南海トラフ被害1466兆円 学会推計

南海トラフ被害1466兆円 学会推計

2025/06/11 (水曜日)

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南海トラフ地震で日本経済に1460兆円超の被害か 国の被害想定の5倍上回る 首都直下地震では約1100兆円と試算 土木学会

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南海トラフ地震の経済被害試算概要

土木学会が2025年6月11日に発表した報告書によると、30年以内の発生確率が約80%とされる南海トラフ巨大地震による日本経済への累積被害額は約1,460兆円に達すると試算されました。これは政府が従来示している直接被害想定(約290兆円前後)の5倍を上回る規模で、津波被害やインフラ寸断による間接的経済損失を含めた結果です(出典:TBS NEWS DIG)

政府の従来想定とのギャップ

政府の内閣府や防災科学技術研究所が示す南海トラフ地震の被害想定は、直接被害(建物・道路・港湾などの物的被害)を中心に約150兆~300兆円、避難・復旧コストを含めても500兆円程度とされてきました。土木学会の試算では、この「直接+間接」をより詳細にモデル化し、ライフライン停止による生産活動の停滞コストやサプライチェーン断絶による波及損失、住宅市場・観光需要の長期低迷などを含めたことで、5倍規模の1460兆円超となりました(出典:TBS NEWS DIG)

首都直下地震との比較試算

同報告書では、首都直下地震(M7.3程度)の場合の経済被害も約1,100兆円と試算しています。政府の従来被害想定では約95兆円の直接被害、間接損失を加えても300兆円程度だったため、こちらも従来見積もりを大幅に上回る結果です。首都圏の高密度な経済活動が停止することの影響を重視したモデル化が背景にあります。

試算モデルの主な構成要素

  • 直接被害:建築物・道路・鉄道・港湾・空港設備の復旧・再建費用
  • ライフライン停止損失:電力・ガス・上下水道・通信ネットワークの停止による企業・家庭の影響
  • サプライチェーン波及損失:製造業・物流業の停止が国内外の取引に与える損失
  • 観光・サービス需要減少:避難・風評被害による都市消費・観光業の落ち込み
  • 金融市場の動揺:株価・為替の急変動や信用リスク上昇に伴う経済活動への波及
  • 復興財源調達コスト:巨額の復興債発行による国債利払い負担の増加

過去の事例との比較

1995年の阪神・淡路大震災では直接被害額が約10兆円、間接被害を含めても20兆円前後でした。2011年東日本大震災では直接被害が約16兆円、間接・ライフライン被害を含めて約25兆円と言われ、復興費用は計約30兆円に上りました。これらと比べ、南海トラフ地震の損失規模は阪神・東日本の各10倍以上に相当し、日本経済全体への影響の甚大さを示します。

経済的影響の長期化要因

南海トラフ地震は全国の太平洋側沿岸域を広範囲に襲う「連動型」地震であり、津波による甚大被害が想定されます。特に漁業・水産業基地や製造業の重工業拠点が集中する地域が直撃されるため、復旧までの期間が長期化しやすく、社会資本の再構築に10年単位の時間を要する可能性があります。さらに、海外からの原材料輸入や製品輸出が停滞すれば、グローバル経済への波及効果も無視できません。

被害想定の不確実性と留意点

土木学会の試算は各種モデル仮定に基づくもので、実際の被害額は地震発生のメカニズム、津波高さ、経済環境、社会インフラの耐震化状況、政府・自治体の初動対応力など多くの要因で変動します。報告書でも「数値は概算であり、一定の不確実性を含む」と注記されていますが、それでも政府想定の5倍という桁違いの規模は、防災・減災対策の抜本的強化が急務であることを強く示唆しています。

防災・減災対策の現状と課題

政府は2013年以降、津波堤防や避難タワー整備、非常持ち出し袋の普及啓発などを進めてきました。しかし、「想定最大級」の南海トラフ地震に対応するにはさらなる耐震補強、避難計画の見直し、早期警報システムの高度化、住民参加型の訓練実施などが必要です。また、企業や産業界ではBCP(事業継続計画)の策定・訓練が不十分な中小企業が多く、サプライチェーン全体でのレジリエンス(回復力)強化が課題となります。

予算配分と財源確保の論点

1460兆円規模の被害に備えるには、国・自治体の防災予算を大幅に拡充し、国債発行や防災特別会計の創設が必要となるでしょう。一方で、税収確保や負担の公平性にも議論が及びます。防災対策への投資が減災効果を上回ることを示すため、費用対効果分析に基づく重点的な予算配分が求められます。

国際的な比較:大地震対策の先進事例

米国カリフォルニア州では、サンアンドレアス断層帯に備え大規模耐震補強や緊急警報システム「ShakeAlert」を導入。ニュージーランドは地震保険加入率が高く、ライフラインの耐震化に優れた予算配分を行っています。日本もこれらの事例を参考に、先進技術の活用や保険市場の構築で被害軽減を図る取り組みが期待されます。

まとめ:日本経済の持続可能性へ向けて

土木学会の試算が示す約1,460兆円という衝撃的な数字は、単なる警告にとどまらず、政策転換の契機となるべきです。政府、自治体、企業、地域住民が一体となり、防災・減災投資を加速し、インフラや社会システムのレジリエンスを強化することで、大規模地震による経済的・人的被害を最小限に抑え、日本経済の持続可能性を確保する必要があります。

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