石破首相の「2万円給付」公約が不評 地方自治体「職員と労力、莫大」「二重払いの恐れ」
2025/06/17 (火曜日)
同様の現金給付は過去にも実施されてきたが、事務作業は膨大で、市区町村の職員らが中心となって行ってきた。
これに千葉県の熊谷俊人知事がかみついた。11日、X(旧ツイッター)でこう、苦言を呈した。
「『選挙のたびに現金給付するんだから、国で一元的に給付作業する効率的な仕組みを作りましょう』と、何度も何度も提案しているのですが、いつまでも自治体任せ」
続けて「無駄で、疲弊させる話にうんざり」「実際
国・与党が物価高対策として参院選公約に「現金給付」を盛り込む検討を進める中、過去にも同様の現金給付はしばしば行われ、市区町村が煩雑な事務作業を担ってきました。しかし「何度も選挙のたびに現金給付を行うなら、国で一元的に給付作業をする効率的な仕組みをつくろう」と千葉県の熊谷俊人知事がX(旧ツイッター)で苦言を呈しました。自治体職員の疲弊と膨大なコストを放置したまま繰り返される給付施策の背景と歴史、他国比較、今後の課題を解説します。
現金給付政策は、リーマン・ショック後の2009年「定額給付金」(1万2,000円を全国民に一律支給)や、2011年の東日本大震災の被災者向け給付、2020年の新型コロナウイルス対策として全国一律1人10万円支給など、多様な緊急経済対策で実施されてきました。これらはいずれも国の法令に基づく一時的施策ですが、給付事務は市区町村の窓口が一手に担い、申請受付から給付まで平均1か月以上の事務処理期間と、多数のコールセンター対応を要しました。
定額給付金の事務費用は自治体負担が原則で、総務省調査によると2020年の特別定額給付金では、全国の市区町村で約4,500億円の事務費が発生し、うち自治体負担分は約1,200億円にのぼりました。各自治体が独自システムを構築し、マイナンバーカードの普及状況に応じた給付方法を並行運用したため、システム開発・運用コストが二重化し、職員の時間外労働が大幅に増加しました。
熊谷知事は6月11日の投稿で、「選挙のたびに現金給付するのなら、国で一元的に給付作業をする効率的な仕組みをつくりましょう」と繰り返し要望してきたにもかかわらず、未だに自治体任せだと批判しました。さらに、「全市町村の職員が説明会に駆り出され、“いついつまでに給付しろ”と言われ、バラバラに業者発注を行う非効率」「国会議員には度胸がなく、マイナポータル登録者向け給付案でも結局業務量は減らず手間だけが増える」「事務経費を削られ、実際の職員人件費も回収できない」など、多くの自治体長から同調の声が上がっています:contentReference[oaicite:0]{index=0}。
欧州では、所得・家族構成データと連動した自動給付システムを整備する国が増えています。フランスのCAF(家族手当機構)は出生届や所得申告情報と直結し、新生児一時金や住宅手当を自動計算・振込。ドイツも「Kinderbonus(子ども手当ボーナス)」などを中央システムで給付し、地方手続きは最小限に抑えています。これらは高いマイナンバー類似制度普及率と、国・地方のIT基盤統合が前提ですが、事務コスト削減とミス低減で自治体負担を大幅に軽減しています。
参院選の公約として検討される「全国民一律2万~4万円給付案」は、再び市区町村に大きな事務負担を強いる恐れがあります。熊谷知事らが求める「国による一元的給付仕組み」の構築がなされなければ、コロナ給付と同様の混乱と非効率が繰り返される可能性大です。一方、与党側では、マイナポータル経由の給付やオンライン申請の限定、マイナカード所有者優遇案なども議論されていますが、これらは制度全体の簡素化にはつながらないとの指摘があります。
選挙を契機とした現金給付は有権者への訴求力が高い一方、事務は全国の自治体職員が担う「下請け仕事」の側面があります。今後は給付の是非を超え、「誰がどのように給付するか」の仕組みを政府が責任を持って整備し、自治体や住民の負担を軽減する方向へ転換すべきです。熊谷知事の提言は、そのための喚起であり、効率的・持続可能な社会保障制度の構築に向けた重要な一歩と言えるでしょう。
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