LAデモ 移民の街に恐怖と怒り
2025/06/10 (火曜日)
抗議デモ続くロス、移民の街に恐怖と怒り「政権がしているのは暴力の扇動」…トランプ氏ののしる落書きも
2025年6月にロサンゼルスで続く移民摘発への抗議デモは、拘留センター周辺だけでなく、ダウンタウンの繁華街や連邦政府ビル周囲にも拡大し、「政権がしているのは暴力の扇動だ」という怒りが溢れています。催涙弾や州兵の配備に抗議する一方で、一部が暴徒化して焼き打ちや落書き、略奪行為にまで及び、実験場さながらの市街地は恐怖と混乱に包まれています。本稿では、この抗議デモの背景と歴史、米国内の移民政策問題、暴力化の実態、法的・行政的対応、そして今後の展望を解説します。
トランプ政権による移民税関捜査局(ICE)の不法移民一斉摘発が2025年6月6日に始まり、拘留センター前での拘束や家族の引き離しに憤った住民らが連日抗議。初日は平和的に始まったものの、警察や州兵による催涙ガス投入や装甲車配置が緊張を高め、数時間にわたる封鎖行動から暴力衝突へと発展しました(CNN.co.jp 6/10)。
雨雲が停滞して局地的豪雨を降らせる線状降水帯になぞらえ、抗議行動は市中心部からチャイナタウン、リトル・トーキョーへと帯状に拡大し、連鎖的に暴力行為が連続。自動運転車の放火や商店の略奪、連邦ビルへの反移民スローガン落書きが散見され、清掃スタッフが「市内至る所で抗議表現と破壊行為の境界が曖昧になっている」と語りました(Reuters 6/10)。
アメリカ国内では、経済的に恵まれない中南米系移民コミュニティが対象とされる摘発行為に対し、「家族の引き離しは人権侵害」とする進歩派住民と、「法治国家の秩序維持が優先」とする保守派の対立が深まっています。デモは当初、移民擁護団体や社会福祉関係者によって平和的に運営されましたが、夜間に若年層の過激派グループが流入し、警官隊との衝突が激化しました(CNN.co.jp 6/10)。
暴力的衝突や略奪による犯罪行為は州法・連邦法で取り締まられますが、一方で平和的抗議の権利は憲法修正第1条が保障。自治体は「デモ参加者の区別」「過度の武装警備の是非」「逮捕者処遇」の線引きに苦慮しています。警察は「平時の取り締まり」と「非常時の武力行使」を切り分ける訓練を再確認する必要に迫られています。
1992年のLA暴動ではロドニー・キング事件を契機に大規模暴動が発生し、韓国系住民の自警団「ルーフトップ・コリアン」も登場しました。今回も一部で「歴史的な人種差別のトラウマを呼び起こす落書き」が見られ、コミュニティ間の分断が深まっています。歴史を踏まえた地域間対話と和解プロセスの構築が急務です。
デモが長期化すると、商店街の客足減少や公共交通の運休、観光キャンセルが相次ぎ、周辺住民にも生活・経済的打撃が及んでいます。郡当局者は「最も危険な夜の一つだった」と振り返り、市民からは「平和的抗議は理解するが破壊行為は受け入れ難い」という声が上がっています(CNN.co.jp 6/10)。
トランプ大統領は州兵派遣を命じ、国防総省は約700人の海兵隊員を展開。州政府および市行政は警察の人員増強や非常事態宣言も検討し、混乱防止策を講じていますが、人権団体からは「過度な武力行使」に対する抗議の声も上がっています(mainichi.jp 6/10)。
移民政策に対する抗議は世界的に見ても激しく、難民・移民を巡る人道危機と国家主権の衝突が背景にあります。LAは「移民の街」として経済的多様性を支えてきただけに、長期的にはコミュニティ・ポリスティング(地域警察)モデルや市民治安協議会の強化が必要です。
ロサンゼルスの抗議デモは、移民をめぐる人道的課題と国家安全保障の緊張が交錯し、暴力化と正義追求のはざまで市民が巻き込まれています。歴史的暴動の教訓を生かしつつ、公共秩序と人権尊重を両立させるガバナンス強化が急務です。平和的抗議を守る仕組みと、無用な暴力を避けるトレーニングの徹底が、この街の未来を左右します。
出典:CNN.co.jp (2025.06.10), Reuters (2025.06.10)
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