若年単身者や、子どもを持たないことを選択した層からは「税負担の公平性を欠くのでは」という声が強まり、与党支持層の一部にも微妙な影響が広がっています。
戦後日本では1960年代以降、児童手当や保育所補助が段階的に導入され、1990年代には児童手当の拡充が図られました。2000年代以降は少子化が深刻化する中で支援策が次々と強化され、2015年からの「全世帯無償化」から2021年の「子育て無償化」へと移行。税制面でも扶養控除や住宅ローン控除が子育て世帯に優遇されてきました。一方、独身・高齢者は所得税や住民税の控除対象が限定的であり、税の優遇自体が子育て世帯寄りである歴史的経緯があります。
欧州諸国では、フランスや北欧が出生率向上に成功した背景に、子ども一人当たりの現金給付、保育費無償、育児休業給付の充実といった包括的支援があります。一方で独身層には低額の社会奉仕税や独身者向けの支援策はほとんどなく、同じ課題が起きています。つまり「子育て重視の税制」は世界的な傾向であり、日本独自のものではありません。
支援策の恩恵を受ける子育て世帯は消費意欲が高まり、内需活性化につながる半面、独身層の購買力や将来への不安を抱えた消費低迷も指摘されます。消費者物価指数や住宅市場動向を見ると、若年単身者の賃金上昇が限定的なため、住宅購入や消費支出が抑制される傾向があります。政府はこの点を踏まえ、雇用の安定や賃上げ促進、独身世帯向けの住宅支援策などを併せて検討する必要があります。
夏の参院選を前に、「独身税」論議は与野党ともに選挙戦略上のリスク要因となり得ます。野党は「独身層の負担増を許さない」と攻勢を強め、与党は「誤解を払拭しつつ、支援策の効果を示す」対応が求められます。中長期的には以下の政策提言が考えられます。
「独身税」論議は、子育て支援策のみに偏った税制・支援構造の課題を浮き彫りにしました。政府は子育て世帯を支える一方で、独身層や高齢単身世帯への配慮をどのように組み込むかが、今後の政策評価と社会の安定につながる重要な視点となるでしょう。
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