イラン側 イスラエルに報復を宣言
2025/06/13 (金曜日)
イラン最高指導者、イスラエルを「下劣な性質」と非難 報復を宣言
2025年6月13日、イスラエル軍によるイラン国内の核関連施設への一連の空爆を受け、イラン政府は「厳しく、決定的な報復」を行うと正式に声明を発表しました。イランの最高指導者アリー・ハメネイ師は「イスラエルの行為は歴史に残る誤算であり、相応の報いを与える」と表明し、革命防衛隊(IRGC)も「必ずや同等以上の打撃を返す」と宣言しました 。
イスラエルは6月12日未明、名称を「ライジング・ライオン作戦」とした複数波の空爆で、イラン中部ナタンツのウラン濃縮施設やフォルドー核施設、テヘラン郊外のIRGC施設に精密誘導兵器を投入しました。国防軍はこれを「存亡を賭けた外交的・軍事的措置」と位置づけ、作戦は「核の脅威を排除するまで継続する」としています 。
イスラエルは1981年のイラク原子炉爆撃(オペレーション・オペラ)、2007年のシリア原子炉攻撃(オペレーション・アウトサイド・ザ・ボックス)など、核開発阻止を目的とした先制攻撃を過去にも実行してきました。これらはいずれも「ビギン・ドクトリン」と呼ばれ、核武装国家を容認しないという原則の下で行われています 。
2015年のイラン核合意(JCPOA)締結後、米国が2018年に離脱したことでイランは核濃縮度を60%近くまで引き上げ、遠心分離機の増設を進めてきました。国際原子力機関(IAEA)は6月10日、イランが合意義務に違反したと報告しており、核開発の加速が地域の緊張を高めていました 。
イラン側は報復手段として弾道・巡航ミサイルや無人機攻撃を示唆しています。IRGC司令官ホセイン・サラミ将軍は「中東全域のイスラエル軍拠点が射程内にある」と述べ、シリア、イラク、レバノンに展開する親イラン武装組織を通じた協調攻撃も排除しない姿勢を示しました 。
国連憲章第51条に基づく自衛権の行使としての先制攻撃の合法性は国際法上で議論が分かれています。イスラエルは「差し迫った核の脅威」を理由とし、合法性を主張。一方でイランや一部の安保理加盟国は「主権侵害の明白な例」として非難しており、安保理の緊急会合では事態収拾を図る動きが続いています 。
一連の攻撃は中東域内の緊張を一気に高め、イラクやシリア、レバノンでも米・英軍基地周辺へのミサイル発射が相次いでいます。国際石油市場では原油価格が一時7%超上昇し、投資家が安全資産として金や米ドルを買い求める動きが見られました 。
米国は事前通告を受けたとされつつも公式支援を否定し、「地域の安定維持と報復エスカレーションの回避」を呼びかけています。EU主要国やロシア、中国も対話による解決を訴え、国連安保理では制裁強化や仲介提案が議論されています。日本政府は「邦人の安全確保」を最優先に、渡航中止要請や在イスラエル邦人への注意喚起を発出しました 。
2019年に米国がイラン革命防衛隊司令官ソレイマニ氏を無人機空爆で殺害した際、イランは報復攻撃としてイラク国内の米軍基地に弾道ミサイルを発射し、非対称戦争の様相を呈しました。今回の規模と意図は、より先鋭化・長期化する可能性があり、「限定的報復」に留まらないリスクが指摘されます 。
イランの報復が実行に移されれば、報復合戦の長期化、防衛協力関係の再構築、国際人道法や核拡散防止体制への影響など、多層的リスクが顕在化します。各国は外交ルートと情報共有を強化し、地域の武力衝突拡大を防ぐための交渉と抑止策を併用する必要があります。
イスラエルによるイラン核施設攻撃と、イラン側の「厳しい報復」宣言は中東の緊張度を新たな局面へと高めました。歴史的な先制攻撃の連鎖、核開発競争、自衛権と国際法の対立、地域的・国際的な安全保障環境の変化を踏まえ、今後の情勢注視と多国間協調によるエスカレーション回避が求められます。
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