首相 消費減税は「賛同しかねる」
2025/06/11 (水曜日)
総合ニュース
物価下げる必要あるが、消費税減税は「賛同しかねる」=石破首相
2025年6月11日、石破茂首相は党首討論で「物価を下げる必要はあるが、消費税減税には賛同しかねる」と明言しました(出典:ロイター)。立憲民主党が参院選公約に掲げる「食料品の消費税8%→0%」案に対し、社会保障の安定財源を担う消費税を安易に減税すべきではないとの立場を示したものです。
首相は「足元の物価高は極めて深刻だ」と述べ、エネルギー価格や農産物価格の上昇が家計を直撃していることを認識していると表明しました。実際、2024年後半からの円安や原油高により、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は前年同月比で3%を超え、食料品や電気・ガス料金は5%前後の上昇が続いています。
しかし首相は、直近のガソリン料金や卸売電気料金の補助金導入、備蓄米の市場放出など、既存政策で一定の下落が見られるデータを示し、減税以外の対策効果を強調しました(出典:Newsweek日本版)。
消費税は社会保障財源として位置づけられ、年金や医療、介護保険制度の維持に充当されています。2022年度には消費税収が約20兆円を突破し、国の基礎的財政収支(PB)改善に一定の寄与を果たしました。減税を行えば即時に財源が減少し、社会保障給付の見直しや他の増税策が必要となる可能性があります。
また、システム改修コストも無視できません。国税庁の説明によると、消費税率変更に伴うレジ・請求システムの再プログラミングや自治体の申告書様式変更だけで、半年以上の期間と数百億円の予算が必要とされます。これを短期間で実施するのは現状困難というのが首相の主張です。
野田佳彦立憲民主党代表は「食料品の生活必需品への税率ゼロは緊急措置として不可欠」と主張。特に子育て世帯や高齢者の消費冷え込みを防ぎ、内需下支えにつながるとの論拠を示しています。一方、自民党内には財政規律派が根強く存在し、減税には慎重路線を求める意見もあります。
政府・与党は「税収上振れ分を一時的に活用した給付策」を検討中ですが、野党は「一律給付ではなく恒久的減税を」と主張しており、参院選での大きな争点となる見込みです。
日本は急速な高齢化社会を迎えており、2050年には高齢者が人口の約40%を占めると試算されています。社会保障給付費は毎年約12兆円ずつ増加しており、基礎的財政収支の赤字が拡大する中で、減税による再度の財源不足は制度維持を困難にします。
首相は「制度改革と給付効率化を進めつつ、財源確保の道筋を示すことが責務」と強調しました。消費税減税以外の所得再分配策や給付見直し、医療・介護の現場改革を総合的に進める必要があるとの立場です。
欧州諸国では、付加価値税(VAT)減税に伴う財政悪化を避けるため、特定の生活必需品への軽減税率適用を採用する国が増えています。フランスやドイツでは食料品や医薬品、公共交通に限り5~7%に軽減。一方、イギリスは2022年に国民保健サービス(NHS)財源不足解消のためVATを20%に戻しました。こうした「減税・復税の試行錯誤」から、日本も重点的軽減税率の導入を検討する余地があります。
消費税減税以外には以下の代替策が挙げられます:
これらを組み合わせる「給付と賃金と制度のセット改革」が、持続可能な物価抑制策として政府内で議論されています。
石破首相が「消費税減税に賛同しかねる」と明言したのは、財政規律と社会保障維持の観点から当然の判断です。一方で、物価高騰に苦しむ国民の声も強く、焦点は「いかに効果的・迅速に物価対策を実行しながら、財政を健全に保つか」という難問にあります。参院選を控え、与野党は国民生活と財政健全化のバランスをどう図るのか、具体策とロードマップの提示が求められます。
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