全国民に2万円 与党の給付案判明
2025/06/11 (水曜日)
全国民に2万円、住民税非課税世帯に2万円上乗せ 与党の給付案判明
2025年6月11日、自民・公明両党が参院選に向けた物価高対策として、全国民に一律2万円を給付し、さらに住民税非課税世帯には追加で2万円を上乗せする現金給付案を固めたことが明らかになりました。所得制限は設けず、年内の実施を目指すという国内最大規模の緊急経済対策です。本稿では、この与党案の詳細とその背景、過去の給付政策との比較、財政への影響、他国の類似事例、国民生活への効果と課題などを総合的に解説します。
関係者の話によると、給付金は以下の要件で設計されます。
・対象:全国民(約1億2,334万人)
・給付額:一律2万円
・上乗せ対象:住民税非課税世帯(約1,290万世帯)にさらに2万円
・総額:一律給付分で約2兆4,668億円、非課税世帯分で約2,581億円、合計約2兆7,249億円の巨額支出となります :contentReference[oaicite:0]{index=0}。
日本では過去にも全国一律給付が実施されており、代表的なのが2020年の「特別定額給付金」です。当時は新型コロナウイルス対策として一人10万円を給付し、約1.27兆円が支出されました。今回はその2倍超の支出規模であり、景気下支え効果は期待できるものの、財政負担の大きさが政府内外で議論を呼んでいます。
また、バブル期の1998年には消費税率引き上げ対策として一世帯2万円程度の給付案が検討されたものの、最終的には現物給付(食料品の配布)が採用されました。今回の現金給付案は、より直接的な家計支援を狙ったものと言えます。
給付のメリットとしては、
・即時の家計支援による消費喚起効果
・低所得層から高所得層まで幅広い世帯が受け取るため、政策の公平感
・申請不要の自動給付を想定し、行政手続き負担を軽減
が挙げられます。
一方、課題としては、
・一過性の支援に留まり、長期的な物価抑制策にはつながりにくい
・財源として見込む「税収上振れ分」(約8兆円程度に対し給付約2.7兆円)の持続性への懸念
・給付後の消費動向が「貯蓄に回る」という指摘もあり、景気刺激効果の不確実性
・高齢者や障がい者で銀行口座を持たない層への給付漏れリスク
などが挙げられています。
2024年度決算での税収上振れ分を財源に充当するとしても、給付後の税収見通しが不透明な中、基礎的財政収支(プライマリーバランス)はなお赤字継続が確実視されています。国債発行残高はGDP比260%超に達し、今後の財政健全化目標との両立は大きな課題です。
欧米諸国では、危機時の生活支援策として一律給付や手当増額が行われています。米国は2020年と2021年に最大1,400ドル(約20万円)の「経済刺激チェック」を実施し、消費支出を押し上げました。EUでも加盟国ごとに臨時給付金を支給し、感染拡大とインフレ時の生活防衛策を講じています。
一方、中国や韓国では給付対象を低所得世帯に限定した「選択的給付」を導入し、財源効率を重視しています。日本でも、一律給付ではなく所得制限や「受け取り辞退方式」を組み合わせる案が検討されています。
現金給付は短期的な家計支援策にすぎず、物価高を抑制する抜本策としては以下の中長期施策が不可欠です。
・最低賃金の大幅引き上げと中小企業支援
・子育て・介護・医療費負担軽減による世帯可処分所得の底上げ
・エネルギー・食料品の価格安定化策(備蓄活用、競争促進)
・税制・社会保障制度の抜本的見直し
与党は6月中に詳細案をまとめ、8月の臨時国会で補正予算案として提出し、年内実施を目指します。野党側は消費税減税や給付条件の厳格化を求める構えで、参院選の争点となるでしょう。給付の是非と財源、長期的物価対策の双方をいかに説得力ある形で国民に示すかが政権の正念場です。
全国民に一律2万円、住民税非課税世帯にさらに2万円上乗せという大規模給付案は、参院選を目前に控えた与党の訴求策であると同時に、物価高への緊急対応策でもあります。しかし財政健全化との両立や給付効果の持続性など、制度設計には数多くの課題が横たわっています。給付実施後は速やかに物価・消費動向を検証し、給付に頼らない経済構造改革や社会保障改革を併せて推進することが求められるでしょう。
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