米LAで抗議デモ激化 州兵が到着
2025/06/09 (月曜日)
不法移民取り締まりへの抗議デモ激化 トランプ政権派遣の州兵到着 米ロサンゼルス
2025年6月7日、カリフォルニア州ロサンゼルスにおいて、移民・税関捜査局(ICE)による大規模な不法移民摘発が実施されたことをきっかけに、市民による抗議デモが激化しました。これを受けて、ドナルド・トランプ大統領は国内の「反乱鎮圧」を名目に、州知事の同意を待たずに連邦権限で州兵2,000人を派遣する決定を行い、全米的にも極めて異例の事態となっています。
ICEは6月6日未明、ロサンゼルス市内外の倉庫や工場、ホームセンターを対象に一斉摘発を敢行し、少なくとも44名を拘束しました。一部には合法的な在留資格を持つ家族連れも含まれていたとされ、「家族を引き裂く暴挙だ」との批判が噴出。SNSで「#FreeOurFamily」が拡散すると、市内ダウンタウンやパラマウント地区など複数拠点で抗議集会が開かれ、3日間にわたり数千人規模へと拡大しました。
初日は平和的な座り込みが中心でしたが、2日目以降に過激派とされる一部の参加者による投石や放火、路上封鎖が発生。警察が催涙ガスやフラッシュバンを使用して鎮圧を試みたものの、衝突は収まらず、27人の逮捕者が出る事態に至りました。地元商店や公共交通機関も影響を受け、経済活動への懸念が広がっています。
トランプ大統領は「反乱鎮圧法」(Insurrection Act)および連邦法編第10編第12406条を引用し、州知事の要請なしにナショナルガード(州兵)を動員。通常は州知事が管轄するナショナルガードを連邦政府直轄下に置く措置であり、1857年に制定された州兵内務動員規定(Posse Comitatus Act)の例外を適用したものです。連邦と州の権限分立をめぐる法的論争は必至です。
カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は即座に「違憲行為だ」と声明を発し、連邦介入の撤回を求めました。ロサンゼルス市長のカレン・バスも「州および市の治安部隊で十分に対応可能」として、州兵の不要論を展開。多数の民主党系連邦議員や人権団体が連邦政府を非難し、訴訟の構えを見せています。
米国では過去に公民権運動(1960年代)やロサンゼルス暴動(1992年)などで州兵が動員されましたが、いずれも州知事の要請によるものでした。今回のように大統領権限で直接展開された例は極めて稀であり、行政権と司法権の均衡が大きく揺らぐ事態です。
全米自由人権協会(ACLU)は「集会と表現の自由を侵害する行為」として強く抗議。移民擁護団体も「家族の権利を守るため、法的支援が必要だ」と緊急声明を発出し、連邦裁判所への差止め請求を準備しています。
フランスの「黄ベスト運動」や香港の民主化デモでも、軍・警察の重装備介入が国際批判を浴びました。アメリカ国内での今回の州兵投入は、国際社会から見ても「過剰かつ政治的動機による武力行使」と映る恐れがあり、米国の人権イメージにも影響を及ぼしかねません。
ロサンゼルスは多様な移民コミュニティが共生する都市であり、観光やエンターテインメント産業が重要です。デモ鎮圧の激化は治安不安を招き、観光客減少や商店街の営業縮小、さらには地域経済の沈滞を引き起こす可能性があります。
地元報道によれば、州兵は主要交差点の警備や連邦施設周辺の警戒を主任務としています。連邦・州・市間の権限争いは法廷闘争へと移行する見込みであり、中間選挙(2025年秋)を控えた政治的波紋も注目点です。また、デモ参加者の一部が訴訟を起こす可能性もあり、司法判断がアメリカの民主主義と権力分立のあり方を左右するでしょう。
ICEによる不法移民摘発とそれに対する抗議デモ、州兵派遣は、米国の移民政策や憲法上の権力配分をめぐる重大事案です。トランプ政権の強硬策は賛否を呼び、州・市政府や人権団体との対立を深めています。今後の裁判手続きと政治的調整の行方が、アメリカの民主主義の行く末を占う鍵となるでしょう。
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