関西電力が助っ人 32年〝漂流〟の核燃料再処理工場 2026年度完成へ今度こそ正念場
2025/06/27 (金曜日)
「審査に対応するためたくさんのスタッフを派遣している。26年度中の完成予定に変更はないと認識している」。26日の関電の株主総会後の記者会見で、森望社長はこう話した。
5月末、六ケ所村の再処理工場の敷地内。国内での過去最大規模を超える竜巻を想定し、防護ネット設置などの対策工事が進んでいた。原燃の山田立哉フェローは報道陣に「再処理の設備はほぼ完成しており、安全性に関する審査対応が今の課題だ」と語った
「審査に対応するためたくさんのスタッフを派遣している。26年度中の完成予定に変更はないと認識している」。2025年6月26日、関西電力・森望社長は株主総会後の記者会見でこう語った。一方、同月末に六ケ所村を訪れた日本原燃・山田立哉フェローは、「再処理設備はほぼ完成しており、安全性に関する審査対応が今の課題だ」と説明した。この発言は、国内初の商業用核燃料再処理工場として長年延期が続く六ケ所再処理工場の現状を端的に示している。
六ケ所再処理工場は、使用済み核燃料からウランやプルトニウムを取り出し、再利用可能な核燃料として循環させる「核燃料サイクル」の中核施設である。年間再処理能力は800トンU、貯蔵庫容量は3,000トンUに達し、100万kW級原子炉約40基分の使用済燃料を処理可能だ。2024年度末からアクティブ試験(実際の燃料を用いた試験)に入り、2026年度中の竣工を目指して安全機能と機器性能の最終確認を進めている。
六ケ所再処理工場の建設は1993年に着手し、当初は2007年度完成予定だった。しかし、度重なる設計変更や安全基準の強化に伴い、計画は数次にわたり延期。2008年のリーマン・ショック後は予算凍結、2011年の福島第一事故を受けた新規制基準の制定(2013年)により、耐震対策やテロ対策など安全性向上工事が義務付けられた。2020年に新規制基準適合証が交付されるも、豪雨による建屋浸水リスクなど追加検証が発生し、2022年度上期への延期が決定された。
原子力規制委員会は2020年度以降、日本原燃からの設計変更や工事計画変更申請を多数回にわたり審査し、2022年12月には最新の変更申請を承認。現在は最終段階の「保安規定変更認可」と「適合性審査書案」の取りまとめを経て、経済産業大臣決定を待っている状況だ。これら一連の審査会合は規制委員会公式サイトで公開され、2023年度までに20回以上開催された。
福島事故後の新規制基準では、自然災害やテロリスクへの対応が義務化された。六ケ所では国内過去最大規模の竜巻想定を盛り込み、全プラント建屋に耐風・防護ネットを設置。さらに、非常用発電機の二重化、使用済燃料貯蔵プールへの水位低下防止対策、化学薬品の飛散防止バリアーなど、数百項目にわたる改修工事を完了している。
青森県六ケ所村は再処理施設依存の財政構造となり、村予算の約半分を再処理関連事業が占める。地元雇用創出や交付金受領の一方、反対運動は1989年から継続し、安全性やプルトニウム管理への懸念を提起。2007年の最高裁敗訴後も住民訴訟が続き、環境影響評価の透明性向上とIAEA査察強化が求められている。
世界最大級の再処理施設はフランス・ラ・アーグ工場で、年間約1,700トンUの処理能力を誇る。日本の800トンUは世界第2位相当だが、稼働率やコスト回収、プルトニウム保管量の管理で課題が残る。日本は国内に約38トンのプルトニウムを保有し、IAEA査察コストの増大を招いている。
再処理過程で発生する高レベル放射性廃液はガラス固化処理後、地下埋設を予定。環境影響評価では地下水流動解析や海洋放出のトリチウム管理、敷地内の天然林保全計画が盛り込まれた。廃液ガラス体の最終処分場は未確定で、長期安全性保証の研究が課題となっている。
関西電力をはじめ全国の電力会社は、使用済燃料再処理を核燃料コスト低減策と位置づけ「プルサーマル(MOX燃料利用)」推進を共同で支援。2024年度にはMOX燃料製造施設の耐震補強工事を完了し、原発5基で商業運転を予定する。ただし再処理・MOXコストは天然ウラン価格を上回るため、経営負担増が懸念される。
日本原燃は2026年度中の完成・稼働に向けて審査対応を最優先課題と位置づける。しかし稼働後の長期保守・廃棄物管理計画、国際的プルトニウム管理体制との整合性確保、地元合意の持続的維持が不可欠だ。加えて原子力規制の厳格化やエネルギー政策見直しによる追加的安全対策やコスト負担の可能性もあり、26年度の完成はまさに正念場を迎えている。
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