住民名の「〇〇の乱」記録 町謝罪
2025/06/12 (木曜日)
住民の名前で「〇〇の乱」…トラブルまとめたファイルにタイトルつけて保管、福島・楢葉町長が謝罪
2025年6月11日、福島県楢葉町役場の農林水産課で、課内書棚に保管されていた住民対応用資料ファイルの背表紙に、該当住民のフルネームを冠して「○○○○の乱」というシールが貼られていたことが判明しました。このファイルは、森林・林業再生事業に伴う間伐・伐採をめぐって住民との間に生じたトラブルを整理したものです。ファイルを窓口に持参した際、住民本人が背表紙のシールを発見し、不適切な表現として町側に抗議したことで発覚し、即日謝罪が行われました(出典:福島民友新聞 https://www.minyu-net.com/news/detail/2025061210504037347):contentReference[oaicite:0]{index=0}。
「乱」という言葉は歴史的に「武力による反抗・反逆」を意味し、朝廷や政府に対する敵対的行為を指します。そのため、住民を「○○の乱」と呼ぶことは、彼らを“反政府的”あるいは“暴徒”扱いし人格を否定する差別的表現に他なりません。行政サービスを提供する公務員に求められる公正・中立の立場を逸脱し、住民の信頼を著しく損なう行為であると言えます。
楢葉町では、東日本大震災・原発事故後の山林荒廃を受け、2020年から町と県、民間が協力して「ふくしま森林再生事業」を推進しています。間伐や植樹を通じた森林循環の復活は、土砂災害防止や地域振興、雇用創出にも寄与しますが、「木を伐らないでほしい」「自分の山は残したままにしてほしい」といった住民の意向も強く、調整に時間を要するケースが多々あります。トラブル対応のための資料整理は必要ですが、その過程で住民を侮辱する表現を用いることは論外です。
地方公務員法では、公務員は「全体の奉仕者」として勤務し、公正で品位を保持することが求められています。楢葉町長・松本幸英氏は、今回の事態を受けて「職員の業務姿勢と認識の甘さは極めて遺憾」とのコメントを発表し、全職員に服務規律再認識を指示しました。また、住民を誹謗中傷する表現は、個人情報保護法に抵触し得るほか、条例に基づく行政苦情処理手続きの公正性を損なう恐れがあります(出典:福島民報 https://www.minpo.jp/news/moredetail/20250612124917):contentReference[oaicite:1]{index=1}。
日本史において「乱」は、応仁の乱や一向一揆のように、多数の民衆が武力で政治に対抗した事件を指します。その語感には「暴力」「秩序破壊」「敵対」のニュアンスが強く、単なる「トラブル」「意見対立」を表す言葉ではありません。現代の行政文書で安易に用いることで、住民との対話や話し合いを「戦争」「紛争」と見る誤解を招きかねず、対立や分断を助長するリスクがあります。
過去にも他県の自治体で、苦情・要望を「〇〇クレーマー」「○○モンスター」と記載した内部文書が問題となった事例があります。いずれも行政の透明性・中立性に対する信頼を失い、公務員倫理条例や個人の名誉権侵害で住民への謝罪・是正措置が行われました。いずれのケースでも、文書管理の甘さや人事評価制度の欠陥が指摘され、職員研修やガイドライン整備が急務となっています。
6月11日の町議会定例会で松本町長は謝罪し、「全職員に地方公務員としての責務と住民対応マナーを徹底させる」「個人情報管理・文書管理のルールを見直し、外部有識者を交えた研修を実施する」との再発防止策を発表しました。また、問題職員に対しては懲戒処分が検討されており、今後は第三者委員会による調査結果公表など、透明性確保の取り組みが求められます。
住民との信頼回復には、謝罪だけでなく「対話の場」を継続的に設け、住民参画型の意思決定プロセスを構築することが重要です。森林再生事業の成果を共有しつつ、住民の声を政策に反映できる仕組みとして、ワークショップ型協議会やオンライン意見公募などの取り組みが考えられます。また、全国の自治体に向けて今回の事例を教訓とした文書管理・公務員倫理研修の手引きを自治体連合が作成し、横展開することが望まれます。
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