能動的サイバー防御 専門家集団のワンチーム結成を
2025/06/28 (土曜日)
国内ニュース
サイバー攻撃に先手を打つことで被害を防ぐ能動的サイバー防御導入に向けた関連法が先の通常国会で成立した。銀行や空港といった基幹インフラを狙ったサイバー攻撃が国内で多発する中、法整備の必要性は与野党でおおむね共有されていた。制度の基盤が固まった一方、実際に対応する人材を確保できるかが今後の課題となる。政府は令和4年に改定した国家安全保障戦略で、サイバー防衛能力を「欧米主要国と同等以上に向上させる」と掲
2025年6月から施行された改正「サイバー防御関連法」は、銀行や空港など基幹インフラを狙うサイバー攻撃に対し、事前に仕掛けを行って被害拡大を防ぐ“能動的サイバー防御(Active Cyber Defense)”の導入を可能とする制度を整備した。通常国会で与野党の大枠合意を経て成立し、2027年までに実装を完了させる計画だ(出典:朝日新聞2025年5月16日付):contentReference[oaicite:0]{index=0}。
近年、国家やサイバー犯罪組織による標的型攻撃が増加し、特に金融機関や空港・交通インフラへの侵入事例が相次いだ。従来の受動的防御(侵入検知や事後対応)だけでは被害を未然に防ぎきれないとの危機感が高まり、欧米主要国と同等以上の防御能力構築を掲げた国家安全保障戦略(令和4年改定)を受け、能動的防御を法的に位置づける必要が生じた(出典:The Diplomat 2025年1月24日):contentReference[oaicite:1]{index=1}。
改正法は「Active Cyber Defense Law」として、2027年末までに立法運用体制を完了させ、同年から本格運用を開始する見込みだ:contentReference[oaicite:2]{index=2}。
欧州連合(EU)は2022年のNIS2指令改訂で、重要インフラのサイバー防御を強化し、加盟国に能動的防御策の実装を求めている。米国では2018年以降、伊国家安全局(NSA)やFBIがサイバー作戦を法制的に担い、防御的ハッキングを実施中だ。本改正法は、これら先進的枠組みを参考にしつつ、日本の憲法・プライバシー保護規制との整合性を図った初の取り組みと言える(出典:Financial Times 2025年5月):contentReference[oaicite:3]{index=3}。
主要銀行や電力会社、鉄道事業者は既に自前のCSIRT(Computer Security Incident Response Team)を強化し、政府主導の合同サイバー演習に参加している。経済産業省は中小事業者支援として、補助金による防御機器導入や専門家派遣を拡充。産業界団体は「施行後3年間の連携計画」を政府に提出し、ガイドライン策定に協力する姿勢を示している。
能動的サイバー防御関連法の成立は、日本のサイバーセキュリティ政策における大きな転換点である。受動的防御では防ぎきれない高度・大規模サイバー攻撃の脅威に対し、先手を打つ仕組みを法的に整備したことは評価に値する。一方で、国内の専門人材不足や関係機関の連携体制整備、プライバシー保護との両立など、実装に向けた課題は少なくない。政府・産業界・学界が一体となり、2027年までに能動的防御を確実に運用に移すためのロードマップを策定・実行することが求められる。今後3年間での成功が、国内基幹インフラの安全保障を強化するとともに、アジア太平洋地域における日本のサイバー防御モデルとして国際的評価を高めるだろう。
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