米軍、イランの3つの核施設を攻撃 トランプ氏がSNSで明らかに
2025/06/22 (日曜日)
トランプ米大統領は21日、自身のX(旧ツイッター)で、米軍がイランの3つの核施設を攻撃したと明らかにした。
2025年6月21日、アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ氏は自身のソーシャルメディア「X」を通じて、米軍がイラン国内の主要核施設3カ所を攻撃したと発表しました。この衝撃的な発表は、中東情勢を一層緊迫させるものであり、過去数十年にわたる米・イラン間の核開発を巡る対立の集大成ともいえる軍事行動の開始を示唆しています。本稿では、イランの核開発の歴史的経緯、米国とイランの対立の遍歴、今回攻撃対象となった核施設の特徴、国際法的な問題、地域および国際社会への影響を解説し、今後の展望を探ります。
イランにおける核開発は、1970年代初頭のシャー政権下で科学技術近代化の一環として始まりました。フランスやドイツとの協力関係を経て、ウラン濃縮や原子炉技術の導入が進められました。しかし1979年のイスラム革命後、一時的に開発は停止。1990年代以降、革命防衛隊主導の秘密計画が再始動し、国連核査察機関(IAEA)の度重なる監査を受けたものの、濃縮度や保有量の水準が次第に国際基準を超えていきました。この過程で、原子力技術の「平和利用」と「軍事転用」の境界が曖昧になり、周辺国や米欧との緊張を高める結果となりました。
米国とイランの関係は、1979年のアメリカ大使館人質事件以来、敵対的な関係が続いてきました。1996年にはイランを支援国指定し、経済制裁を開始。2002年には「悪の枢軸」としてイランの核開発を非難し、以後、ブッシュ政権、オバマ政権を通じて制裁の強化と緩和が繰り返されました。2015年に成立した核合意(JCPOA)ではイランが濃縮活動の制限と査察受入れを条件に経済制裁を緩和されましたが、トランプ政権は2018年に一方的に離脱し、再度制裁を強化。これが現在の軍事衝突への布石となりました。
直前にはイスラエル軍がイランの防空レーダーやミサイルサイト、そして核関連施設を数次にわたり空爆しており、これらの攻撃は中東全域の緊張を高めていました。米国は公式には距離を置く姿勢を示していたものの、兵站支援や情報提供を通じて暗黙の協力を続けてきました。今回の米軍による直接攻撃は、イスラエルの攻撃を事実上支援する形となり、米国の中東関与が再び軍事面で拡大したことを意味します。
トランプ大統領が言及した3つの施設は、フォルドゥ、ナタンズ、イスファハーン各所です。フォルドゥは岩盤内に構築された防護施設で、高濃縮ウランの生産拠点とされ、ナタンズはウラン濃縮の中心である遠心分離機群を擁する施設、イスファハーンはウラン加工と燃料製造を行う重要施設です。これらの拠点は国際社会の査察下にあったものの、イランの非協力的な対応により実効性のある監視が困難となり、防護の硬度を高めるための地下化や地下トンネル網の整備が進められてきました。
国連憲章第51条に基づく「個別的・集団的自衛権」の行使が、米国側の法的根拠とされています。しかし、攻撃が「先制的自衛権」に該当するかどうかは国際的に議論が分かれるところです。イラン側は「主権侵害」と断じて国連安全保障理事会に訴える構えを見せる一方、米欧は核開発阻止のための必要最小限の措置と位置づけています。国際法上の正当性をめぐる議論は今後も続く見込みです。
中東地域では、イラク、シリア、イエメンなどで米軍とイラン支援勢力の代理戦争が続いており、今回の直接攻撃はこれら紛争を再度激化させる恐れがあります。ホルムズ海峡の通航安全にも懸念が広がり、原油価格の急騰が世界経済に与える影響も無視できません。湾岸アラブ諸国は米国との同盟強化を図る一方、トルコやロシアはイランとの関係を維持し、地域の安全保障地図は二分化が進む可能性があります。
米国内では議会の一部が「勝手な軍事行動」と反発し、承認手続きの必要性を主張する声が上がっています。イランは報復を示唆し、大規模なミサイル攻撃や無人機攻撃による応酬を予告しています。EUや中国・ロシアは慎重姿勢を維持し、「対話による平和解決」を繰り返し呼びかけています。今後は軍事的緊張と外交的交渉が並行して進む「危険な均衡」が続くことが予想されます。
トランプ米大統領によるイラン核施設攻撃の発表は、中東の長年の核不拡散努力と地域安定の取り組みを根底から揺るがすものであり、その影響は単なる一時的な軍事行動にとどまりません。今後は国際法に則った透明性の高い検証体制、各国との包括的な安全保障対話、そして核不拡散体制の強化といった多角的アプローチが不可欠です。軍事行動による「平和への苦痛」という矛盾をどう克服し、持続可能な安定を実現するかが、国際社会全体の大きな課題となるでしょう。
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